超絶無敵キョジンオー
走って走って、我が家に。
アリシアちゃんがついて来てるかは確認しながら走っていたので、ちゃんと後ろについて来ている。
我が家の窓には明かりが灯っているので、どうやらシエルちゃんは既に帰って来てるようだ。
家からは何かが焼ける香ばしくておいしそうな匂いがする。
シエルちゃんが晩ごはんを作っててくれたんだろう。
うーむ、楽しみだな。メニューはなんだろ。
「はふ、はふぅー……疲れたぁ……こ、ここがせんせ……えと、タカヤのお家?」
「うむ、これぞ我が家。変形合体して超絶無敵キョジンオーになるんだぜ。キョジンオーは無敵でどんな敵でも薙ぎ倒すんだ。凄いだろ?」
「え!? ほんとう!?」
「嘘だ」
どうして信じたんだ。
「あ、もう! なんで嘘つくんですか!」
「アリシアちゃん、敬語敬語」
「そ、そうでした……あう、また敬語……あうう、普通に話すのってむずかしいです……」
「いや、無理しなくてもいいんだけどさ」
敬語使わなくていいって言ったから無理しちゃったのかな?
「い、いえ! 先生が言ってくれたんですから! あ、いや、えっと、そうじゃなくて……タカヤが言ってくれたから!」
「ああ、うん……無理はしなくていいからね?」
そう言いつつ、家の扉を開いて中に。
お、これは鳥の焼ける匂いだな……ローストチキンかなんかかな?
そう思いつつ、アリシアちゃんの荷物を手に中へ。
走り出した時に、重いだろうからと預かっていたのだ。
「ただいまー」
リビングへの扉を開きつつそう言う。すると、キッチンの方から返事が返ってくる。
「あ、おかえりなさーい」
あー……ただいまって言ったら返事が帰ってくるのっていいなぁ……。
なんていうか、自分ひとりじゃないって思えるところとか。
それだけでシエルちゃんを引き取ってよかったなぁ、なんて思えてくる。
もちろん、それだけだと思ってるわけじゃないけど。
「晩ごはんできてますよー。あれ? その子は?」
とたとた、と足音を立ててエプロンをつけたシエルちゃんがやってくる。
うん、幼な妻みたいで凄い犯罪臭いな。
って、そんなこと考えてる場合じゃないな。
「えっと、この子はアリシアちゃん。ちょっと色々と事情があってうちで預かることになったんだ。あー……仲良くしてね?」
「はい! もちろんです! お母さんが言ってましたから! 夫が妾を連れて来ても、優しく迎え入れるのが女の甲斐性だって!」
シエルちゃんのお母さんの言うことは相変わらず凄いなぁ……。
一体何者だったんだろ……会ってみたいような、会ってみたくないような……。
「いや、妾ではないからね? アリシアちゃん、この子はシエルちゃん。仲良くしてね?」
「は、はい! アリシアです! よろしくおねがいします!」
「え、えっと、シエルです! よろしくおねがいします!」
大声大会じゃないんだから、何もそんなに声を張り上げんでも……。
まぁ、緊張してるんだな。ここは間を取り持たないと。
「えーと、シエルちゃん、晩ごはんアリシアちゃんの分追加出来る? 無理ならオレはいいや」
「あ、大丈夫ですよー。タカヤさんがたくさん食べると思って、多めに作ってありますから。ちょっと物足りなくなるかもしれませんけど」
「大丈夫大丈夫、晩ごはんはそんなにたくさん食べない方だから」
「あ、そうなんですか? 覚えておきますね。それじゃあ、早速晩ごはんにしましょうか!」
「そうだね、ちょっと早いけどそうしようか。アリシアちゃん、家の中の案内とかは晩ごはんを食べてからにしようか?」
「あ、はい」
とりあえずここまでは順調か。
シエルちゃんとアリシアちゃんは仲良くなってくれそうだし。
そう思いつつ、シエルちゃんの後をついてキッチンに。
キッチンは食堂も兼ねている作りで、その食堂に設置してあるテーブルの上に料理が並べてあった。
料理はオレの予想通りにローストチキンのようだ。
なかなか手間がかかってそうな……ローストチキンって作るの大変なんじゃ?
「これ作るの大変だったんじゃない?」
「そんなでもないですよ? それに、お仕事もありませんでしたから、お料理する時間は沢山ありましたし!」
「そっか。無理せず適度に手を抜いて大丈夫だからね?」
サラダやらなんやらもかなりしっかりしてるし。これは本当に手間がかかってそうだ。
そう思いつつ、適当に椅子に座る。
アリシアちゃんはその隣に。シエルちゃんはオレの正面に。
「よし、じゃあ、いただきますか」
「はいっ、めしあがれー」
ナイフとフォークを手に取り、適当にサラダを取り分ける。
そして、そこでオレは食堂に入った時からの疑問を口に出す。
「君、だれ? どこの子?」
シエルちゃんの隣、オレの斜め向かいに最初から座っていた子。
年齢はたぶんシエルちゃんたちと同い年くらい。
この辺りでは珍しい事に、オレと同じ黒髪黒目の子だ。
髪の長さは結構ロングなようだ。前髪ぱっつんでお嬢様っぽい。勝手なイメージだけど。
「タカヤさんのお客さんじゃないんですか? ちょっと前に尋ねてきたんですよ」
「え、知らないけど? シエルちゃんの友達じゃないの?」
「違いますよ?」
え? じゃあ誰?