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天空和音! キグルミオン!  作者: 境康隆
二十八、意気衝天! キグルミオン!
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二十八、意気衝天! キグルミオン! 6

 一見緩慢にも見える動きで、ドローン・キグルミオンは宇宙怪獣に襲いかかった。

 背中から全身を覆う機械に操られた巨大着ぐるみ。機械に操られるがままに、背中の動きに合わせて、このドローンは動く。

 慣性に従って機械の動きに一瞬置いていかれてから、ドローン・キグルミオンはその腕を振り上げた。

 その動きはどうしてもワンテンポ遅れているような印象を見ているものに与えた。

 本来、内からその身を支えるはずの着ぐるみが、機械に吊られて動く以上されは当然の動きだった。

 ましてや今は重力下。垂れ下がった体が、無重力時以上にその身を鈍くさせ、魂のない繰り人形感を与える。

 ドローン・キグルミオンがその動きで拳を振り抜く先には、凶暴さを凝縮したような宇宙怪獣が牙を剥いていた。

 今はこの謎の変温動物の方が生命らしい動きをしていた。

 ドローン・キグルミオンの拳に牙で威嚇するように歯を剥くと、そのまま実際にそのアギトで相手の腕に噛みつこうとする。

 感情がその噛み鳴らされた歯の音に乗っていた。

 怒りや興奮が唾と音になってアゴの上で鳴り響く。

 だが腕を狙われたというのにドローン・キグルミオンはまっすぐ拳を振り抜く。

 宇宙怪獣が威嚇を含めてアゴを何度も角度を変えて噛みつこうとするのに対し、それはまるで我が身を顧みないロボットのような動きだ。

 実際ドローンとして、一定のプログラミングに則って動いているのだろう。

 ドローン・キグルミオンは一度決定した動きに従い、緩慢でも躊躇や無駄な動きなく宇宙怪獣に襲いかかる。

 しかし地上でのその動きは重力に引かれて多少無理があったようだ。

 機械任せの一定の動き以上に、重力による鈍重な動き。かつて地上を支配した大型は虫類の姿をした宇宙怪獣に、その動きは易々と見切られた。

 宇宙怪獣がドローン・キグルミオンの上腕に噛みつく。

 鋭い牙が柔らかな布地に食いついた。

 そのまま宇宙怪獣が首を内にひねると、ドローン・キグルミオンはなすすべなく倒される。

 いや実際にはその身を支えようと足を開こうとしたが、宇宙怪獣にその前に強引に引き倒される。

 繰り人形の限界がその一対一の戦いでは現れていた。

 だが――

 一つ易々と倒されたドローン・キグルミオンの姿の向こうから、すぐに別のドローンが宇宙怪獣に向かっていく。

 それは先に倒されたドローンと同じく無機質で、やはり繰り人形らしい意思を感じられない動きで腕を繰り出す。

 そのドローンも倒される。

 だがすぐ次のドローンが緩慢で、鈍重で、無機質で――生命を感じさせない動きで次々と人類の脅威に向かっていった。

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