第12章 ~紅の台頭・見える繁栄、見えざる衰退⑥~
ある田舎町の商店街の通りを男性1人と女性3人が歩いていた。
最も、傍目には女性4人のお買い物に見えるのは男性の容姿が余りにも他三人に目劣りしないが為である。
そんな4人は片田舎の商店街を散策するには余りにも不釣り合いな服装と容姿をしていた。
しかし4人は慣れた足取りで商店街を歩いているし村民からは非常に好意的な扱いを受けていた。
切っ掛けは単純だった。
約3か月前、たまたまこの村を盗賊が襲ったのだ、その際多くの老人と村を守る為に応戦に出た年頃の若い男達は殺される事と成り、女、子供は囚われ、後は盗賊達の慰み者か、奴隷として人買いに売られるだけの筈だった。
そんな村に偶々4人は流れ着いた。
始め、盗賊達はその場に現れた絶世と言っていい美女達を当然の様に襲った。
女性達の悲鳴と同情の籠った視線を受けながら男達の嘲笑が響き渡った、今日の俺達は付いているとそしてお前達は付いていないと、しかし4人の女性のうち銀髪の女性が言葉を発した事で事態は変化する。
「申し訳ありませんが私達は貴方がた盗賊程度に後れをとるほど弱くは御座いません。
大人しく御投降くださいませんか?」
そう天使の様な微笑みを浮かべて問い掛けたのである、その言葉に盗賊達の一部が気の強い女の挑発を受けた。
と襲いかかった後の顛末は一瞬だった。
それこそ実に200人を超える大盗賊団だったにも拘らず物の1分程度でその盗賊団は全員捕えられたのだった。
更にこの盗賊団に掛けられた賞金5Hをこの4人は躊躇いも無くこの村の再建にと譲渡してきたのだった。
5Hと言えばこの世界においては小国家の4か月分の国家予算に匹敵するほどの大金だった、復興に使うとしても精々1Hあれば十分お釣りがくる事と成る。
男手が激減したがこれだけの大金があれば数年は安泰だったのである。
その事もあり4人は村の英雄となった。
勿論彼らのこの村での滞在用に彼らから齎された資金から新たに屋敷も建てられ今に至る。
最近では4人の美貌と力は近隣にまで噂になり、病気や怪我なども無償で治癒していることから更に有名になりつつ有った。
最も1人が男性と言う事実を村民以外未だに誰も信じていないと言う事態が続いているのは村民たちの間で最近の話のネタに為りつつあるのはまた別の話である。
そんな4人が今日はそろって買い物に来ているのは息抜きの為であった、4人の噂を聞いた近隣の有力者達が4人に求婚を求める様になって2月半、フロルドにとってはもっと睥睨するような状況を日々体験していた為大した負担は無い物の他の3人はそうはいか無かった。
まず、リンディスはナンパ師に囲まれて大泣きした程の生娘である、男性への免疫は皆無と言える、シャラもまた巫女姫と言う特殊な立場から異性に対する耐性はほとんど皆無でまた、実の弟に襲われたショックは早々抜けないだろう、最後のソラティカは異性への耐性はあるもののリン、シャラの二人が日々、憔悴して1日を終えフロルドは良く近隣の町村からの医療診断の要請や各国の情勢を調べに出かけたり憔悴した二人の代わりに炊事をしたりと朝から晩までそれこそ誰よりも働いている為、二人をあやすのと訪ねてくる男達への対応で1日を過ごす様になっていた為体力的に参っていたのである。
そんな3人の為にフロルドは基本的には週に2回、多い時には3回3人を息抜きに連れ出すようになっていて、今日は偶々買い物となった訳である。
当然、3人はフロルドに負担をかけているのには気づいていたがフロルドが3人の笑顔を幸せそうに見ているのに気づいてからは、あえて気にしない様にしていた、した所で誰も得に為らないからでもある、特にリンは一番フロルドと付き合いが長いだけに遠慮したのは最初だけで回を重ねる内に段々と積極的に甘える様になっていて釣られる様に後の二人も遠慮が無くなってきていた。
そんな4人を村人達はある者は微笑ましく、ある者は複雑な視線を向けながら見ていたが、そのある意味ほのぼのとした雰囲気は次の瞬間崩れ去った、村の入り口からもたらされた悲鳴のような大声によって。
「軍が軍隊がこの村に近づいてる!
皆早く家に隠れるんだ、殺気立った軍人は何しでかすか判ったもんじゃないよ!
特にあんた達は絶対に出て来るんじゃないよ!
