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天空和音! キグルミオン!  作者: 境康隆
二十五、国士無双! キグルミオン!
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二十五、国士無双! キグルミオン! 13

 赤い目がいらだたしげに細められる。爬虫類を思わせるその目は、感情表現だけは内に知性でもあるかのような動きを見せた。

 それでいて真空の宇宙で怪しく光る赤い目はそれが人間の知性の外にあるものを知らしめる。

 ある意味生命らしい赤い目が迎えたのは対照的な無機質な視線だ。

 巨大な着ぐるみが宇宙怪獣に向かっていた。着ぐるみが感情の見えないバイザーの視線を宇宙怪獣に向けている。

 実際はバイザーの光であるその視線は、内に秘めた本来の瞳を隠す。

 一度ヒビが入り補修された跡がバイザーにはあった。

 ヒトミと戦ったドローン・キグルミオンのスージーだ。

 身につけた機器が隠すのはその目だけではない。パワードスーツめいたものを着ぐるみは全身で背負っている。

 そして実際はそちらが着ぐるみの主導権を握っていた。

 ドローン・キグルミオンは中の人など居ず、スーツの動くままに手足と頭を動かす。

 宇宙怪獣に今まさに迫ったその時、スーツがまず動きそれに合わせて着ぐるみが手足を動かした。

 バックパックを兼ねたスーツの背中で推進剤が噴かれ、頭から宇宙怪獣に向かっていたドローンの体が宇宙怪獣の正面を向いた。

 その視線が気にさわるのか、宇宙怪獣は改めて正面を向き合ったドローンに牙を剥いた。

 そして同時に手にしていたSSS8のロボットアームを振り回す。

 アームの先で逃げ損ねた宇宙飛行士の体が揺れた。

 人質にとったつもりはないのだろう。単に部品の一部にしか思っていないのかもしれない。宇宙怪獣は羽の先に着いた爪で不器用にそのアームを振り回す。

 そしてそれが人質と考えていないのはドローンの方もだった。

 目の前で振り回される宇宙飛行士つきのロボットアーム。それが視界に入る位置に来ても、ドローンは速度を落とさなかった。

 二つの巨体がSSS8の上で向かってくるままに激突する。

 ドローンが両腕を前に――スーツに導かれるままに突き出し、宇宙怪獣がロボットアームを前に突き出してそれを迎えた。

 拳まで覆っていたドローンのスーツがロボットアームと激突し、先端に取り残されていた宇宙飛行士の体を揺らす。

 ドローンはそちらに見向きもせずそのまま指を開いた。やはりスーツにつながっていた指の一本一本が、外からの力で開きロボットアームを掴む。

 もとより飛ぶことに進化した翼を持つ翼竜には、その取っ組み合いは不利だったようだ。

 ロボットアーム越しに宇宙怪獣とドローンは押し合いを始めるが、すぐにそれは翼竜に不利な結果となる。

 ドローンが宇宙怪獣にロボットアームを押し込む。

 力の均衡が宇宙怪獣の眼前で保たれた。そしてそれでも揺れるアームの先では、力の均衡で揺れる振動に合わせて宇宙飛行士も揺れる。

 完全に気を失っているのか、力が出ないのか。宇宙飛行士の体はされるがままに揺れた。

 もみ合いの末、宇宙飛行士の体が翼竜とドローンの目の前にやってくる。

 だが二つの巨体はそんなことをお構い無しに力の限り互いを押しやった。

 そしてその力のぶつかり合いに更に宇宙飛行士の体が揺さぶられると、

「やめなさい!」

 別の着ぐるみの手がそのロボットアームの手を横から掴んだ。

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