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第12章 ~紅の台頭・見える繁栄、見えざる衰退③~

~カルタロッサ~


そこから広がる街の活気はとても三か月前まで森の中に広がる多少大きな町と言う印象を感じさせていた田舎町の現在の姿だとは思えない物だった。

中でも今まであまり見られなかった人間族の姿が目立つのが印象に残ると言える、逆に言えば他の街では滅多に見られない亜人と人と言う種族の混在した現在の状況はかなりと言うよりも現在のカルタロッサ以外では見られない特異な光景とも言えるかも知れない。

そんな街の一角に聳える非常に大きな建物『櫻緑おうりょくの月』と名ずけられた宿には現在本当に多くの宿泊客が集まっていた。

集まる人ごみの大半は家族連れだった。

正確にいえば親戚ごと(・・・・)連れだって訪れた者が大半だった。

常識で言えばその様な事は結婚式でもない限り殆ど有り得ないだろう、しかし、現実にそれが起こっていた。

そこを訪れていたのは、嘗てのフロルドの部下たちだった、彼ら、彼女らは嘗ての上官の身内の非常識さを身に滲みて知っていた、その為カルタロッサで起こった急激な発展に彼の身内の影を見てとったのである、事実、街に偵察に来た彼らの一部はフィルやガゼルの姿を確認すると急ぎ国に帰り仲間と一族を連れ避難してきたのである。

ただし、彼らは只カルタロッサを目指したのではなく各地を転々として帝国の尾行を巻いて来ていた。

そんな彼らも実はフィルの指示で付けられた密偵の存在には気付か無かったのは蒼のメンバーのみ知る事実である。

そして彼らは現在そのフィル、ガゼル、ナタル、エリシア、リリーの5人と第五会議室と名付けられた10人程度の少数での会議に使う小会議室で個別に対談していた。



~第五会議室~


「思った以上に人が集まったね。」


暫しの休憩中にそう感想を述べたナタルにガゼルが答える。


「兄貴の元直属の部下13人の内13人全員が一族連れて来たからな。

 正直工房の完成と同時に別館の制作に(建築士の)半数の当てたのは正解だったと今では思うぜ。

 当初は多過ぎね~かと思ったけどな。」


「そんな事、ちょっと考えれば判る!

 相変わらずの脳筋ご苦労様!

 消えろこの役たたず!」フィル


ガゼルに向ける冷ややかな視線に続く暴言に苦笑しながらエリシアが続ける。


「しかし寝床と言う物が戦において重要なのも確かです。

 それと同時に各要所に建築中の砦の確保も・・・。

 そちらの方はどうなのですか?

 私にはそのあたりは完全に専門外なのでどうしようも無いのですが。」


「そっちは、大丈夫かな。

 今の所必要な砦は8割方完成したよ。

 勿論、存在がバレない様に帝国にも、共和国にもない精霊術(精霊召喚魔法)の幻覚で隠してあるから当面は凌げるはずだし。」


そう質問にフィルが答えた。



精霊術・・・

亜人族のみ使える魔法、正確には自然との共生をして行く内に人種にも使用できる様に成るが体得までに才能にもよるが10年単位の期間が掛かる。

亜人族は種族柄生まれ付き使える者が多い、筆頭のエルフ族は、ほぼ全員が使え、稀に生まれ付きで修練を積まなくても神霊術と呼ばれる上位魔法の使い手が生まれる事がある(修練を積めばほぼ全員このクラスになれる)。




その回答にエリシアは首肯うなずき返しながら、今だカルタロッサに姿を見せないフロルド達に意識を向けた。

定期的にリンディスからの定期連絡は届いているが実質問題として、此方からフロルド達に連絡が取れない上に、天宮の機能を使っても居場所を特定出来ない程に徹底した潜伏状態にフロルド達は移っていた。

それでも、蒼の誰一人としてフロルド達の事を心配しないあたり彼らにとってはこの程度の事は別段珍しい事では無いのだろうと推測できる為、会えない事を除けばエリシアには不満は無かった。

そんな事を考えている内に休憩時間が終わったのか会議室の扉がノックされた。

ノックに答え入室を許可すると蒼に所属する10歳の少年カインが手に何かを持って入室してきた、そのまま、カインはガゼルにその何かを手渡しながら口を開いく。


「今、宿の前にコレを持ってきた大男が居座ってる、正直物が物だから(蒼の)全員どう対処していいか判んなくて仕事が停滞してて、んと、取り敢えずガゼとフィーに相談しにきたんだけど・・・。

 識乃姉シノねぇから多分その大男は、ケイオス・クーカイだろうって、その事は確実に伝える様にって言われた。

 ガゼ、フィー、誰だかわかる?

