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天空和音! キグルミオン!  作者: 境康隆
二十八、意気衝天! キグルミオン!
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二十八、意気衝天! キグルミオン! 8

「アメリカ軍より、入電! 緊急要請! エキゾチック・ハドロン照射を、最大限で寄越すようにとのことです!」

 その報告は額から飛び散る汗とともに発せられた。

 スペース・スパイラル・スプリング8の司令室。一人のクルーが船長の椅子に勢い良く振り返る。

 その額にはびっしりと汗が浮かんでいた。その汗が彼が振り返ることにより無重力の四方に飛んでいく。

 空調が効いていない訳ではない。

 それでも多くのクルーの額やこめかみに汗が浮かんでは無重力に浮いていく。

 それはここに居る全員の心の中を如実に物語っていた。

「分かったわ! こっちは、先から加速器で最大限に粒子を加速中よ!」

 サラの額からも文字どおり汗が浮かんでいく。

 サラは自身の船長の椅子にベルトで体を結んで座り、横から伸びでたアームにつけられた情報端末に指を走らせる。

 許可を求めるアラートが次々と立ち上がり、サラがその表示が浮かんだ端から了承していく。

 その浮かんでは消えていく決裁用のアラートの後ろでは、地上の様子が表示されていた。

 半透明のアラートの向こうに、次々と倒されるドローン・キグルミオンの姿が映し出されるる

「アメリカさんが、こんなに苦戦するなんて……」

 サラがその様子にギリっと奥歯を鳴らす。

「想定以上に重力が邪魔のようです。宇宙怪獣の複数飛来も想定外でしょう」

 クルーの一人が更に振り返り冷静に分析する。

「ええ……そうね……本来なら、数を揃えて、物量で圧倒して……重力下での不利を克服するつもりだったんでしょうね……」

 サラがモニタに指を走らせながら応える。

 アラートの向こうではやはりなすすべなくドローン・キグルミオンが宇宙怪獣に倒されている。

 戦闘における反応速度がまるで違っていた。

 全ての行動において宇宙怪獣がドローン・キグルミオンの一歩も二歩も先を行く。

「ええ。一体に複数でお襲いかかる計画だったんでしょう。むしろ宇宙怪獣の方が数が多い、この状況。それでも何とかなると踏んでいたんでしょうが、結果は慌ててのエキゾチック・ハドロン照射要請ですね」

「そうね」

「加えて慣熟訓練もろくにできないでしょう。制御装置の運営に何人必要か分かりませんが、多くのドローン・キグルミオンが、配属即実践のような兵にコントロールされているのではないでしょうか? いくらかはAIの支援を受けてるでしょうが。それにしても、米軍の想定以上の苦戦でしょう。ロシア辺りは、笑ってるんじゃないですか?」

「仕方がないわ。でも、あの基地には、今ミズ・ヒトミも居るのよ。人類の全体のピンチなのよ。このままじゃいけないのよ。よし!」

 サラが最後に勢い良くモニタに指を叩きつける。

「オッケー! 最終確認終了! エキゾチック・ハドロン照射を許可します! 全員聞いて!」

 サラが司令室の全クルーに向かって呼びかけた。

「今はアメリカ軍の力を信じるしかないわ! 他の都市では、このままいくと核攻撃が検討されるはずよ! 今ここで、彼らのキグルミオンが優勢に立ってくれないと、世界中が汚染される危機になるわ! 数が多いけど、確実に照射をお願い!」

 サラが肺腑の底から声を出して指示を飛ばすと、クルー全員から力強い頷きが答えとして返ってきた。

「そうよ……今私たちにできることは、これだけよ……」

 サラが祈るように呟くと、エキゾチック・ハドロンの照射を告げるアラードが司令室中のモニタに浮かび上がった。

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