二十六、徒手空拳! キグルミオン! 2
それは意思の表れとは無縁のものだった。
だがその目に架けられたバイザー状の機器が、まるでその内心の不快感を表すかのように明滅する。
ドローン・キグルミオンはあっという間に小さく落ちていった二つの巨体を眼下に見ていた。
SSS8の軌道から大きく外れ、まるで地上に落ちていくように離れていったキグルミオンと宇宙怪獣。
その二体に取り残される形でドローンは孤独に宇宙に浮かぶ。
だがそのことでSSS8からのエキゾチック・ハドロンの供給を一身に受けることになった。
ドローンは一人宇宙で輝きを得て、次の攻撃に備えていた。
そのドローンが無言で右手を突き出した。
実際は背後に背負ったバックパック状の機械に、操られるままに右手を突き出す。
その手の先に見えたのは姿を重なり合わせながら上昇してくる二つ巨体。それは地上で見れば巨体であったろうが、今は遠くに小さく見える点でしかなかった。
時に全く重なり、時に着ぐるみの背後に宇宙怪獣の姿が見えた。
宇宙怪獣の姿がわずかにキグルミオンの背後から見えたその時――バイザーの光が何かを捉えたかのように大きく明滅する。
無言の上に無音だった。
そして何の警告らしきものを発しなかった。
ドローンの右手から目も眩むような閃光がほとばしる。
それは『エキゾチック・ハドロン』の『余剰クォーク』と反応したドローン・キグルミオンのグルーミオンが、本来の『グルーオン』と化し、『クォーク・グルーオン・プラズマ』となってほとばしった光だ。
プラズマの光は無秩序なじくざくの動きで繰り出されるが、全体としてはまっすぐその目標に向かって放たれた。
「――ッ!」
突如襲い来た光にヒトミが目を剥く。
キグルミオンの体をわずかに避けて放たれたプラズマの光。ヒトミの脇をかすめてその光は背後の宇宙怪獣に襲いかかる。
それでいてイナズマのようにほとばしるそれは、大きく左右に触れた際にヒトミの肩をかすめていった。
「危ないじゃない!」
ヒトミが腕の中のロボットアームをかばうように抱きしめながら吠える。
「人が居るのよ! スージー!」
ヒトミと宇宙飛行士を危険にさらしてまで放たれた光は、宇宙怪獣にはあっさりと避けられていた。
ヒトミの背後で宇宙怪獣は迫り来たプラズマの光をひらりとかわす。
やはりここが真空の宇宙であることを感じさせない動きだった。
宇宙怪獣はプラズマの妨害も意に介さない様子で、ひたすらヒトミの背後を追いかける。
そしてその距離は徐々に詰められようとしていた。
「追いつかれる……」
ヒトミが背後を振りからずにその気配だけを察したように呟く。
そしてはるか上を見上げると、
「こっちも……関係なって感じ……け
小さく見えるドローン・キグルミオンの腕の先から新たな閃光がほとばしっていた。
諸事情で短めです。