嫉妬
月曜日、学校ではハナが謎のイケメンと暮らしている事が噂になっていた。
「あの子だよ!」
「カイル君とも幼なじみじゃなかった?」
「イケメンってどんな人かなあ?」
あーやだやだ。何話してるか分かっちゃうよ。
ハナは妖精と仲がいい。妖精は良かれと思って、ハナの噂を教えてくれる。
妖精はすごく速いので、姿がなかなか見れないと思われがちだが、好かれている者には簡単に姿を現す。
「カイルのファンがハナを問いただすって」
「ハナのこと二股だって」
妖精がハナにコソコソ教える。
「うわぁ。教えてくれてありがとうね〜…」
お礼をしながら精神力も鍛えられるハナである。
「おはよーハナ!私許嫁の事話してないのに、なんで皆んな知ってるの?」
リリーがハナに詰め寄る。
「リリーのせいじゃないよ。」
おそらくカイルの友達が話したのだろう。
「カイル君達がお花見?いーなあ、私も一緒に行きたかった!」
リリーは目をキラキラしている。
「いや、私行ってないから」
今日は周りが騒がしい。でもハナはそれどころではなかった。
ルイが私にあんな事を…
考えるだけで体が熱くなる。
「はぁ」
ため息も出る。
「今日元気ないね?大丈夫?」
リリーも心配そうだ。
「うん、昨日よく寝られなかったから…」
気をつけないと、女の嫉妬は怖いのだ。カイルのファンに何かされないように警戒しなくては。
でも、いつもなら避けられる事も、今日のハナはできなかった。まさか授業の合間に連れ出されるとは…
「次は移動か…」
「ハナ!私トイレ行ってから行くから、先行くね!」
「わかった!」
リリーが教室を出て行く。入れ違いに別の扉から他クラスの女子が入ってくる。
教科書をゴソゴソしている間に、周りを女子に囲まれた。クラスにはほとんど人はいない。いてもハナは見えないだろう。
「ちょっと一緒に来てくれる?」
リーダーらしい女子が口を開いた。
1人がハナの手を取ると、移動魔法の呪文を唱える。周りに風が巻き起こる。
そこは学校外だった。河原だ。
移動魔法は、他の人を一緒に連れて行く事もできる。
「ここは?」
「あんた、カイル君のなんなの?」
ハナの問いは無視された。よってたかってリンチでもする気だろうか?
「カイル君があんたの家に行ったとか聞いたんだけど、どういうこと?」
「答えなよ!」
「カイルは幼なじみなだけで、付き合ってるとか好きとかそんな事はなくて…」
弁明してみたが信じる気はあるのか?
「カイル君を呼び捨てにするなんて!」
「あんた生意気なんだよ」
バカみたいだな…
ハナは何だか冷静になってしまった。
「私が何を言っても無駄みたいだね。」
「開き直ってる!むかつく!」
ハナの頬を1人がビンタした。
頬が熱い。ハナは尻餅をつく。
そう、むかつくからこんな事しているのだろう。
ハナは空を見上げる。
あぁ、どうしよう。
「ちょっとあんた!」
カイトの取り巻きが何かわめいているが、ハナには届かない。1人がハナを突き飛ばす。
座りながら倒れる。
「うっ!」
大きな影が現れる。
来てしまった…
ハナは哀れに思った。
「…逃げた方がいいよ。」
「は?あんた何言ってんの?」
「逃げたいのはあんたでしょ!」
「ちょっと…上!」
取り巻き達は上を見て悲鳴をあげる。
「ひいっ!」
「これ…何この数⁉︎」
空はドラゴンの群れで覆われている。
起き上がるハナ。
「知ってる?ドラゴンの吐く炎は、一瞬で焼き尽くすの。人なんてチリも残らない。」
話しながら取巻き達に近づいていく。
「移動魔法は使わないほうがいい。呪文の詠唱中にやられるよ?」
「…!」
取巻き達は何もできず突っ立っている。怖くて動けないようだ。失禁してる者もいる。
「止まって、私は大丈夫。」
ハナの声にビクッとする女達。
ハナは1番大きなドラゴンに向かって話しかける。
「帰りなさい。」
ドラゴンはじっとハナを見ている。無言で睨み合うと、大きなドラゴンは翼を羽ばたかせて去っていった。それを合図に、ドラゴンの群れは散り散りになる。
ふぅ。
ため息を付いて女達を振り返る。
「もう大丈夫。これに懲りたら、こんな事もうやめてよ。」
ハナは箒を取り出すと空に舞い上がった。
取巻きの女達は抱き合って泣いている。
泣きたいのはこっちだ!でも、これで静かになるだろう。変な噂が流れたら、妖精に言いつけてやる。
ハナは空から町を眺めた。
「ここはどこ?」
あいつらに聞くの忘れた。妖精に聞いても答えてくれるかどうか、好き勝手している妖精は自分の話がメインで、人の話はあまり聞かない。
ドラゴン呼ぼうかな…
「ハナ!やっと見つけた!」
上から声がした。
「ルイ…」
箒に乗ったルイだ。
「急にドラゴンが集まり出したから、もしかしたらって…学校に聞いたらいないって言うし!怪我してるのか?」
額に汗をかいている。探してくれていたのだろう。
「家に帰ろう。着いて来れるか?」
「…そっち乗せて。」
ルイはハナの腕を取って前に乗せた。ハナを抱えるようにして飛ぶ。
ハナの頭には草や泥がついている。
頭をなでるルイ。
「大変だったみたいだな…」
「うん。最悪。」
2人は帰路についた。
「…今日のことパパ達に連絡するの?」
シャワーを浴びてソファに倒れているハナがルイに訊ねた。
「そりゃあね。まぁ、うまく言うよ。」
ハナは唸る。
極力静かに生活してきたのに…
怒りが沸々湧いてきた。
「ハナ、怒るとまたドラゴン来ちゃうよ」
ルイがからかう。
「ほら、ご飯にしよ。」
ハナは一旦忘れることにした。




