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鋼鉄の機兵  作者: 長月九郎
episode0 
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episode1

大陸暦12月13日

 赤茶けた地面と屑鉄の転がる荒野を、今E-15S”ホーク”12機からなる戦闘部隊が高速で移動していた。

 この殺風景な世界は、今迄の戦闘の傷跡だ。この地域は、今でも戦闘は中止されていない。

(・・・戦争は、いつもこうだ。・・・ははっ、でも俺もこれから同じことをするんだよな)

管制室コックピットに、座るセツナ=アマギ少尉はそう思いながらも自嘲気味に笑う。

『リンクス1より各機へ、これよりケース40における訓練を行う』

彼の耳に、凛とした声が響く。モニターに目を向けると、ガラス細工のような美貌の女性が映る。彼女が、この中隊の隊長クレア=ヴェルデハイト大尉である。女性でありながら、卓越した操縦技術を持ちその駆けるような戦い方から”ファーレンフェルトの獅子”という二つ名を持つ猛者もさである。

 ケース40、すなわち対ADアーマードドール戦闘の中でももっとも難易度のある中隊で旅団規模の敵軍との戦闘を想定している訓練だ。もっとも旅団規模の敵軍と会うことはほとんどないが、そもそも旅団規模の敵に会ったらまず即時撤退が最良の選択だ。

『リンクス6聞こえているのか?6』

「っ!?・・・6了解」

クレアから、呼ばれて彼は急いで返事をした。

『リンクス0から、中隊各機へ前方に敵機軍の反応。音紋パターンから、ボレアスと断定。60秒後に、会敵します』

 戦域管制官からの、敵機の情報が告げられる。

『全員、聞こえたな?これより、各機、分隊エレメントで行動しろ』

「「「了解っ!」」」

 彼女の号令と共に、中隊は6の分隊に分かれてゆく。

『よぉ、セツナ。アヤセちゃん、元気か?』

分隊を組んだ後、速攻で通信してきた奴がいた。同期のイーウェン=ゲイデバントだ。彼とは、士官学校時代からの知り合いでこの部隊にも同時期に配属された。詰まる所、腐れ縁、て奴だ。

「・・・」

とりあえず、無視をする。こいつと喋っているとろくなことが無いからである。

『無視っ!?酷くねっ?』

画面の向こうで奴が叫んでいるが、無視を敢行する。

 そんなことをしていると、モニターに敵性存在を示す光点が表示される。ざっと見て100機ほど彼我の戦力比は、ボレアスが旧型であることを引いても10対1、明らかに無謀であるが、そんなことでビビっていられない理由わけが、彼にはあった。

『-リンクス1から、全分隊へ全武装使用自由オールウェポンズフリー。噛み殺せぇッ!』

「「「了解」」」

 隊長からの指示と共に、セツナ達は加速し腰部のHPハードポイントからWE-15D突撃銃を引き抜き36mm砲を撃ち始める。

 弾丸が、次々と銃口から吐き出され敵機をずたずたに引き裂いていく。

『ーリンクス0から、中隊各機』

 敵機を次々と屠っていく中、またも戦域管制官からの通信が響く。

『-敵機の増援を探知、12時方向。距離約2500』

モニターに、敵機の情報が映し出される”ホーク”同様、第3世代型ADのノトスだ。

『-リンクス1から各機へ、例の兵装オモチャを使用する。準備しろ』

 部隊全体がV字型に、展開する。

『リンクス6、準備はいいな?』

 隣に立つ隊長から話しかけられるが、セツナは「了解」とだけ答えて今迄、保持していた突撃銃を投棄し、左肩の増設HPに懸架された規格外の武装、6つの砲身が束ねられた大型砲の安全装置を解除する。

 ”連射回転式砲身銃ガトリングガン”、技術部が開発した戦闘装備に火が入る。

えっ!』

その瞬間、今迄の火器とは全く違う砲声と閃光が生じる。連射式回転銃は、チェーンガン並みの速度で120mm弾を吐き出し続け、ノトスの強固である前面装甲をまるで粘土のようにひしゃげさせていく。その時だった。けたたましい警告音が、管制室内に響き渡りセツナがモニターに目を向けると機体の異常を知らせるメッセージウィンドウが表示されていた。

「-っ!砲身加熱・・・くそっ!」

この装備は、通常の火器と違い異常な速度で弾丸を発射するため特殊な冷却装置がついていたが、この機構に何らかの不具合が生じたのだろう。彼は、それを投棄して近接戦闘に移行しようとした瞬間、目の前にノトスの刃が管制室に振り降ろされた。

[-リンクス6、戦闘続行不可能と判定]

周囲に広がっていた景色がブラックアウトし、そこには無機質な壁が映し出された。


「ったく、肝心なときに動作不良かよ。これだから、試作兵器は…」

クレアが、シュミレーター1号機から降りると真後ろの6号機からリンクス6-セツナ=アマギ少尉が、ぼやきながら降りてきた。

「違うな。あれは、荒野の砂塵が冷却装置のファンに引っかかった。動作不良ではない」

「・・・じゃあ、防塵機構になんありと?」

「・・・そうなるな。・・・少尉、いますぐにー「なんです?」・・・いや、なんでもない」

 彼女は、この装備についての改善点のレポートを提出しろと言いかけて口を閉ざした。


そのシュミレーション終了から数時間後、クレアは整備ガントリーに固定されたイーグルを前に、専任の整備主任と愛機の不具合について話していた。

「・・・機体のFCS(火器管制システム)の照準に、多少のずれが生じているのだが…」

「大尉は、ここのところずっと、例の装備を付けたホークに乗っていたからでしょう。あれは、左肩部に重量が偏った機体ですので、そのせいではないでしょうか?」

「そうか・・・で、次の出撃までにこいつは整備を完了させて出せるか?」

「ふーむ、如何せん大尉の言っていた問題点はすぐに解決できると思いますが、こいつは元々高速戦闘用の機体ですから、部品の交換を含めるときついかもしれないですね」

「・・・そうか」

彼女が、顔を伏せると同時に整備主任が唐突に訪ねてきた。

「そう言えば、セツナ少尉は何処に行ったのですか?・・・今度来る試作機は、彼が担当するはずなのですが・・・」

「あいつは、今日は実家に帰っているよ」

「実家、どういうことですか?」

「そのままの意味さ」

そう言って、クレアは格納庫を後にした。

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