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だらり異世界生活記  作者: 国後要
またもやおしかけ女房編
14/128

剣はオレに何も教えてくれない

「……ちょっと病院行ってくる」


「何? なぜだ?」


「幻聴が聞こえるんだ……レンが結婚してくれって言ってきた」


「幻聴ではない。確かにそう言った」


「マジかよ、クソッ、病院売ってくる」

 

 別にオレのものじゃないけど。

 

「じゃあ、なんで結婚なんだ? なぜに? ホワイ? ワッツ? 分かり易く二十文字以内で頼む」


「婚約者が居るが結婚したくない。偽装結婚してくれ」

 

「駄目だな。二十文字をオーバーしてるせいで理解が出来なかった」

 

 二十文字オーバーはたぶんだけど。

 正確に何文字言ったかなんてわかんないよね。

 

「ええい! とにかく私は結婚したくないのだ! だから結婚しているフリをしてくれ!」

 

「オレじゃなくてもいいじゃん! 適当な奴に金払ってやって貰えばいいじゃん!」


「そんな事をして、そいつが殺されたらどうするのだ! 未亡人になったから大丈夫だろう、という事で嫁に出されてしまう!」


「オレならいいってのか!?」

 

「お前を殺せる奴なんぞおらん!」

 

 いやだなぁ、その信頼。

 

「ええい! 無理だ! とにかく無理だ! お前と結婚したらロリコンの烙印を押される!」


「ろりこん? ロリコンとはなんだ?」


「小さい子じゃないと愛せないってことだ!」


「む……? 本当の事を言われると何か拙いのか? お前は小さい子供が好きだろう?」


「レン」

 

 オレはにっこりとレンに笑いかけた。

 

「死にたいのか?」

 

「い、いや……その、すまん……何故か分からんが気に障ったようだな。許せ」

 

「許す」

 

 まぁ、言葉の綾って奴だろう。うん、仕方ないね。

 

「と、とにかくだ。お前以外に頼める奴がおらんのだ。だから、私と結婚してくれ。偽装結婚で構わんのだ」


「あー、だー……なんでオレなんだよ? 他にも強い男は居るだろ? ほら……アレックスとかいたじゃん」


 昔の仲間にアレックスという奴が居た。

 全身を甲冑で覆って、超でかいバトルアックスで戦う奴だった。

 素顔は見てないが、超ムキムキの大男だろう。

 今はどこに居るかは分からないが、レンとは結構仲が良かったみたいだし、故郷とかくらい知ってるだろう。

 それなら偽装結婚の相手としてはぴったりだろう。そっちに頼みに行けばいいのに。


「アレックスは女だぞ?」


「えっ」


「えっ」


「なにそれこわい」

 

 え、アレックスが女?

 あの馬鹿力のアレックスが? 嘘だろう。

 

「アレックスが女って言うのは嘘だろ? な?」


「いや、本当だが……」

 

「またまた御冗談を。だとしたらなんで知ってるんだよ」

 

「アレックスには色々と世話になったのだ。その中で、女人であることを隠していると言うことを知った。旅も終わった故、明かして構わぬだろうと思ったのだ」

 

「……え、嘘じゃないの?」

 

「嘘ではない。赤毛の美女だった」

 

「うわー……マジかー……」

 

 ずっと男だと思ってた……今度会ったら謝ろう……。

 

「アリエルに頼む事も考えたのだが、あやつはなんといっても頷かんだろうしな……」


「え? アリエル女だろ? どうやって頼むつもりだったんだ?」


 アリエルとは回復魔法も攻撃魔法も出来る魔法使いだ。

 大分前に一緒に冒険してた仲で、銀髪の美少女だった。

 いつか告白しようと思ってたんだけど、結局最後まで言い出せなかったんだよな。

 

「アリエルは男だろう?」


「えっ」


「えっ」


「なにそれこわい」

 

 アリエルが男なんて、そんなの、うそだ……絶対にうそだ!

 

「嘘だろ……嘘だと言ってよレン」


「いや、本当だ。気付いていなかったのか?」


「いや、だって、美少女じゃん。アリエル超美少女だったじゃん。可愛かったじゃん。告白しそうになったくらい」


「……それは、なんというかお気の毒だが、アリエルは男だったぞ」

 

「うそうそ、信じないもん。ははは、れんはじょうだんがすきだなぁ」


「落ち着け、本当だ」


「うそだ……うそだぁぁぁぁぁぁぁぁ! そんなのうそだぁぁぁぁぁぁ!」

 

 アリエルが男だったら……オレは男に告白しようとしてたって言うのか!?

 オレの、オレの恋心は一体なんだったんだ!?

 オレは、オレは何を信じたらいいんだ……。

 

「教えてくれ、レン! オレは、何を信じたらいいんだ? 剣は何も教えてくれない。教えてくれ、レン!」

 

「い、いや、そんなのは知らんが……アリエルの骨格は明らかに男だったろう?」


「そんなもん分かるかぁ!」

 

 骨格で性別が分かったら苦労しねえよ!

 なんだよその雛の性別を鑑定するみたいな技!

 初生雛鑑別師ならぬ、男の娘or男装美少女鑑別師にでもなれよ!

 

「う、うう……うそだ……うそだ……アリエルが男だなんてうそだ……」


 泣きたい……オレは、ずっと男に恋心を抱いていたのか……ああ、死にたい……。

 そう思っていると、肩に置かれる手。

 

「た、タカヤ、タカヤには私がいるよ、だから、気を落とさないで?」


「あ、アリシアちゃん……」

 

 反対側の肩に手が置かれる。

 それに振り向くと、そこにはニコニコ笑顔のシエルちゃんが。

 

「私もいますよ。そんなに落ち込まないでください。タカヤさんは笑顔のほうがいいですよ」


「シエルちゃん……」


 そして、斜め向かいに座っているレンもオレに笑いかけてくれた。

 

「孝也、自分の信ずるものが裏切られた辛さの程は分からんが、さぞや辛かろう事は想像できる。辛い時は私を頼れ。私とお前は仲間だろう? 辛いことも仲間となら分かち合える……お前の言葉だ」

 

 ああ、そうか……オレには、みんなが居た……。

 シエルちゃんとアリシアちゃん、そしてレンは女の子だ……間違いない……それだけは信じられる。

 

 ……なんなんだこの展開は?

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