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鋼鉄の機兵  作者: 長月九郎
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episode4

 俺たちは、あの後すぐに敵基地から撤収した。作戦目的は達成したがその犠牲は決して小さくはなかった・・・。

 616中隊は、パイロット5名が死傷し中隊最低人数を割り機能を停止せざるを得なかった。

そう言う俺自身も、現在は顔の右半分を包帯に覆われて病院のベットの上だ。

(・・・ユウマ=ブレーメル。ファーレンフェルト王国士官学校を首席合格するも配属前日に謎の事故により死亡。2階級特進により最終階級は大尉、か・・・)

 俺は、病室に備え付けられた情報端末を閉じ制服に着替え松葉杖をついて病室を出る。そろそろ、基地からの迎えが来るはずだ。今日は、イーウェンやほかの将兵の葬儀が行われる日だった。

『-先日の戦闘に於いて果敢に戦い散って行った、同胞に最大の敬意をもって・・・敬礼っ!!』

壇上に掲げられた遺影に向かって俺たちは敬礼する。


「-イーウェン=ゲイデバンドしょー・・・ではなく大尉の遺品はこれで全部ですか?」

「ああ、全部だ」

遺品管理兵へ全遺品を渡した俺は、そのまま病院へと足を進めた。



 それから、3年の月日が経った大陸暦245年。ファーレンフェルト王国教導隊基地

『-それでも、お前らは国を守る兵士かっ!!弛んでいるぞ、強化装備の加重緩和パワーアシスト機能を切って10㎞行軍・・・開始っ!!』

 敵役色アグレッサーカラーに塗装された第4世代AD”ファルコン”から1人の男性パイロットが降りてくる。首のところで結われ腰まで伸びた黒髪、強化装備に包まれた肢体は細くも逞しく見えた。

「・・・ふぅ、これで午前中の訓練工程は終了。午後は、教導部隊内での訓練か・・・」

 男は、整備兵から手渡されたミネラルウォーターを飲みながら今日の予定を呟いていた。

「久しぶりだな、しー・・・じゃなかった、教導部隊”フェアリーズ”副隊長セツナ=アマギ中尉」

 呼びかけられた男ことセツナ=アマギは、振り返りかけていたバイザー型ヘッドセットを外す。

その顔は、3年前よりも精悍になっていたが右目を縦に横切る傷が痛々しかった。

「クレア少佐・・・教導隊うちに何か用ですか?」

「いや、私は中尉に用があってきた。・・・616中隊を復活させる、古参メンバーに新参者を加えるが構わないな?」

 クレア=ヴェルデハイトは、そう彼に言い放つと一枚の封筒を手渡した。

「辞令書だ。明日付で、貴様は616中隊に転属する。今日中に荷物をまとめて、明日1300時までにヴォルペル基地ブリーフィングルームに集合だ」

「了解!」


 3年ぶりに戻ってきたヴォルペルの街はあまり変わっていなかったが、空は常にADが飛びまわっていたし衛兵もいたるところに配置され監視の目も強かった。

(ここに戻ってくるのも久しぶりだな…教導隊への転属命令を受領してからだから3年か。長かったな)

俺は、肩に背負った鞄を担ぎ直し古巣へと歩を進めた。

 基地の面子もあまり変わりはなかった、多少の人員の補充もあったようだが整備班の連中やPXの料理員も3年前と変わらず俺に話しかけてきた。

「よぉ、セツナ。おかえり、元気にしてやがったか?あの敵役色のファルコン、お前さんのだろ?」

「ローウェル班長、お久しぶりです。616中隊時のカラーに変更しておいてください」

「-そんなもん言われんでも分かってるわい。野郎ども、とっとと仕事しろや!」

ローウェルの怒声と共に整備兵たちはまるで蜘蛛の子を散らすように仕事を開始した。

(ああ、懐かしいな・・・あの頃を思い出ー

ズキン、顔の傷がそんな感じの音を響かせるかのように疼いた。

(こんどこそ、ユウマをーあいつを殺してやる)

怒りの炎を心にともし彼は格納庫を後にした。


(-何故だ。何故、他の将兵あいつらは俺を見てざわつく。そんなに教導隊の人間が来ることが異常なのか?) 教導隊が、基地に来るのは別段不思議ではないがー副隊長が1人で来たことが彼らには不思議でしょうがなかった。

「-おい、さっきから後ろをつけてる奴出てこい。出てこないなら―「撃ち殺す、ですか?中尉殿」

そいつは、悪びれた様子もなく通路から出てきた白銀の髪に漆黒の目、右目は眼帯で閉ざされている。服装は、シュタインガルド王国軍のものだった。

「・・・王国軍の人間が何の用だ?」

「-申し遅れました。本日付で、616中隊およびファーレンフェルト王国軍に転属となりましたエドワード=カッセンティリア少尉であります」

そう言って、彼は敬礼する。

「-私は、セツナ=アマギ・・・階級は、ー

”いいか”と、そう言いかけた時突然の轟音が響いた。

『基地内にいる全将兵に告げる。第一種戦闘配備コンディションレッド発令、ADパイロットは至急搭乗機に搭乗し出撃せよ。繰り返す―」

(転属初日から、厄介なことになったな…)

そう呟きながら、セツナはハンガーへと駆けだした。

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