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第2章 ~学園生活・崩れゆく日常~

「今日は先日からの連絡通り、学科ごとの実技試験だ。

 実施場所は何時も通りだから遅れるなよ。

 では、皆頑張る様に。」


担任のカイト・ビスコンティの簡潔だがやる気の感じられない口調とセリフと共に教室を移動し始める生徒たち。

エリシア、ハースもやる気なさ気なフロルドを引っ張って移動し始める。

三人は同じ学科に通うクラスメイトで三人一組のグループでもある(この学園では実技、専攻課程以外の授業は人数分け以外の意味はない、つまり、普通科、商業科、工業科等といった科でのクラス分けにはなっておらず、大学の授業に似ていると言う事だ。)。


「お前な~試験ぐらいやる気出せよ。

 留年するぞ!」


と言うハースのセリフに、


「どうでもイイだろ?」


と心底そんな事は知りませんと言いたげに返したフロルドに対してエリシアは、


「絶対ダメ~!

 三人一緒に進級するの!」


と泣きそうな顔で必死に訴えかけて来たが、フロルドはまるで気にした素振りも見せず素知らぬ顔で沈黙を返した。





そうしている間に試験会場に到着し、各クラス身長順に整列し待機してから暫くして試験官の説明が始まった。

説明は簡単な諸注意と試験場についてなど極有り触れた、何度も聞いて慣れてしまった内容だった。


「では、これより武芸科、士官科、情報処理科、魔法科に別れ、それぞれ試験を始める。

 それぞれの科の担当官の元で細かな説明は受ける様に!

 では解散!」


『魔法科』このセリフからも分かる様に、『リストア』と呼ばれるこの世界には魔法が存在する。

試験官の解散の号令と共に


「ハァ~イ。

 魔法科の~みんなは~Dブロックに~つ~いってき~ってね~。」


と聞いているだけで眠気を誘う声音でフロルド達の担当官であるメイリン・イシュメアの声がした。

それに従い三人は移動を開始していた。

実際は、メイリンに案内されるまでも無く試験会場は指定済みなので着いて行く必要はないが・・・。

会場に着くとそのノンビリとした話し方に似合わずメイリンは早速試験内容を説明し始めるが。


「じゃあ~今回は~グループ毎の~チーム戦の~トーナメントで~1っ番~最後まで~残った~チームに~100点満点~あっげま~す!」


といかにも適当な試験内容を開口一番宣言する。

この試験内容は言うまでも無いがとにかくグループの総合力の高いチームに有利で、仮に足を引っ張る人間がいても一人程度なら切り捨てればまず負けない。

総合力が団子状態ならこの限りではないのだが。

しかし、そんな甘い幻想は試験内容を指定した当人により打ち消される。


「タダ~。

 グループで~1っ番~弱い人が~リーダーで~、当然~リーダーの~戦闘不能は~チームの~敗北です~!」



とその瞬間ハース、エリシアは絶句し他のチームはフロルドを見た。

理由はフロルドが学年トップ2の成績を誇るハース、エリシアに対して、実に学年最下位(全科共通で)と言う実に不名誉な成績を誇っていたからだ。

そんな彼が進級できていたのは、ハース達の日々のサポートのお陰だったのは言うまでも無い。



そんな中、メイリンは試験とは全く関係ないが実にとんでも無い爆弾を自身の生徒たちに投下した。


「甘く見てると~痛い痛~い、言っちゃうからね~。

 もうすぐ~戦争が~始まっちゃうからね~!」


と極上の笑顔で実に爽やかに告げて見せた。




この台詞にはメイリンの台詞が聞こえていた、全ての生徒が絶句した。

二人の例外を除いて、もちろんその例外も表面上は驚いて見せていたが。




しばしの沈黙の後、一人の生徒が笑いだす。


「面白れージャンか。

 やっと実戦に、実物の手加減ナシの魔法を使えるんだろー?」


それに一気に学生達の士気が上がる、無理もない、彼らは血気盛んな十代後半、まして世間一般に見れば魔法科の生徒はエリートに当たり社会的地位がある程度すでに確約されている。

その為、自分達は特別だと生れ付いての強者なのだと錯覚したとしても責められない、実際魔法科の生徒は他の科の生徒からは畏怖と尊敬と嫉妬を持った視線を向けられているのだから。

フロルド、ハースを始めとした一部の者達は冷めた目で視ていた訳だが・・・。

その様子に知ってか知らずかメイリンが。


「ハ~イハイ~そろそろ~試験~始めるよ~。

 1番と~最後の~25番の~チ-ムは~直ぐに~準備してね~。

 二試合目は~2番と24番のチームね~。

 後は~判ると~思うから~自分達で~準備してね~。」


と告げて試験官としての採点の準備に取り掛かった。

フロルド達は12番トーナメント形式の今回の実技試験まではまだまだ時間があった。

その為、三人はドームになっている会場の二回観客席に移動した、勿論、只、目的も無く移動したのでは無い。

自分達の対戦相手に如何にして相対するかの作戦を練る為の移動で、到着早々三人は作戦を練り始めた。

しかし現実は三人と言いながらもフロルドは必死な二人を完全に無視して聞いてもいなかったので、エリシア、ハースの二人での作戦会議と言う事になっているのは、当人たちにもありありと感じられていた。


