二十四、捲土重来! キグルミオン! 16
「私にはもっとできたことが、あったんじゃないんですか?」
ヒトミが絞り出すように口を開く。
「ヒトミ……」
美佳がヒトミの顔を覗き込む。
ヒトミは口は開いたがまだうつむいたままだった。
美佳に背中を押される形で、自分では動かなかったユカリスキーもヒトミの顔を覗き込む。
わずかに顔の角度を変えユカリスキーがようやくヒトミの顔を自ら覗き込んだ。
ウサギのリンゴスキーはヒトミに抱きしめられるがままにやはりその顔を覗き込んでいる。
「あったかもな」
坂東はヒトミの横顔を見つめながら答えた。
その声は冷たくも取れる慰めの色のない、ただ事実だけを確認するかのような冷静な口調だった。
「隊長……宇宙怪獣は、襲撃の最初からSSS8の外壁を食い破っていました。我々にできたことはありません」
「そうよ、バンドー。ミズ・久遠の言う通りよ」
坂東とは対照的に久遠とサラは感情もあらわに反論する。久遠は真剣に眉間にシワを集め、サラは怒りを抑えるように目尻を軽く痙攣させて。それは坂東に向けた非難の表れだった。
「……」
坂東は二人に応えない。
ただヒトミの横顔をじっと見つめる。
ヒトミの目は垂れていた髪に隠れて誰からもよく見えない。
ウサギとコアラのぬいぐるみだけは、その頭の位置からのぞき込めているのかもしれない。
だが二体のヌイグルミオンはそれぞれヒトミの顔を見上げるだけだった。ただのぬいぐるみとしてその顔を見つめている。
それはそれでヌイグルミオンの自律の表れであるらしかった。
二体のぬいぐるみは寄り添いながらも踏み込み過ぎずの距離感でヒトミを見つめる。
だが人間達はそうはいかない。
「いくら理屈では分かっていても、本人は自分の責任と思ってしまう。そうだな、仲埜?」
坂東が続けて口を開いた。
やはり事実だけを確認するかのような口調だ。
「……」
ヒトミは応えない。
「隊長……」
久遠が少しばかり先よりは声の調子を落としながらも坂東をたしなめようとする。
「目の前で人に死なれた人間にしか、分からない気持ちだ……それは……それはだがお前がこれから、向かい続けないといけない問題でもある……」
だが坂東は久遠に構わずヒトミに問い続けた。
諸事情で短めです。