パンはパンでも食べられないルパンルパーン
その後、騒いだせいで起きてしまったシエルちゃんに、血濡れの短刀を見られて色々と問い詰められたりしたが、問題なく収まった。
その大騒ぎの中でも、全く起きなかったアリシアちゃんは本当に大丈夫なんだろうか。
寝てる間に地震とかあったらぺっちゃんこになるんじゃねーか……?
この辺りに地震があるかは知らないけど。
「はあー……適当に朝メシにしようか」
「そーですね……朝ごはんは、ジャムを買ってきてあるので、トーストにベーコンエッグで食べましょう」
「いいね」
その時、階下で凄まじい轟音が響き渡った。
「シエルちゃん、ここにいて! レンはシエルちゃんとアリシアちゃんを頼む!」
「分かった!」
レンに二人を頼むと、オレはアイテムボックスから適当な剣を手に階下へと駆け出す。
階段を飛び降り、リビングに繋がる扉を蹴破ると、瓦礫の崩れる音のする台所を見やる。
全壊した台所。もうもうと立ち込める土煙の中に小さな人影が見える。
「……誰だ?」
いったい何者か、そう声をかけ、オレは改めて手の中の剣を握り、前方へとピンク色の剣を構える。
……これハエ叩きじゃねえか!
クソッ、なんで剣出ろって思ってハエ叩きが出てくるんだよ!
ええいっ、こうなったら名刀ハエ叩きの切れ味を教えてやる!
真の剣士は得物を選ばないんだ!
「あいたたたぁ……もー、なんでこうなっちゃうのかなぁ?」
……女? しかも、子供か。
暗殺者ってわけではないだろうが、怪しい事には変わりない。
「誰だ。武器を捨てて両手を上げて出て来い」
「えー? あ、タカヤくんだー」
オレを知ってる?
そう思っていると、土煙が晴れて行き……。
「女神様……?」
「えっへん、その通りなのだー。女神アリシュテアなのだー。どうどう? びっくりしたー?」
女神アリシュテア。
この世界を支配していた魔王に封印されていた女神。
ほんの数か月前に解放された時に、魔王によって殺された全ての者を蘇生させ、仲違いしていた国を和解させた、頭悪そうな女神。
それからは姿を消したが、これまでと同じく民を見守り続けているとか言われてたけど……。
「なんか……ちっちゃくなってね?」
「そうなのだー。大盤振る舞いで力を使っちゃったら、ちっちゃくなっちゃったのだー。あたしのないすばでーが台無しなのだー」
すっげー頭悪そうな喋り方。
「んー? そんなにじろじろ見てどうしたのだー? あ、わかったのだー。孝也くんったら、あたしの魅力にめろめろなのだー。でもでもだめなのだー。あたしは女神様だから、その想いには答えてあげられないのだー」
「…………女神様、パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?」
「むむ、禅問答なのだー。むー……わかったのだ! 食べられないパンなのだー!」
先ほどの表現に間違いがあったことをお詫びいたします。
頭悪そうな、ではなく、間違いなく頭の悪い、でした。
大変申し訳ありませんでした。
以降、このような事が無いよう努めさせていただきます。
以上、ニュースキャスターの一文字でした。
「ふふん、正解なのだー? あたしは天才なのだー。ほかに問題を出してもいっぱつで答えてあげるのだー」
「……伸びれば伸びるほど、地面に近づくものなーんだ」
「えーと、えーと、納豆!」
髪の毛だよ。
「……空にはなんて虫がいる?」
「いろんなの!」
ハエだよ。
「……来るのに居なくなる動物なーんだ」
「えーと、チーター!」
サルだよ。去る、ってな。
「女神様。あなたに、あなたは愚か者で賞を授与します」
「わーい、やったのだー。で、どういう賞状なのだー?」
「永遠に頭を使わないでください、ってことです。使っても意味ないので」
「よくわからないけどわかったのだー」
ああ、これはもうだめかも知らんね。
この世界の女神様がこれとか終わってるわ。
でも、君主はバカな方が臣下が頑張るって言うし、これでいいのかも。
「えー……で、女神様。なんでうちに来たんですか」
「あ、そうなのだー。孝也くんにお願いがあって来たのだー」
「なんすか」
「あたしは信仰心を得ると力になるのだー。だから、毎日ちゃんとお祈りしてほしいのだー」
「あーはいはい。今日も恵みをありがとーございますアリなんとか様ー」
そう言っておざなりに祈ると、ちょっとだけ女神様の身長が伸びた。
えー……今ので効果あるんだ……。
「おー、ぎゅんっ、と来たのだー。ありがとうなのだー。それから、これを神殿に届けてほしいのだー」
そういって手渡されたのは一通の手紙だった。
見たことない封蝋だな。女神様の封蝋か?
「あたしのおてがみなのだー。ちゃんと正神殿に届けてほしいのだー」
「えっ」
正神殿って言うと、こっから千キロは離れてるんだけど……。
「じゃあ、お願いするのだー。さよならー」
「ちょっ、自分で届けろぉーっ!」
「えー、めんどくさいからやってほしいのだー」
そう言うと、クソ女神は破壊された天井を抜けて空へと昇って行く。
それに向けて瓦礫を投げつけまくるのだが、全く効いてない!
「クッソー! この駄女神! アホー!」
出来るのは悪口を言うくらいだった。小学生かオレは……。




