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メン地下アイドル! めろらぶ!  作者: にゃんたろ


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めろらぶというグループ

 一七〇センチくらいの青年が、別な青年の首に腕を回し熱烈なキスをしている。

 首に腕を回された青年は、一七七センチくらいあるだろうか。やや髪に青みがかかっており、肩幅ががっちりしている。

 そしてその二人をなんでもないように見つめる三人の青年。皆二十歳前後と言ったところか。

 みちるは全く状況が分からなかった。

 説明を求めるようにアズマへ視線を送るが、アズマは何もないと言わんばかりに口を開いた。


「マネージャー業は初めてとのことで、わからないことも多いと思うがぜひみんな教えてあげて欲しい」


 アズマの言葉に一同の視線が集まる。

 キスをしていた二人も体を離し、みちるを見つめた。

 特に熱烈なキスをしていた黒髪ショートの青年はまるでみちるを吟味するような、値踏みするような視線を送った。


「マネージャー経験ないヤツがマネージャーで大丈夫なのかよ?」

「まあそう言わず、まずはちゃんと挨拶しましょ?」


 青年二人のキスで気をとられていたみちるだったが、その口調と彼の姿を見て面を食らった。

 まるでオネエのような喋り方をする彼は女性かと見間違うほど可愛らしかった。

 ピンク色の髪をハーフアップにし、化粧もばっちりしていた。カラーコンタクトの入った瞳はくりっと大きく、目力が強い。そして一八〇センチはありそうな身長と細身な体はモデルを思わせた。


「えっとみちるちゃん、だっけ? アタシオレンジ色担当のみや。よろしくね?」


 差し出された手にはしっかりとネイルもされていた。


 「あ、えっと、七森みちるです。よろしくお願いします。みやさんはえっと……メンズ地下アイドル『めろらぶ』のメンバー……なんですよね?」

「そうよ」


 即答だった。

 みちるはなんと言って良いのかわからず、口ごもってしまう。

 すると横から紫がかった髪が特徴の青年が口を開いた。


「みや、お前女だと思われてんじゃねぇの?」

「あ、そういうこと? だとしたら嬉しいんだけど?」

「え、あ、はい……。メンズ地下アイドルと聞いていたので、男性しかいないのかなって。そしたらすごく綺麗な人がいて、ちょっとびっくりしちゃいました」

「えーやだ嬉しい!」


 そういってみやがいきなりみちるに抱き着く。

 みちるは驚いて離れようとするが、相手は男。力には敵わない。だがその一方で近づいた瞬間ふんわりと甘い香水の香りがみちるの鼻孔をくすぐった。これがまた女性なのではないかと錯覚させる。


「馬鹿! 誰彼構わず抱き着いてんじゃねぇよ! 一応異性だろうが!」


 紫髪の青年がみやを引きはがす。


「んもー。いいじゃない、喜び表現なんだからぁ」

「だめだ。ったく……」


 困惑で固まるみちるを見て紫髪の青年はガシガシと頭を掻いた。


「驚かせたな。こいつちょっと距離感バグってるところあるから気を付けてくれ。悪い奴じゃねぇから」


 それから少し間を開け、みちるをじっと見る。


「あと変な気を起こすんじゃねぇぞ」


 急にトーンが変わり、みちるの肩がぶるりと震えた。


「えっと、それは……」

「もう、ゆっきーってば、すぐ怖い顔する~~。そんなんじゃ折角の男前もただの仏頂面になるわよ」


 みやがゆっきーと呼んだ男の頬を軽くペチペチと叩く。


「ごめんねぇ、みちるちゃん。この子が緑色担当のゆきと。ちょっと口が悪くてたまに目つきが悪いんだけど、根はいいやつだから許してやってねぇ」

「は、はぁ……」


 もはや脳の状況整理が追い付かず、腑抜けた声を漏らすみちる。


「個性的な人たちが多いですよね、このグループ」


 みちるの気持ちを代弁するかのような、穏やかな声がする。みちるが声の方を振り返ると、そこには爽やかそうな青年が立っていた。

 栗色の髪の毛が優しそうな印象を抱かせた。肌が白く、少し頼りなくも見える。だがその華奢さ、儚さが彼の魅力でもあった。


「僕は『めろらぶ』白色担当、くおんです。どうぞこれからよろしくお願いいたしますね」


 礼儀正しさも兼ね備えている。


「よ、よろしくお願いします」


 軽くくおんと握手をし、最後にキスしていた二人へ視線を向ける。

 キスをされていた青年がみちるに向き合う。


「青色担当のとーまだ。これからよろしく頼む」


 口数が少なく、淡々とした様子で言う。

 そして最後はとーまという青年に熱烈なキスをしていた一人が残った。

 正面から見ると愛らしい顔をしていた。年相応かもしくはやや実年齢よりも若く見えそうなあどけなさがある。

 黒髪ショートの髪はさらさらしていた。その髪を揺らし彼はみちるににこっと笑みを向けた。


「ピンク色担当らきです!」


 元気でまさしくアイドル、そんな眩しさを感じた。これぞアイドル。みちるも自然と笑顔になり、手を伸ばした。


「初めまして、七森……」

「で、スケジュールは? 箱への挨拶は? ブランディング、マーケティング戦略は?」

「え?」


 差し出した手は無視され、まるで別人のような淡々とした口調で矢継ぎ早に問いかけられる。

 みちるは何を言われたのかまるで理解ができなかった。

 なんならまだ「らき」と今喋った青年が同一人物であることさえ認識できずにいた。


「らきくん、彼女は今しがたオフィスに来たばかりなんだ。仕事はこれからだよ」

「さっさと仕事教え込んで使えるようにしておいてください」

「もちろんだ。それじゃあその間にらきくんたちはビラ配り、お願いできるかな?」

「うっす」


 アズマの言葉を聞き、らきは挨拶もそこそこに部屋を後にした。何が何だかわからないみちるはその場に立ち尽くすしかない。


「らきってば相変わらずね。しょうがないわ。アタシが色々教えてあげる。とーまたちもビラ配り、手伝いに行ってちょうだい」

「了解」

「分かりました」


 続いてとーまとくおんも部屋を後にする。


「ではみやくん、任せたよ」


 そういってアズマも出ていった。

 残されたのはみちる、みや、ゆきとの三人だった。


「ほら、アンタもビラ配り行く!」

「え~みやとミチルサン二人きりにすんの嫌なんだけど。変な気起こされたらどうすんだよ」

「どうもしないわよ。てか、アタシは他の人なんか眼中にないってわかってるでしょ?」

「そうだけど……」

「それならグダグダ言ってないでさっさと行きなさい。アンタ顔はいいんだから、立ってるだけで客寄せパンダになれるのよ」

「別になりたかねぇけど。終わったらお前も必ず来いよ」

「はいはい」


 みやが軽くゆきとの背中を押すと、ようやくゆきとも部屋を出ていった。

 そして一室にはみやとみちるだけが残された。


「それじゃあ、みちるちゃん? 始めましょうか」


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