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だらり異世界生活記  作者: 国後要
芽吹きがはじまる
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クッキー

 ジルに本を貸し出した後、適当にぐだぐだ。

 しかし、何かを忘れてるような気がしてならない。

 一体何を忘れてるのか……うーん……?


 まぁ、考えても分からないってことは大して重要でもなかったんだろう。

 そう思い、オレは台所でわちゃわちゃと何かをやっているシエルちゃんのところへと向かう。


「なーにしてるのー?」


「クッキーを作ってるんですよー。シンプルなバタークッキーです」


「へぇー」


 匂いからしてクッキーだとは思ってたけど、予想外にシンプルだなぁ。

 でもバタークッキーもうまいよね。

 シンプルイズベストっても言うし。


「味見してみますか?」


「するする」


 そういってさっそく皿に並べられていたクッキーに手を伸ばし……。


「めっ、ですよー」


 はたかれた。

 味見はー?


「味見は私がさせてあげます。はい、あーん」


 そういってシエルちゃんがクッキーを一枚手に取り、それを差し出してくる。


「あ、あーん」


 まぁ、ぜひとも味見はしたいところなので、ちょっと恥ずかしいが頂く。

 おお、これは……サクッとほろほろ、舌の上でバターの香りが踊り、鼻腔へと抜けていく……!


「んまい。もう一枚」


 あと紅茶が欲しいな。渋い奴。


「だーめ、ですよ。もうちょっとで全部焼き上がるから我慢してください


「ちぇー」


 仕方ない、我慢するか……。

 なに、おやつの時間までもうちょいだからな。

 それまで我慢だ。我慢。






 小学生のガキみたいにおやつの時間を心待ちにして、ようやっとおやつの時間。

 そしておやつを美味しくいただいた後、シエルちゃんとアリシアちゃんの三人で散歩へと。


「んー、なんか本でも買ってくかな……」


 なんか読書熱が入って来たんだよね。

 たまにこう、あの本が読みたい、とかみたいな感じで。

 昔のゲームひっぱり出してきて、意味も無くレベル上げしてみたりしたくなる感覚。

 そう言う感じで、今なんか無性に本が読みたい。


「本ですか?」


「うん。でもロクな本ないんだよね」


 文化自体が未熟だからか、娯楽本は余りいい物とは言えない。

 もちろん、面白いと言えば面白いんだが……。


「アリシアちゃんはなんかおすすめの本屋とか知らない?」


「うーん……私、お買い物した事ないから……いっつも品物はお家に持ってきてくれるのがふつうだったんだ」


 ああ、そう言えばアリシアちゃんは貴族の家の子でしたね。

 そら店なんか知らんわ。向こうから持って来てくれるもんなんだし。


「シエルちゃんは思い当たる所ある?」


「あ、はい。トモエさんのお店によく来てた人が、本屋を経営してるって言ってました」


「お、その人のお店の場所は分かる?」


「いえ、それはちょっとー……」


 むぅ。じゃあ、トモエさんの店に行って聞いた方がいいかな。

 この町の本屋はだいたい巡っちまったから、その店も外れかも知れないが。

 とりあえず、行ってみるだけ価値はあるだろう。




 という訳で、さっそくトモエさんの店へとやってまいりました。


「トモエさん、古本屋やってる人の店の場所を教えてください」


「いきなりだね、タカヤくん。まあ、別にいいけど。そっちの出入り口あるでしょ?」


「ありますね」


 いつもオレ達が入ってくる入口とは別にある入口。

 どう考えても隣の家の壁に面した扉なのだが、なぜかここから入ってくる人もいる。

 恐らく、どっかしらの扉と繋げてあるんだろう。

 知り合いの魔法使いの居城に入口があるんだろうな。


「その扉は空間転移用の目印においてあるんだよ。古本屋を経営してる子はそこから来るんだ。ちょっと待って、そこに繋いであげるから」


 そういってトモエさんがカウンターから出て来て、扉に手を当てる。


「繋がれ」


 パシンッ、と音がして、扉の表面に妙な模様が現れる。

 ……空間転移の座標指定だな。

 でも軸指定が最低でも11個はあったんだが。

 普通、座標軸指定って3個で十分だよな?


「はい、繋がったよ。ここが古書店」


 トモエさんが扉を開くと、噎せ返る程の古書の匂いが溢れ出してきた。

 気圧差でもあるのか、風がごうごうと吹き込んでくる。


「暫くここにつなげておくから早く入って。あんまり開けてると怒られちゃう」


「は、はい」


 言われた通り、中に入る。

 そして背後で扉の締まる音を聞きながら、オレは呆けていた。


「なんじゃこりゃぁ……」


 周囲全てが本。本本本本本本。

 見渡す限りの全てが本で埋め尽くされた、異常な空間。

 上を見れば、見上げる程に高く。下を見れば、果てが見えない程に。

 尋常ではない量の本が収められていることが伺える。


「ふわー……凄いですねー」


「こんなにたくさん本があるんだ……凄い……」


 いや、それはいいんだけど……なんなの、この空間。

 オレの知覚に間違いが無ければ……ここ、異空間なんだが。

 それも、果てが見えないレベルで広い。

 最低でも半径数キロ圏内は魔法で拡張された空間だ。


「一体どんな凄腕がここ造ったんだ……」


 トモエさんも相当の腕前だけど、ここ造った人も相当の腕前だな……。

 そう思いつつ周囲を見渡す。

 ……人はかなりの数が居るな。店って言うのは間違いなさそうだ。


「……まぁ、とりあえず欲しい本、探すかな」


「あ、そーですね。どんな本探すんですか?」


「ああ、オレはオレで探すからいいよ。フィーリングで面白そうなの買うし。シエルちゃんとアリシアちゃんも好きなの探してきな」


「うん。じゃあ、見つけ終わったらここに集合にしよ」


「おっけー。んじゃ、いったん解散っ!」


 そーゆうわけで、ちょっと本を探して冒険の開始だ。

シエルちゃんにあーんしてもらいたい(血涙)

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