二十四、捲土重来! キグルミオン! 4
夜の面を向け始めた地球に向かって、SSS8のエアロックが解放された。
大陸の形が都市の光となって浮かび上がっていた。だが、所々不自然に丸く明かりがない箇所も見える。
宇宙怪獣撃退の為に核を打ち込まれた都市がぽっかりと暗い穴を見せていた。
それでも眼下の地球はきらびやかな夜の面を見せていた。
その地球に向けて一つの布の塊が静かに放たれた。
エアロックに居た宇宙服を着たクルーが厳かにその塊を押し出すと、それぞれの形で祈りに手を振る。
「願わくば、流星となって、彼の愛した両親の下に帰り着かんことを」
サラの最後の祈りの言葉を背に、その布で包まれた亡骸はゆっくりとSSS8を離れていく。
SSS8のクルーが最後をモニタで見守る中。また、地上の遺族が見上げる中。その遺体は宇宙にしばし漂い、そして惹かれるように地球に向かっていく。
眼下の明かりはヨーロッパ大陸とアフリカ大陸の形を浮かび上がらせていた。
その中でも一際目を引いたのは長靴の形をした半島だった。
彼が生まれたその半島に向かって、その遺骸は地球へと加速していく。
ゆっくりと、まっすぐと。志半ばで散った命が、地球へと還っていく。
SSS8のモニタ越しではすぐにその小さな塊を捉えることができなくなった。
そのことを確認すると幾人かのクルーが未練を断ち切るように首を振ってモニタから離れた。
地上から見上げる人々も、彼が大気圏で焼かれる瞬間は見ることができないかもしれない。
だが遺族である地上の人々は見上げた夜空から目を離さなかった。
しばらくして――
「大気圏……再突入予定時間です……」
SSS8の船内に静かにその事実だけが告げられた。
彼の遺体はやはり流星としては確認できないほど小さな炎を上げて地球に帰り、ただ遺族の止まらなない涙だけが流れた。
諸事情で短めです。