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だらり異世界生活記  作者: 国後要
芽吹きがはじまる
102/128

プログレッシヴ・ロックの雄

 剣と剣との激突。

 それは膂力で勝るオレが勝利。

 弾き飛ばされたレンは、すぐさま反転して襲い掛かってくる。


 特殊な歩法を織り交ぜた緩急自在のステップ。

 そのステップで攻め込んでくるレン。

 緩急自在であり、体の揺れが無い歩法は距離感を著しく狂わせる。


 受けに回るのが妥当な判断である。あるいは距離を取るか。

 そう思った刹那、レンの体がブレた。

 いや、そのブレは確かに存在していた。分身であった。


 気配と見た目だけのものとはいえ、こちらの目を一瞬惑わせるには十分。

 その分身と共に、レンが一気に速度を上げて踏み込んで来た。


「ジャマだ!」


 オレはそれに対して剣系スキルの【斬光剣】を繰り出し


(以下省略)






 試合はオレの勝利で終わった。


「まだまだひよっこよぉ! ……でも勝ったのになんか納得いかないぞ」


 おかしいな。

 なんかこう、カッチョよく決めたはずなのに、それが全く見られて無かった、みたいながっかり感を感じるんだが。


「私はむしろなぜか安心しているぞ。こう、大失態をしたのに誰にも見られなかった感じで」


「一体なんなんだろうな……?」


 二人で首を傾げながら、試合を見守っていた二人の元へと戻る。


「どうだった? 何か参考になった?」


 多少なりともさっきの試合で得られるものはあっただろうか。

 そう思いながら二人に尋ねてみると、二人は少し困ったような顔をする。

 そして、頬を掻きながら言う。


「えっと、その……よく分かりませんでした」


「わ、私もよく分からなかった……」


 まぁ、仕方ないと言えば仕方無いかー。

 オレとレンくらいになると、勝負の速度が音速を超えるからな。

 音速の剣戟で打ち合いとか完全にアニメとかゲームだよな。

 瞬間的になら超音速くらい出せるし。


 で、まぁ、そのくらいの速度になっちゃうと常人じゃ全く見えないわけでして。

 なんかすごい事やってるんだな、って言うのが分かるくらいだと思う。


「まぁ、最強クラスはあれくらいって言うのが分かればいいと思うよ」


「そうだな。まだ上がある、とは思うが、それでも現状では私たちが世界最強クラスだろう」


 オレはスキル値を以前やっていたスキル制ゲームから引き継いでいる。

 レベルも何かから引き継いでいるようなのだが、そのレベルが具体的に分からない。


 スキルやレベルは目で見て確認できるわけではないからだ。

 とは言え、それは間違いなく存在するのだろうと言う事は分かる。


 そして、スキルは未だに成長している感じがする。

 レベルも上がっていると思う。

 なので、もっと強くなる事は可能だと思う。


 でも具体的な限界値が分からないんだよな。

 そう言うわけで、現状最強クラス、という事になるわけだ。


「あの、どれくらい頑張ればあんなに強くなれるんですか?」


「そうだね、オレの場合はある程度の基礎があった状態から、ひたすら実戦訓練だったかな。一年くらい実戦を重ね続けて今の強さ」


 最初の半年、全国を歩き回った。

 その最中でいろんな敵と戦った。

 名が知れるようになると向こうから襲ってくるようになった。

 やがては魔王から直接刺客が差し向けられるようにもなった。


 そして勇者として名乗りを上げたところで刺客は更に増えた。

 あっちこっちに居た敵の親玉を殺せば、刺客はもっと増えた。


 寝る暇も無い程の連戦で、無理やり鍛え上げられた感じだ。

 もしゲームのスキルとレベルを受け継いでなかったら間違いなく死んでただろうな……。

 それが引き継いだゲームのスキルとレベルが基礎だった感じだ。


「私もさほど変わらんな。命懸けの戦いを繰り返し、来る日も来る日も戦い続けた事が私の強さを押し上げてくれたのだろう」


「そうだな……最初に会った時は、今のアリシアちゃんよりちょっと強い程度だったしな」


「ああ。確かにその程度だったな」


「そうだったの!?」


「そうだよ。とは言っても、レンの剣術は実戦稽古が主だったみたいだから、あの時のレンとアリシアちゃんが戦えば、ほぼ確実にレンが勝つかな」


 アリシアちゃんの剣も実戦には使えるんだけど、実戦重視、というわけではないしね。

 レンは目潰しだの足蹴りだのも上等、って感じで使いまくってたし。


「実戦を積めば、そんなに強くなれるんだ……」


「だからと言って、実戦に挑もうとしたりするなよ。一の実戦は百の稽古に勝り、実戦でしか得られぬものもある。だが、稽古でしか得られぬものもあり、百の稽古だからこそ得られるものもある」


 要するに基礎は大事、という事だ。


「さて、オレ達の試合を見て分かった事は殆ど無かったみたいだけど、一つ言える事がある」


 勿体つけて見せつつも、続きを言うために口を……。


「戦闘とは総合力だ。一つに優れていても必ず勝てるわけではない」


 レンにセリフ取られた……。


「と、とは言え、一つに優れていると……」


「うむ、優れた個所は自分の武器ともなる。つまり、総合的な技術を身に着けつつも、自分の長所を伸ばす事が強くなる秘訣だ」


「じ、自分の長所は」


「長所を伸ばす事だけにかまけてはいけない。だが、総合力を伸ばすだけでは勝てない相手もいる。例えば私の長所は素早さ。この素早さで攪乱し回避する。だが刀剣での防御も出来る。そう言う風にだ」


「え、ええと、それで、きりふ」


「そして、ここぞと言う時に使う切り札だ。一度限りしか使えなくてもいい。相手を必ず仕留める時に使うのだ。切り札は神を殺せる程に鍛え上げておくのがいいぞ」


「レンなんか嫌いだ」


「え? わ、私は何か悪い事をしたか?」


「うるさいやい」


 別にいじけてなんかいないんだ。

 ただちょっと、言いたいことを全部言われただけであって。

時を吹っ飛ばしておきました。

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