第11章 ~時を刻む者・今は昔、昔は今②~
大変遅くなりました、おまけに量も少なく、まだこの章は続くと言うダメっぷりです。
言い訳は後ほど、ではでは。
密偵との最後の食事の後、バンは再び密偵に質問を再開する。
因みに食事への誘いに渋っていたブラディー・クリムゾンだが実は三人の中では一番多く食事を摂っていたりする。
「ほなら、フロルドと皇帝の話の内容が一変した所からもう一篇話してんか?」バン
そう言うと密偵は頷きながら口を開く。
「解りました。
フロルドは皇帝をからかい半分に挑発していたと思われるのですが、偶々その内容がエリシエールの登場で実現可能に成ってしまった物と思われます。
その事は皇帝と共にいたジジイのタイミングが悪いとでも言いたげな表情と皇帝の卑下た表情から推測できます。」密偵
其処で小声でバンが呟く。
「成る程のう、そのジイさんは常識人みたいやし、エリシエールを孫見とるみたいに思とったんやろうの。」バン
『これは、ほぼ間違いなくそのジイさんはガイアのジイさんと見て間違いないやろう!』
そうその人物が誰かを心中で正確に推論しつつ密偵の話に再び意識を集中する。
バンの呟きを聴きつつ密偵は話を続けていく。
「その後、数十秒皇帝の命令の内容を聞いていた三名ですが、途中でエリシエールが舌を噛んだ模様です。
倒れたエリシエールはジジイに抱き留められ、ジジイの治療を受けておりましたが余り治癒系が得意で無いのか上手くいっていなかった様です。
その光景を皇帝は呆然と見ており、直後にフロルドが牢を切り裂き治療を実行しますが、その折り、フロルドの様子にジジイと皇帝がフロルドが魔眼の持ち主だと、確か<サファイア>と言っていたと記憶しております。」
それに僅かにブラディー・クリムゾンが口角を歪めていたが二人の死角に居た為に、二人は気付く事は無かった、一方でバンは、サファイアと呼ばれた魔眼の事を考える。
『サファイア、確か瞳の色により性能の違う特殊な魔眼、性能は未知数で詳しい事は一切不明ときとる、何で彼奴はこうも厄介事を一人で持って来んねん!
魔眼なんざ使用せんでも十分、厄介や言うのに、とんだ疫病神やな、ホンマ!』
魔眼・・・・・・
魔眼とは瞳に特殊な紋章・・・五芒星や六芒星を始めとした魔方陣と呼ばれる紋章が刻まれていたり、瞳孔の形が蜥蜴の様で有ったり、多角形であったりと異形の物を指す。
その性能は様々で有名な物は石化眼、邪眼、幻視(精霊)眼等がある。
何れも使用には魔力を消費するが発現が容易で有り使用魔力も単純に同効果の魔法を使用するよりも軽微で抵抗が難しいく、術師の能力使用時の暴発の危険性が少ないと言った利点が有る。
反面、精神面の未熟な者が使用すると被術者が一生術より解放されないと言う欠点も有るが訓練すれば解ける様にも成る為、一般的には、重宝がられる傾向がある。
オッドアイ・・・・・・
オッドアイは魔眼には該当しない、瞳の色とは属性を示す為オッドアイで有ると言う事は生来の強力な多重属性所持者で有る事を示す為、魔導師の間では歓迎される傾向にある。
オッドアイの所有者の間には稀に逆属性の能力所持者も居る。
属性・・・・・・
属性はその個体の固有性質で有り、その性質は瞳の色や髪の色に現れ易く、比較的判断しやすい。
しかし、属性が見た目に現れない者も当然居り、一概には言えない。
属性には様々な物が有るがその個体の有する属性が一番その個体と相性がよく反面、逆属性の相性は悪い傾向にある。
そうは言っても後天的に属性が変質したり、全属性の適合者が居るなど相性に関しても一概には言えない傾向にある。
サファイア・・・・・・
魔眼の一種、魔眼の中で唯一呪われた物とされる魔眼。
その色により性能が異なるとされるが、その性能は謎が多く、また、種類、判別方法等も不明である。
所有者自体も非常に少なく、所有者自体が気付いていない可能性も高い変わった魔眼である。
そう考えながらもバンは密偵の報告を聞く。
「フロルドは二、三、エリシエールとの会話の後、ゲートの発動によりその身を消しています。