 ううんいいや、その顔で判ったから、じゃあ伝えたからボク、仕事に戻る。

 じゃね。」




ガゼ、フィー・・・

ガゼルとフィルの事。

蒼のメンバーの半数は二人の事をこの愛称で呼ぶ。


識乃・・・

蒼の二期生に当たる古参メンバー。

フルネームは遠坂トオサカ識乃シノ

三期生までのメンバーは既に殆んど蒼の翼からは独り立ちしており、実質の院長と副院長に当たるフロルド、リンディス(二人は孤児院の設立者に当たる為生徒ではない)以外では最も永く二人と共にいるメンバーであり、リンディスとは親友同士の間柄である。

性格は寡黙で冷静、表情の変化に乏しい所があるがなれるとその僅かな表情の機微が判るようになる。

おっとりとした性格でありながら一方で激情家の一面のあるリンディスのフォロー(事態が収集できるギリギリまで黙認することが多いが)を良くこなしていて家事と情報管理を得意としているM・R、SSSSS、S・R、D、R・A、Sランク相当(魔導師試験を受けていない為未認定)の女性である。

因みに、運動音痴では無く、此処まで能力が偏っている人間はかなり珍しい。

蒼のメンバーからの評価は我が家の裏ボスである。




そんなメンバー(二人にとっては姉)からの進言に表情を固くしながらも口を開いたのはリリーだった。


「憂慮すべき事態ではあるけれど、このまま此処で只ジットしている訳にもいかないわ。

 危険かも知れないけれど此処は鬼人・ケイオスに会ってみるべきだと思うのだけど、勿論、もしもの時に備えて今いる戦力で行える最大限の警戒は取るべきだと思うのだけれど、ね。

 どうかしら?」


提案に賛同したのは、ナタル、フィル、ガゼルの三人、対して反対したのは以外にもエリシアだった。


「会うことには同意しますが、必要以上に警戒して顔を合わせるのは不味いと思います。

 天宮で偶然目にしたのですが、傭兵、ケイオス様は気に入った相手の仕事しか請けないそうです。

 此処で必要以上に警戒して見せる事は余り良策とは呼べないと思います。」


そう提案したエリシアに黙考を返す四人その様子を伺いながらも更にエリシアは提案を行う。


「ですが、余りにも無警戒ともいきませんので此処はあえて会談には私一人で望みたいのです!

 勿論、私の事情(|帝国の第4皇女《エリシエール・A・S・マークライト》である事)は隠して、・・・となりますが、この方法ならば、もしもの時の被害も私一人で済みますし、何よりこれは単なる直感なのですが、ここで私が直接ケイオス様に一人でお会いすることに意味が有る様に感じるのです。

 歴戦の勇士たる皆様方に対するには多大な不満を懐かせてしまう物言いなのは判っておりますが・・・。」


追加でもたらされたエリシアの提案に賛同を示したのはナタルとフィルだった。

対してリリーとガゼルは口にこそしなかったが渋い顔を隠さずにしかし沈黙を返すに留めた。

それを見たフィルがリリー、エリシアの提案から第三の案を提案した。


「リリーさんの懸念もエルお姉ちゃんの考えも判るからこうしよう?

 会談にはエルおねえちゃん一人で行くけど、代わりにエルおねえちゃんには強力な魔道具を隠し持っていてもらう。

 持ってもらうって言っても攻撃力は皆無だけど守備力だけなら禁術でさえ物ともしない防御特化魔法、"聖なる神秘"を封じてある堅盾ケンジュンの指輪、これを会談中は常に身に付けてもらう。

 これなら発動すれば目立つし身の安全も確保できるから。

 どう、かなリリーさん?」


その提案をガゼルに対しては返答は求めず、リリーだけに向けられていたが、特にガゼルは気にせずというより諦めている為口を噤みリリーはこの提案は十分許容できる提案であるため了承の意味を込めて頷き返した。

12章③話の投稿です。

気が付けばこの小説を『小説家になろう』に投稿し始めて1年の月日が流れました。

正直忙しいのによく投稿を止めなかったと思っています。

そして何より嬉しかったのは約1年と長期にわたり評価の投稿がなかったこの作品に先日始めて評価を貰えた事です。

PVも約4000と人気作家さんの様には参りませんが徐々にでも伸びてきているのも確かで嬉しく思います。

拙い私の作品にこうして触れて下さる方々に心からの感謝を評します。

ありがとうございます。


さて恒例になりつつ有る作品にについてですが、久々に『鬼』の人が出てきましたね。

更には新しい重要人物もまだ名前だけですが登場し段々と本格的に戦時モードに以降中です。

このまま戦争突入するのか冷戦に入るのかは今後に期待してください。

では二周年目のサファイアを今後ともよろしくお願い致します。


See you again!

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