いいね!」
そう言ってこの村の若者を束ねる立場にあったアリサと言う女性がフロルド達に逃げる様に促すがそれよりも早く偵察の為に先行していた兵に外に出ていた者たちは見つかってしまう。
魔法の使えない一般人にとって偵察騎たる魔道騎兵の機動力は蟻と馬ほどの差があったのだ、一度見つかってしまえば庶民に騎士階級への対応に否は無い、特に女性はこれから命がけで戦う男達への奉仕は当然だと、この世界の上流階級は考えている為逃げ出せばほぼ命は無かった。
同様にいくら高位の魔道師と言ってもフロルド達が辺鄙な村に滞在する事を何とも思っていない事から4人が特権階級にいる人間とは思っていない村人たちは4人が捕まれば自分たち以上に辛い目に遭うと考えたのだった。
しかし、斥候に見つかりごたごたしている居る間に総勢5000の騎士団が村に到着する、それと同時に騎士たちの値踏みが始まったがその陣頭に歩み出たのはフロルドであった。
その容姿は女性に見間違うほどである、当然騎士たちは色めき立つがその一切を無視してフロルドは警告を発した。
「申し訳なく思うが貴殿らに差し出すべき乙女はこの場に存在しない、速やかに御退席願う。
然もなくば力ずくで御退席願う事になるが如何か?」
その言葉に村人たちは一斉に諫めに入り、騎士たちは気の強い女だとより色めき立つ。
それらを代表してこの騎士団の団長らしき人物が口を開いた。
「気の強い女よ、だが!
女が騎士に逆らうな!
戦えもせず男に媚びる事しか出来ん庶民の女風情が!」
その一括は戦を知らぬ村娘達を震え上がらせるには十分な迫力があった、しかしそんな一括もフロルド達4人には全く効果がなかった、当然だろう、この場に居るのはエレメントマスターと桜剣舞の二人とその実力を知る2人であるのだから。
怯まない4人を訝しげに観察しながらも団長は4人に劣情を抱いて行くがそれは一瞬の事だった、気が付いた時にはすでに団長は恐怖に駆られ引き攣った蒼い顔をしていた、魔素が一面を覆ったからだ。
とても温かい魔素だった事実、団長の一括に震えていた者達は落ち着きを取り戻した程の。
しかし少しでも訓練を受け魔法に精通した者達にとってのその力は恐怖以外の何物でもなかった、ただ解放しただけで周囲を満たす程の魔力量を保有する魔道師、しかもその力を完全にコントロールする力量は只の田舎者では在り得なかった。
その事に気付いた騎士団員は今更になって何故真っ先に勧告をして来たのか気付いたのだった。
この場に居る叱責に耐えた4人は自分達より遥かに高ランクの実力者なのだと。
しかし、それでも相手は騎士団である自分達が戦闘のプロであり貴族であると言うプライドが有った。
その為に先程までの威勢は無い物の喰い下がる事を止めなかった。
「は、ふはは、は、そのような態度をとっても良いのか我らはグランベル候の騎士、高々村娘がどこぞの魔道師から習った魔法程度の力で抗った所で仮に今回我らが見逃した所で村人すべて謀反の罪で処刑だ、ならこの場で我らに身を委ねて生きた方がよほど賢い生き方だろう?」団長
しかしその台詞に帰ってきたのは無慈悲な宣告でしか無かった。
「阿呆やないの!
あたしらは、あんたら追い払って逃げてお終い、それにうち等には帝国と共和国両方に後ろ盾が居るんや(嘘やけど)国は戦争中でも個人の人脈は関係ないからね。
あんた等に追い懸けられてもこの娘等連れてさいならしたええだけ。
この娘等にとったら今よりずっと安全に暮らせる様になるからむしろエエかもしれへんな。」シャラ
「ちょ、ちょっとまって。
あんた達平民じゃなかったの?
第一この村の住人30人近くを一度に移住させるなんてそんな事可能なのか?」アリサ
そう皆を代表するように疑問を呈した言葉にソラは騎士達にとっては最後忠告ともいえる言葉をフロルド達3人に視線で確認を取った後返した。
「別に難しい事でも何でもないさ。
今のあたしでもそれ位できるから。
むしろ、この二人にとったらそれ位寝てても出来るんじゃない?
だてに異名を持ってる訳じゃ無いしね、そうでしょ?
ネム、フィード」
そう言いながらフロルド、リンにウインクなどして返すソラの態度から伺える余裕が何よりも雄弁に実力差を物語っているのだった。
皆さんお久しぶりです、12章6部の投稿です。
例によって又もや遅くなってしまいました。
すみません!
つまらない言い訳は飛ばして恒例の本文についてですが、久々にフロルド君視点に戻っています。
そしてついでにヒロイン達に囲まれての暗躍中ですが、厄介事引き込み体質はまだまだ健在、普通の人生送ってたら有り得ないであろう引き込み率です、まだ今回はマシなんでしょうが…。
と成っている今刊ですが5人の人生が今後どうなるのか適当に見守ってやってください。
ではまた。