その後はフロルドの逃亡を間接的にとは言え手助けした形になるエリシエールに対して、皇帝とジジイによる詰問が行われていましたが、その返答に激昂したのか皇帝がエリシエールを反逆罪での拘束を命令。
それに対してエリシエールはフロルド同様ゲートによる逃亡を決行、その後の行方は一切不明です。
以上が今回の事象に対する此方で伺える事の顛末です。」
そこでバンは密偵に労いの言葉を掛け、退室を促すと背を向けた密偵の首を音も無く刈り落として全てを消し去った。
~トルカナ湖(過去)~
幼きフロルドの実兄に対する悲痛な訴えを無視してレイの神法による猛攻は納まろうとはしなかった。
繰り出される神法は術の発現こそ起こってはいないがそのどれもが天才と呼ばれる神属の者でさえ詠唱破棄出来ない様な高位の物ばかりで構成された全くと言って良いほどに空きの無い洗練された攻撃だった。
その攻めを防ぐフロルドも又同様の洗練された動きを繰り返し繰り返し行っていた。
直ぐ近くで戦うゲンブシン達、それに従う忌刈り部隊に周囲を包囲されながらも互いに舞う事を止めようとはしない二人の子供。
よく見れば二人は互いに相手の使う奇跡の法を確認する事無く同時に逆属性・逆位相の術を当てて打ち消している事に気付いたで有ろうが最初の衝突以降互いに術をぶつけ合っている様には周りには見えていない、発動前に消え去る力に気付けないでいるのだ。
位相・・・・・・
術に込められた力の波動。
逆位相とはある力の波動を基準とした時に逆方向の同等の強さの波動の事。
音波等と同じイメージ。
しかし、そんな死闘も長くは続く事を許さなかった、打ち消す力の膨大さに当人達では無く周囲が持たなくなり始めたのである。
空間崩壊の始まりであった。
空間崩壊・・・
空間崩壊は数種類の分類が存在するが、今回の事象は二人の魔力が行き場を無くした事が原因の魔力の暴走、最もポピュラーな空間崩壊であり被害範囲の広さが特徴でもあった。
そんな状況に到ってもレイは手を止めなかった、それどころかこの状況で同時に行っていた接近戦闘の比率を更に増やして来たのである。
素手の二人は蹴撃を中心として攻め立てる、しかしその一撃一撃が地を裂き、岩を砕き、大木を圧し折る。
とてもでは無いが周囲の人間には手に終える争いでは無かった。
その死闘の近傍で対峙したまま様子を伺うゲンブシンとアサヒは・・・、と言うと互いに高位神法を唱えた状態で互いに威嚇と牽制を仕掛けては止め仕掛けては止めを繰り返しながら常軌を逸した双子の戦いを観ていた。
双方共に術法の最高位の術師がその生涯をかけて体得する境地の技法を時間と呼ばれる概念を一切無視して連続使用しているのである。
それがどれほど危険でまた得難い才能の両翼であるのか、でなければ認められざる災厄の権化であるのか少なくともアサヒにはレイは後者にフロルドは前者として映り、ゲンブシンには双方とも後者として映った。
双方の眼に映ったそれぞれの在り方の委細の結果、動いたのはゲンブシンだった、ゲンブシンはフロルド達を囲む神兵達を兵器として精神を操り、二人に特攻させたのだ。
その意図に気ずいたアサヒもまた動く、突貫して行く兵達に上位神法の雨を降らせる、降りかかる神法により神兵たちの8割が絶命する事と為った。
しかし、その行為により生じた隙を見逃す程ゲンブシンとレイは甘くなかった、結果から言えばアサヒに向かった二つの魔法の内一つはフロルドによって防がれ、もう一つはアサヒの上半身を消し飛ばした、防がれたのはレイの放った雷属性、SSSSSクラスの神の裁きの神法、対して打ち消したのはフロルドの放った水と風の混成属性のSSSSSクラス魔法、氷河期、それに対してアサヒの体を消し飛ばしたのはゲンブシンの放った闇属性のBクラスの神法、深淵刃、威力も範囲もその他全てにおいて余りにも平凡な術がアサヒの命を奪った。
混成属性・・・
ふたつ以上の属性を組み合わせる事で初めて発現する派生属性、代表的なものでは風と水の氷、土と火の溶岩、光と各属性の聖、闇と各属性の邪等がある。
混成属性は性質上例え逆属性であっても属性として発現ができる(水と火による蒸気、雷と土による磁化等)が、光と闇のみ混成化出来ない。
