かくかくしかじかつるにはまるまるむし
オレが勝利の余韻に浸っていると、どたどたと二階から誰かが降りてくる。
そして、勢いよく部屋に飛び込んで来たのはシエルちゃんだった。
「な、何があったんですか!? ああ! 台所が!」
「え? あ」
気付けば、オレの前には無残な姿となった台所があった。
どうすんのこれ。
昨日台所滅ぼしたのに、今度は根絶やしのレベルだよ。
「ハハハハ! やっちゃったぜ!」
また職人さん呼んで直して貰わないとな……。
ああ、また金が出て行く。まぁ、金はかなりあるけど。
「やっちゃったぜじゃないですよ! これじゃ朝ごはん作れないじゃないですか!」
「あー……いや、うん……トモエさんとこに食べに行こうか……」
それ以外どうしようもない。
台所根絶やしにしちゃったし。
「そうするしかないですけど……一体なにがあったんですか?」
「これこれこういうわけで」
「どれどれどういうわけですか」
「通じないか……」
「当たり前です!」
確かに通じたら怖いかも知れない。
「レン」
「な、なんだ? あと、あれだ、お前が聞いただろう悲鳴はそら耳だぞ」
「は? いやなんでもいいけど。かくかくしかじかだ」
「まるまるうまうまか」
「見ろ、レンには通じた。さすがはレン! ツーカーが分かってる!」
「ふふん、当然だ」
たぶん、どう言う意味かは分かってないと思うけど。
だって何の意味も無く、かくかくしかじかって言っただけだし。
「わけがわかんないです! 本当に通じてるんですか?」
「当たり前だ。へのへのもへじってわけだ」
「つるにはまるまるむしというわけだな」
「ほら」
「ほらじゃないです! どういう意味だったんですか今のは!」
「今日の夕飯はコロッケよ、って言った」
「コロッケにはソースだな。と返事を返した」
マジかよ、適当に言ったのに。
「もしかして、本当に通じてるんですか? かくかくしかじかで」
「シエルちゃん! 女の子がそう言う事を言っちゃいけません!」
「え!?」
「ま、まったくだ。品性を疑うぞ、シエル」
「あの、私、かくかくしかじかって言っただけ……」
「シエルちゃん! 幾ら温厚なオレでもそんな悪口を言われたら怒るぞ!」
「シエル、口汚過ぎるぞ。せめてもう少しオブラートに包んでだな……」
「だ、だからなんで、かくかくしかじかでそうなるんですか!?」
「なんだって!? シエルちゃん、早くトイレに! 漏れそうなんだろ!?」
「場所は分かっているな? 分からないなら連れて行ってやるぞ!」
「そんなんじゃありません! へのへのもへじとかだったらどうなるんですか!?」
「ま、待てよシエルちゃん。早まるな。君はまだ若いんだ。幾らでもやり直せる」
「そ、そうだ。どんなひどい目に遭おうとも、諦めなければきっといいことが……」
「だーかーらー!」
ちょっとからかい過ぎたな。
今まではオレが適当に行ったのにレンが合わせてただけだし。
「まあ、簡単に言うとゴキブリが出てな……」
「ゴキブリがって……なんでそれで台所がこんなになるんですか?」
「始末するのに力み過ぎた」
「力み過ぎですよ!?」
ごもっともです。
「まぁ、そう言うわけでこんなことになっちゃったんだ。朝ごはんはトモエさんところでだな……」
「そーですね……」
もう和食な気分になっちゃってるし、適当に朝ご飯っぽいものを頼もう。
そう思っていると、パジャマ姿のアリシアちゃんが目をこすりながらリビングに入って来た。
「おはよー……」
「ああ、おはよう。ごめん、うるさかったか?」
「え……? なにが?」
「……今起きたの?」
「うん……いつもより寝坊しちゃった」
そういってにへらと笑うアリシアちゃん。
貴族生まれって凄い、改めてそう思った。
それからちょっとして、アリシアちゃんにも台所を根絶やした事を説明した。
で、トモエさんのところにレッツゴー。
「白米、白米……」
日本人の朝は白米だよな。ここ一年サンドイッチばっか食ってたけど。
そう言うわけで、オレは喫茶店に入ると同時にトモエさんに告げた。
「トモエさん! 日本人の朝ごはんは!」
「僕、朝ごはんはトーストと紅茶で済ませるタイプだから」
わお、優雅。
「まぁ、冗談はおいといて。これぞ朝食って感じの朝食をください。白米のです。あ、予算は1000ゴルで」
「はいはい。他の子は?」
「私は孝也と同じものを頼む」
「あ、私はサンドイッチセットでお願いしますー」
「えと、えと……あ、私もシエルちゃんと同じので……」
注文したら適当な場所に座る。
今日はまだ誰も居ないな。朝早いし当たり前か。
って言うか、営業時間とか考えないで来ちゃったな。
「トモエさーん、この店って営業時間何時から何時までなんですかー?」
「朝の4時から夜の0時までだよ」
20時間営業とは恐れ入る。
さておき、トモエさんの考える朝食ってどんなんだろ。楽しみだな……。




