はじまり
光が舞う。
「わぁ」
暗い空に光の粒がキラキラ輝いている。
「あの光はなあに?」
「あれはね、妖精さんだよ。」
母が娘に教える。
「妖精さん!すごーい!」
幼い娘は光を見てはしゃいでいる。
「ハナは妖精に気に入られているんだね」
父が嬉しそうに話す。
「じゃあアレは?」
光の更に上に何か大きなモノが飛んでくる。
「あ!あれは…!」
父と母が驚愕の表情を浮かべている。
私が思い出せる1番古い記憶。
空に大きなドラゴンが飛んでいる。
今日もいい天気だなぁ。
ポカポカの春、ハナは高校3年生になった。
制服でいられるのもあと一年か…
セミロングの髪の毛が風で舞う。
空を眺めながら学校へと歩いていく。
校門で風が巻き起こる。
パッと人が現れた。
「ハナおはよ。今日も徒歩?」
友達のリリーがどこからか現れ、ハナに話しかけた。
リリーはハナの友人だ。金髪のポニーテール、緑の瞳、キレイタイプである。
移動魔法での登校は認められている。得意な生徒は一般的な登校方法だ。
「徒歩だよ。箒なら得意なんだけどなあ。なんで禁止なのかな?」
2人で並んで歩く。
「んードラゴンとか人とか、ぶつかったら危ないからじゃない?」
現代、魔法が当たり前の世界。
空には箒に乗った人間が行き交っている。電車は観光目的であり、スマホはない。それがこの世界の日常である。
「キャー!かっこいい!」
バスケの授業中、ゴールが決まると黄色い歓声が上がった。
「カイト君、今日もイケメン…」
女子を夢中にしているのは、同じクラスの男子生徒である。
長身で爽やか王道イケメン。黒髪で瞳は茶色。運動神経抜群のカイトは昔から女子にモテモテである。
「今日もトキメキ振りまいてるねー」
そんな事を言っているリリーも、しっかりカイトを見ている。
「カイト君と幼なじみなんて、羨ましい」
ほっぺを膨らましてハナを見るリリー。
「いや、幼なじみなだけだから。」
ハナはさして興味もない。
保育園から一緒だったからか、逆に異性という認識が薄いのである。みんながキャーキャー言うのが信じられない。
「知り合いの子どもが成長したなあ、みたいな感覚だから。」
「まぁ、年上の彼氏がいるハナは余裕だよね〜」
リリーがからかってくる。
「彼氏じゃないってば!」
ハナは否定する。
先週、ハナを学校まで迎えにきた人物の事を言っているのだ。
その日は雨が強く降っていて、雷も鳴っていた。
傘持ってないや…やむまで待つか。
窓から外を見ていると、一台の黒い車が校門に停まった。
げっ!
ハナは急いで校門まで走る。
車から出てきた男性は、長身、金髪、紫の瞳。スーツ姿で綺麗に整った顔をしている。部外者がいるだけでも目立つ場所にそんな人物がいたら注目の的である。
めちゃめちゃ浮いてるじゃん!
「ハナ!迎えにきたよ」
ハナが来たのが分かった男は、笑顔で手を振った。
周りの生徒はもう釘付けだ。
「何あの人!」「やば」「笑顔かわいい!」
男も女も関係なく魅了されている。
ハナはダッシュで通り過ぎたかったが、肩をガードされてしまった。
「離してよ!」
「ダメです。ハナが濡れてしまうし、おとなしく一緒に傘に入って」
「なんで傘もう一本持ってこないの?」
しかしすごい雨だ。しぶしぶ傘に一緒に入る。車までの数メートルだ。
「ハナと相合傘したかったから。」
男はちょっと悪い笑みを浮かべている。
この男!
あれは、車に乗るまでの時間がすごく長く感じたな…
遠くを見ているとリリーが視界に入る。
「彼氏じゃなきゃ何なの?」
うっ!
追求が止まらない。ここの所毎日だ。
「…誰にも言わない?」
ハナがリリーに確認する。
「言わない!」
リリーは好奇心で目が輝いている。
「本当に?」
「本当!」
観念したハナはリリーにこっそり耳打ちした。
「いいなづ、け?」
リリーが首を傾げている。
「って何?」
分かってなかった。
リリーは小さい時に外国から来て日本人となった。故に、時々知らない事がある。
「許嫁っていうのは、その…将来その人と結婚するって決められてる人ってこと」
言いながら恥ずかしくなってきた。
「ええ!すごい!フィアンセってことね!」
リリーがはしゃいでいる。
「ちょっと!声でかい!」
ハナはあせる。
「でも、それ彼氏でよくない?」
リリーがもっともな事を言っている。
「そうだけど、なんか認めるのが嫌と言うか、言ったら負けみたいな…」
ハナはモニョモニョと口を濁す。
「恥ずかしいのね?ハナかわいい」
リリーがからかっている。
「…」
ハナは黙る。
何だかリリーが大人に見えた。




