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だらり異世界生活記  作者: 国後要
家庭教師編
10/128

上目遣いは反則

 おかしい。こんなの絶対におかしいよ。

 どうしてオレは既に承諾した事になっているんだ?

 とりあえず、今からでも断ろう。

 アリシアちゃんを預かる事自体は嫌じゃないんだけど、なんかあやしい。

 

「あの、この話」


「いやあ! タカヤくん! 君が頷いてくれてよかったよ! もしも君が頷いてくれなかったら…………いや、この話はよそう」


「今の間はなんですか?」


「……聞きたいのかね?」

 

「え……あ、いや……き、聞きたいです」


「…………本当に聞きたいのかね?」


「……や、やめておきます」

 

 え、なに、なんなの? オレなんか酷い目にあうの?

 暗殺者でも送り込まれんの? それくらいは撃退出来そうだけど……。

 なんか異端認定とかされたら、この国で生きていけないし……。

 やばい、権力者って怖い。棲む場所間違えたかもしれん。

 

 と思っていると、準備を終えたのかアリシアちゃんが鞄を手に戻って来た。

 アリシアちゃんの荷物はさほど多くいようだ。

 ちょっとした身の回りの品と、少しの着替えくらいだろう。

 

「あ、あの、先生! ふつつかものですが、よろしくおねがいします!」

 

 ものすごいデジャビュを覚えた。

 

「ふむ、アリシア。家庭教師として来てもらっている時間外でも先生と呼ぶのかね? 何か他の呼び方などどうだね? ほら、名前で呼ぶとか……」


「な、名前! あ、あの、先生、お名前で呼んでもいいですか? あ、いえ! 先生が引き取ったと言う子は、先生をなんと呼んでらっしゃるんですか?」


「え? ああ、タカヤさんって呼んでるけど」

 

 なんだか展開についていけないよ、オレ。

 

「そ、それじゃあ……タカヤって呼んでも、いいですか……?」


「あ、ああ、いいよ」

 

 なんかキュンッと来た。

 顔赤くして、上目遣いに、そして恥ずかしげに名前呼ぶとかキュンッと来ても仕方ないよね?

 

「というか、ふつつかものって言う挨拶は」

 

「アリシア! タカヤくんと仲良くするのだぞ! もちろん、タカヤくんの引き取ったと言う子ともだ! 決して負けぬよう、例え負けたとしても、仲良く半分こ出来るようにだ!」


「は、はい!」

 

 頼むからオレの話を聞いてくれ。

 というか、半分こって何を?

 

「タカヤくん、君は妻妾同衾という言葉を知っているかね?」


「いや、知りませんけど。なんですかそれ」


「ふむ、知らんのならまぁいい。しかし、男たるもの全てを包み込む気概を見せなくてはならん。出来ればアリシアを一番に選べと言いたいが強制は出来ん。例え一番でなくとも、わけ隔てなく接して欲しい」


「そりゃそのつもりですけど……」

 

 一体なんなんだ?

 

「うむ、男たるものそうでなくてはな! では、頼んだぞ! はっはっはっはっは!」

 

 嵐のように去って行った。わけがわからないよ。

 

「…………とりあえず、帰ろう」

 

 アリシアちゃんを預かる事は別にいいしね。

 何が何だかよくわからないけど、確かに町の事を知るのは大事なんだろうとは思うし。

 なんか押し付けられた気はしなくもないけど……まぁ、いいや。

 

「ええと、じゃあ、行こうか、アリシアちゃん」

 

「はい!」

 

 どうしてアリシアちゃんこんな嬉しそうなんだろ。

 

「アリシアちゃん、不安とかないの? 町の生活って色々大変だと思うんだけど」


「せんせ……あ、いえ、えっと、タ、タカヤが、いるから……」

 

「そ、そっか」

 

 やばい、アリシアちゃんが可愛い。なんか胸がドキドキしてる。

 

 ……待て、待て待て。待てよ! 待てって! ステイ、ステイステイ!

 ドキドキなんてしてない! これは、そう、不整脈! 心臓病なんだよ!

 クッ、オレの心臓のコキュートスブラッドが! これは中二病だった。

 

 とにかくオレはロリコンじゃない! ノー! ロリコンと違う!

 オレはあくまでも、子供好きなの! 女の子だけ好きとかってこともないし!

 男の子も女の子も、わけ隔てなく好きなの!

 おい! 誰だショタコンまで入ってるとか終わってるって言った奴は!

 

「あ、あの、タカヤ? どうしたんですか? おなかでも痛いんですか?」


「え、あ、ああ。いや、なんでもないよ。えっと、そうだ、丁寧語って言うのも変だし、普通に話していいよ?」

 

 タカヤって呼び捨てだし。それで他だけ丁寧語ってなんか変だよね。

 しかし、アリシアちゃんならさん付けにしそうだけど、シエルちゃんに対抗心でもあるんだろうか?

 

「それじゃあ、普通に話します……じゃなくて、普通に話すね?」

 

「お、おう……」

 

「あの、じゃなくて、えっと……タカヤのおうちって、どんな家なの?」


「せ、せやな……」


「え?」

 

「え? あ、いや、ごめん」

 

 ええい、落ち着け、落ち着くんだオレ。

 ビークールだ。オレ、落ち着け。クールになれ、タカヤ。

 

「よし、落ち着いた! そうだ、家まで競争!」

 

「ええ!? 競争って言っても私タカヤのお家知らないよ!」

 

「ならオレについてこーい!」

 

 そう言うと、オレは走り出した。

 もう細かい事を考えるのはやめよう。

 アリシアちゃんを預かるのが細かい事かを考えるのもやめる。

 とにかく今日はしんどい! 家に帰ってメシ食って寝る!


 面倒な事は後回しだ! 今考えるのは、今日の晩ごはん事だけでいい!

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