また同属性同士での混成も可能であるが効果によっては単純に単属性の上位魔法として扱われる為、同属性の混成は殆んど行われない。
それまでの死闘がどんな意味を持つのか全く解っていなかった幼きシャラだが実母の半身が消し飛ぶと言う今の事態になって初めて周囲の状況に関心を示す。
半身と成った母にイツキを抱えたまま覚束無い足取りで歩んでいく。
そのまま母親だった下半身のみの肉の塊に服が汚れるのも気付かずすがり付きその肉塊の名前を呼ぶ、
「母様(かぁ様)、母様。」
そのままシャラはゲンブシンがシャラからこの時の記憶を消すまで叫び続けた。
そしてまた、フロルドとレイは互いの放った膨大な力の余波で弾き飛ばされその場から強制撤退してしまい行方不明となっていた。
~天宮・トルカナ湖(過去)近傍~
アルフの背に揺られる二人と天宮の三人はフロルドの元に向かいながらアルフにより二人の業が語られていた。
「先に言っておくが質問はすべての事柄を話終えてからにしてもらう、時間が無いのでな、大人しく聞くのだぞ。
・・・乙女たち二人は本来ならば双子として生を受ける筈の存在だった。
しかし乙女たちは近しい家に他人の子供として生まれる事と為った、その結果二人の守護者たる我は二つで一つである乙女らの魔力を見つける事が叶わぬままと為った。
そんな折りに出会ったのがフロルドだ。
奴は身寄りを亡くした直後だと言うのに我の目的たる乙女らの捜索に手を貸してくれたのだ。
まぁ、それ以外にも奴とは色々と関わりが有るがな。
今は良い。
そうして乙女らの捜索を行う中、我らは、死の危機に瀕したリンディスを見つけ保護したのだ。
その際、我は奴とは別々に詮索を行っていた故、あの場には居らなんだがな。
そうは言った所で奴はそんな物関係なくともリンディスを助けたで有ろうし、仮にあの場に居たのが赤の他人であろうと助けたであろうな。
話を戻そう、リンディスの保護後、ソラティカの存在は直ぐに確認できたのだが乙女らの今生の関係が関係だけに今まで黙っていたのだ。
その上で別段用が無ければ普段、我はソラティカの護衛に付き、リンディスに護衛が必要でかつフロルドが動けぬ時はリンディスの護衛に付いていた。
最近はどちらの護衛にも付いてはいなかったがな。」アルフリル
そう言って僅かに口元に笑みを浮かべる一匹の魔狼。
しかしその笑みは誰にも気付かれる事は無かった。
「では此処からが本題であるが、我は、古の頃、ある双子に仕えていた守護獣だ、その双子と言うのがつまり、乙女ら二人の前世であり、乙女らの背負うべき業でもある。
・・・・・・・業を背負いし本来の乙女らの真の名は、ソラティカが豊穣と栄達を司りし者、リンディスが転生と誕生を司りし者、であり、その見た目から別名、イシスは金の女神とネフティスは銀の女神と呼ばれていた・・・・・・古の双子の女神の神名だ。
汝らが互いに深く意識せずとも、通じ合えたのはそれ故だ。
フロルドは重過ぎるこの事実を可能なら伏せ続けるつもりだった様だが運命と言う現実は今の乙女らの関係からその甘い考えは決して許さないと判断したらしいな。
・・・どうやら話は此処までの様だ、乙女らの運命を握る者の元に着いたぞ!
まだ、この話には続きがある、質問もあるだろうが、全てはこちらの件が片付いてからだ!」アルフ
前書きの通り言い訳をば一つ!
会社の旅行、突然の出張、親戚の○報、etc.etc.かぶりまくりました。
今年厄年何ですが、見事に享受しております、今日この頃です。
おまけに今週あたりから更に忙しくなるので更に更新ペース遅くなりそうです。
では作品について少し、フロルド君の過去の戦闘シーンです、この頃から完全に化け物街道まっしぐら、チート過ぎですね。
<注:心の声>書いてて楽しいから良いけども。
また、リン、ソラ、コンビの関係の一端が明らかになっています。
因みにイシスは本来、良き妻、良き母、すなわち女性の典型とみなされ、また豊饒の女神だそうです。
ネフティスは死者を再生へと導く死者の守護神だそうです
二柱共にエジプトの神で姉妹になります。
てな感じで今回の後書きはこれで、次回も更新遅そうですがまたお会いしましょう。