上司への報告。
私と鷹くんが短い新婚旅行から帰ってきてから上司に2人揃って挨拶に行かなければならない。
本当にめんどくさいったらありゃしない。
それに、お土産も買えなかったしね。多分、イヤミも言われるだろうけど現代人の私には何とも思わない。この世界の人のイヤミって深く考えないと分からない事ばかりだし。単純な私には何を仰っているのかサッパリ。
例の女房さん達とも顔馴染みになっているしね。そんだけ宮中に参内したことになるんだけど。
でも、イヤなのよね。鷹くんの上司って。まるで「麻呂」なんだもん。
鷹くんには怒られたけど笑わずにはいられない。だって、顔は白塗りで歯は鉄漿。
何回、出会っても私は慣れない。鷹くんって毎日、よく平気でいられるわ。
だけど、まだ「麻呂は~」と言わないだけマシだわ。
そして、上司の部屋に2人並んで上司を待っていた。
でも、今日は何故か私のツボに入ってしまって上司の顔を見たとたんに以前、マンガで読んだ麻呂にソックリだったから思わずその「麻呂」を思い出したのよ。
鷹くんは怖い顔でわたしを睨むんだけど、こればっかりは仕方が無い。
私は上司の顔を見ないように麻呂の前に座ったわけ。
「この度は休みを頂き有り難う御座いました。私達は無事に帰って来たことをお知らせに上がりました。」
「そうか。良い、旅だったのだな。」
「はい。お蔭様で。」
「ところで、そち(凛)は如何だったのじゃ?」
「はい。・・・・・プッ!クククク・・・・あ、ありが~~とうプッ!・・御座います。ククク・・・」
「・・・・・そなた。何が可笑しいのじゃ!」
「い、いい・・え。何も・・・・ククク・・・」
「・・・・妻殿。如何したのだ?苦しいのか?」
「はい・・・ククク・・・じょ、上司様・・・失礼致しました。大丈夫で・・・す。プッ!」
「申し訳御座いません。妻は旅の途中に何かを食したようです。そして、妻だけではないのです。屋敷の者まで妻と同じ症状なのです。今日も私は妻に休めと申したところ、妻は『とんでも御座いません!あなた様の上司様なのですから何が何でも伺います。』と申しまして参内したので御座います。」
「そうか・・・そうであっか。これは、妻殿。申し訳ない。それまでして夫の事を思っているなどとは・・・桐殿。良い妻殿を持たれた!」
「かたじけなく思います。」
「クククク・・・・・申し・・ククク・・申し訳、プッ!申し訳御座いません。」
「旅ではそなたも屋敷の者達も難儀であったのだろうな。」
「はい。それはもう。・・・妻の様子が変わりましたのでこれで失礼致します。」
「うむ。そうじゃ!妻殿の歌は素晴らしいと聞いている。一度、私にも読んで欲しいものじゃ。」
ウソッ!!ウソでしょう!誰だ!そんな事を言ったのは!
「凛。大丈夫か?顔が真っ青では無いか!では、これにて失礼します。」
鷹くんはそう言って私を引きずるようにして部屋から出ていった。
なんで?私があの麻呂に歌を読まなくちゃいけないの?
帰りの牛車の中で鷹くんに叱られました。まぁ、私が悪いんだから。
「凛。あの態度はどうした?何が面白かったのだ。俺は焦ったぞ。急にお前が笑い出すのだから。咄嗟にあのような言い訳をしたが。」
「だって~~~!あの上司の顔が・・・アッ!ハハハハハ・・・・・・」
「上司の顔?何時もと同じ顔だが。」
「ハハハハハハ・・・・・お腹が・・お腹が痛い~~~!あの・・・上司の顔が真っ白だったし眉毛って言うの?大きさが違っていたし、それに歯が真っ黒だったもん。私、昔読んだマンガでねアノ上司ソックリな絵があって、それも自分の事を『麻呂』って呼ぶのよ。私はアノ上司が自分のことを麻呂って呼んだらどうなるか?と想像したのよ。そしてら可笑しくって我慢できなかったの。それにしても、鷹くんは毎日、アノ上司の顔を見れるわね~~。私なら笑い死をしてしまうわよ。」
「・・・・・・・凛。あの顔が普通だ。何も可笑しくは無い。でも、今日は少し顔が白かったように思う。きっと、お前に会うから身だしなみをしたのであろう。」
「身だしなみ?・・・・ああオシャレね。でも、この世界のオシャレって変よね。でも、良かった!鷹くんがあんなんじゃなくて。」
「・・・・・・・・・・(俺も正装の時は上司のようになるんだが凛には黙っていよう。)」
そして、私の笑いも収まって屋敷に到着!
そして、鷹くんは「ところで、凛。また歌の稽古をしないといけなくなったな。」
「ヘッ!・・・・イヤだよ~~~!!!また、あの顔を見ないといけないの?ムリだからね!」
凛。歌のことより上司の顔がイヤなのか。お前の「イヤ」の基準な何だ?
今日は桐殿と妻殿が私に挨拶に来られた。
確か名前は凛殿と聞いている。それに「月の姫」とも聞いておる。
一度、どのような「歌」を読まれるのか聞いてみたいものだ。
だが・・・・気の毒なことよのう。屋敷の者達も一緒か。
きっと、「笑い茸」でも食したのであろう。
そうか!笑い茸を食すると最後はあのように顔が真っ青になるのだな。
憶えておこう。




