EPISODE6
『機体動力炉が、活動限界に達しました。全システム停止・・・仮想シュミレーターシステムを終了します』
俺は、目の前というかHMDに表示される絶望的な文章を睨みつける。もう連日のように見るようになってしまい流石に慣れたが、気分は最悪だ。
(・・・もう、時間か。くそっ)
操縦服に、搭載された記録再現機構をシュミレーターから切断して、手元のコンソールを操作してハッチを開く。カシュっと、音がして後ろのハッチが開いて座席がスライドして俺は機外へと出た。
「-今日も、篭ってたんですねセツナ?あまり、根を詰めるのは危ないですよ」
「・・・」
ハンガーから、居住ブロックに戻ると見知った人間が話しかけてきた。階級章は、少尉。本来なら上官不敬罪で、軍法会議にかけられて射殺される。
「アルか、また隊長に言われて俺の心配か?」
「-いいえ、これは友人としての忠告です」
アルことアルベールは、まじめな顔をしてそう言い放つ声音は、やさしく聞こえるが所々に怒気が含まれていた。
「別に、貴方が体を壊すのは勝手ですが……少しは自分の立場というものを考えてくださいっ!「分かってんだけど、あの機体に勝つにはこれしかないんだよ」……セツナ」
そう言って、俺は彼から歩き去る。今日得たデータを開発部に渡してあの正体不明機に、対抗できる追加装備なり新型を造ってもらうつもりだ。多少のリスクがあろうと関係ない、俺は家族や戦友を殺した帝国に復讐するだけだからだ。
「-彼らの状態はどうだね?」
「……はっ!検体番号A-01及び02ともに、全機能正常です。×××中佐」
どこかの研究施設だろうと思われる一室に設けられ数々の機器に繋がれたポッドを見ながら中佐と呼ばれた男はこう続けた。
「・・・先日の戦闘試験時に、彼らが行った会話等の記憶処理は済んだか?」
「はい。……ですが、01のほうが彼に興味を持ってしまったようでして」
「彼とは?」
「中佐もご存知の方です」
そう言って、男は手元のコンソールを操作して映像を出力する。その映像を見て中佐ことユウヤ=ブレーメルは、笑いを隠しきれず笑い出した。
「くっ、あはははははは。セツナ、お前かよ」
男は、自分の上司が大笑いしているのに唖然としていた。
「おいっ!そいつらの調整は、何時終わる?」
「ーえ!?おそらく、後4日以内に終わるかとー「よし、ティフォーネの機動テストを行う」
そう言って、ユウヤは部屋を飛び出した。
『セツナ中尉、ESブースターのチェックをお願いします。』
「了解。XHSユニット各部ハードポイントに接続……接続完了。」
俺は、HMDに表示される機体各部の状況をオペレーターに伝える。
『了解しました。では、開発主任のラシェル技術顧問に代わります。―あー、中尉?そのESブースターは、ファルコンの機動性を15~20%向上させる新装備だが、エネルギー消費率も上がっているし背部武装ラックを取り外されてるから、銃器の装備は両腕部のみ可能だができるだけ近接装備だけで頑張ってくれ』
「了解」
『それでは、模擬戦闘を開始します。3,2,1スタート』
オペレーターの合図と共に、俺はブースターを吹かして上空へと飛び上がる。それと同時に、体を強烈なGが襲う。
それに、意識を持っていかれそうになるが寸でのところで耐えHMDを見るとボレアス(データ上の仮想敵機である)の1個小隊と航空機2個小隊がセンサーに反応する。HMDに表示されている機体ステータスに視線でアクセスしてメインAIを呼び出す。
「アーセル(AIの個別呼称)、現在搭載されている全兵装を表示しろ!」
[ラージャ。両腕部に、40ミリ突撃銃両腕部近接兵装コンテナ部に、ロングヒートセイバー、背部増加ブースターパイロンにAAM(空対空ミサイル)ポッド及びASM(空対地ミサイル)ポッドを2問、両脇ウェポンラックに、CIWsを装備しています]
「ーAAM、ASMを同時発射。当てる必要はない、ターゲット手前で自爆するように信管をセットしろ」
『ラージャ』
AIが信管の設定完了を表示するとともに俺は、トリガーを引いた。ミサイルが白煙を噴きながら飛翔し敵眼前で、爆発する爆炎が晴れる前に、飛行隊に接近し空になったミサイルポッドをパージすると同時に突撃銃を前面に斉射。敵マーカーの消失と同時に、着地ー『敵銃撃、警報』とHMDに表示される。瞬間的にレバーを引っ張り側転してビルの陰に隠れる。銃撃が終了した瞬間に、飛び出し対応される前に肉薄してヒートセイバーで溶断する。
『-敵部隊の全滅を確認。シュミレーターを終了します』
オペレーターが、そう言うとともにモニターが一瞬ブラックアウトして次の瞬間には、いつもの格納庫に戻っていた。
『状況終了、お疲れ様でした中尉。これにて本装備の試験評価を終了、次の装備試験に移りますか?』
「-そうしたいのは、山々だが曹長。残念ながら、出撃命令がきちまった」
そう答えたセツナの通信デバイスには、”国境付近に帝国軍が展開。直ちに我々も出撃し防衛線を構築する”と、いった命令文が表示されていた。
その頃、国境付近帝国軍第76AD大隊ー通称”三つ首の魔犬”-旗艦”ヘルヘイム”
「ブレーメル中佐、少々質問があるのですがよろしいでしょうか?」
「ーなんだね、フライムヘルト艦長?」
艦長席に座る壮年の眼帯をつけた艦長が、傍らに立つユウマに自分に手渡されたPDAに書かれていた作戦命令について尋ねた。
「ああ、それのことかい。-今回は、私のティフォーネの実戦テストと彼らのデータ蒐集が目的だからね。この艦に搭載している他の機体は、艦の護衛に就かせて私たちに援護射撃はしないこと」
ユウマは、自分の後ろに控えているAESP計画で誕生まれた少年少女に振り返る。彼らは、白銀の髪と紫色の瞳という容姿をしている性別以外の差異が無いので全てがクローン技術によって創造られたことが一目でわかる。
「