「どうしよう。

 私たちの相手、ソラ達だよ?」


そう不安げに意見を述べたのはエリシアで、その意見は当然の意見だった。

ソラと呼ばれた少女は、ハースに続く学年三位の実力者で個別に成績を観ればエリシア達を上回る成績を誇る学科も少なくない。

さらに、彼女のチームメイトは現在の魔法科同学年75人中、4位と10位と言う成績優秀者で、構成された実質今回の試験において優勝候補No.1のチームだった。


「フロルドには今回は逃げ回って貰うしか無いと思う。

 勿論、使って貰う魔法は防御魔法のみに集中してもらって俺たちが敵を引き着ける。

 かなり分は悪いけどな。」


躊躇わずにそう意見を述べたハースに対して、エリシアはかなり嫌そうな顔で眉を潜めたが反面、それが最も効果的な対処法だとは理解していた。

話に全く加わる気の無かったフロルドを除けば、であるが。




一方話を無視していたフロルドは自身の対応に思案していた。

その最中に突然、


≪さぁ~フロルド君~貴方の~本当の~実力を~教えてね~。≫


そう頭に直接語り掛けてきた声で思考を停止する。

念話(魔法による通信)だ。

通信相手は担当官のメイリンだ、その問い掛けにフロルドは、


≪何の事だ?≫


そう問い返した。

心底何の事なのか解らないと言ったフロルドの返答にも変わらぬ口調でメイリンは、


≪勿論~フロルド君の~魔法力だよ~!

 他の子達は~全っ然~気付いて~無い~みたいだけど~。

 時々~もっのスッゴ~イ魔力を~放ってるでしょ~。≫


≪気の所為だろう?

 オレは全科の中で最強であるはずの魔法科に居る事事態が不自然な問題児だぞ?≫


そうフロルドはメイリンに言葉を返した。

しかしフロルドの台詞とは裏腹にメイリンの指摘は当たっていた。

と同時に間違ってもいたが、二人の遣り取りを現実が終わらせる。


終わらせたのはエリシアの一言。


「次、私達だよ!

 フロルド君は兎に角逃げ続けてね!

 私達が守るから。」


この試験の始まりの到来を示唆する一言だった。

そのセリフにフロルドを視ながらハースが頷いていた。

そんな二人を観察ながらもフロルドは無言だった。




一方ソラは三人が降りて来るのを1階で待っていた。

ソラは同年代の女子たちの間では唯一自分より成績の優れたエリシアをライバル視していた。

しかしエリシアにはまるでその気が無い様でエリシアが気にして要るのは何故か落ち零れの代表とも言えるフロルドだけだった。

何故落ち零れのフロルドに好意を抱いているのか気には為るが反面自覚は無い物の自分も又フロルドに興味を抱いて要る事は疑い様が無かった。

その事は今回の試験がソラにとって圧倒的に有利なこの状況では尚更意識しがたい事だがソラはその感情をエリシアの一番大切に思っている相手を自身の力で蹂躙できる為だと歓喜にも似た誤解をしていた。

その為エリシア達三人が試験場に降りて来たのを見て、


「遅いわよ!

 逃げたかと思った。」


そう嬉々として告げていた。

対してエリシアは、


「逃げたら落第じゃ無い!」


そう強がって返していた。

そんな強がりを知ってか知らずか間を置かずに無情にもメイリンの試験開始の合図が降った。




合図と同時にお互いDクラスの魔法を詠唱破棄で撃ち合っていた。

それが今回の模擬戦最注目カードの開始だった。


「フレイム」エリシア


「ウォータ」ソラ


「エアー」ハース


「ライトニング」ジン(ソラチーム、学年4位)


「ダーク」ノバァ(ソラチーム、学年10位)


「・・・」フロルド


ただ一人、フロルドだけが沈黙を守った事を除けばである。




そのままノバァのダークがフロルドに直撃し粉塵が周囲の視界を奪う。

その光景に誰もがフロルドが試験を放棄したのだと思い試験の終了を確信し期待を裏切られた形の他生徒ギャラリーから失望と同情の混ざった声が漏れ聞こえてきた。




暫くして粉塵が治まる事になるその瞬間までは。

そこには人が居たフロルドでは無い胸元に虹色の十字架を掲げた人物が。




「カイル、首尾は?」


カイルと呼ばれた人物は肩膝を付きながらフロルドの質問に答える。


「現在、カトレア、クロス両国に対して総帥陛下の御指示通り休戦及び介入勧告を実施し、その解答待ちの状態です。」


そう告げた虹十字の人物は虹の派閥と呼ばれる魔法師組織のメンバーであった。




「・・・・・・」




その光景に静寂が流れる。

フロルドは黙考し、周囲は混乱から沈黙しているからだが当然でもあった。



暫くの後フロルドが口を開く。


「そう、たぶん無駄だろうがな・・・。」


「何故です?

 派閥の意向を無視すると?

 四皇様の意向ですよ!」カイル


静寂の中二人は続ける。


「両国の兵力は虹の100万倍だ。

 とても抑えきれんよ。

 それに四皇の意向と言っても実際に派閥に顔が知られて居るのは運命の律司者のみ・・・。」フロルド


「それは・・・。」カイル


「・・・更に総帥は暗殺が有るからと言う理由から実際にその顔を拝見した事の有るのは総帥を除く他3名の四皇だけだからな。」フロルド


内心苦笑しながらそこまで告げると初めて二人以外の声が震えながらも割って入る。


「何・・・の・・・話?」


混乱を隠し切れてい無い声では有ったがエリシアはフロルドに問い掛けた。

話の内容では無くフロルドが何故、虹の派閥の人間と話しているのかが聞きたかったのだが今の混乱し切った頭ではそんな質問をするのが精一杯でそれ以上は聞け無かった。

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