表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星陽高校バリスタ部  作者: やた
第13話 黒髪の新入部員

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/134

6.恋の宣戦布告

 放課後。 その日の営業を終え、部員たちが片付けを終えて帰宅の途につこうとしていた。


 テラスには、忘れ物を取りに戻った結と、何かを待っていた様子の凛の二人だけが残されていた。 秋の日は短く、周囲はすっかり濃い藍色に包まれている。テラスの照明だけが、二人をスポットライトのように照らし出していた。


「……星野さん。少し、お話ししてもよろしいかしら?」


 凛の声は、いつものクールなトーンだったが、その奥に隠しきれない熱量が潜んでいた。


 結は足を止め、真っ直ぐに凛を振り返った。


「……何? 羽純さん」


「単刀直入に伺います。……あなたと日向蒼太さんは、どのような関係なのですか?」


 結の胸が、ドキンと大きく跳ねた。


「……関係って、言われても。……私たちは、一緒にテラスを守ってきた、一番の親友で、パートナーだよ」


「親友。パートナー。……便利な言葉ですわね」


 凛が一歩、結に歩み寄る。その群青色の瞳が、結を値踏みするように見つめた。


「でも、私が知りたいのはそういうことではありません。……あなたは、彼を『愛して』おられるのですか? それとも、ただの部活動の仲間として、執着しているだけなのですか?」


「愛して……っ」


 結の顔に、朱が走る。


「そ、そんなの……! 答える必要ないでしょ!」


「答えられない……つまり、まだご自分の気持ちを定義できていない、ということでよろしいかしら」


 凛は静かに、しかし冷酷なまでに核心を突いた。


「星陽祭の時、あなたは確かに日向さんの隣にいました。そして、あなたの様子や日向さんの反応を見ていれば分かります。お二人は、互いを特別だと思いながら、その先に踏み込む勇気を持てずにいる。……いわゆる、甘い停滞、ですわね」


 結は言葉を失った。 凛の言う通りだった。自分と蒼太は、確かに特別だ。でも、その関係を壊すのが怖くて、誰もが知っている結論を口にせずにいた。


「私は、停滞などいたしません」


 凛の表情が、一瞬で「一人の恋する少女」のそれに変わった。 その瞳には、弓道の的を狙う時のような、凄まじい一途さが宿っている。


「私は日向さんが好きです。彼の魂に、一目惚れいたしました。……私は本気で、彼のハートを射抜きに参ります」


 結は、息が止まりそうになった。 これほどまでに、真っ直ぐで、重くて、美しい告白の宣言を、聞いたことがなかった。


「星野さん。あなたは、どうなさるおつもり? このまま、彼の一番近い場所を、私の情熱が溶かし去るのを黙って見ていられますの?」


「……そんなわけ、ないでしょ」


 結の声が、震えを帯びながらも、次第に熱を持って太くなっていく。 彼女は凛を睨みつけ、拳を胸元で握りしめた。


「蒼太くんのこと、誰よりも見てきたのは私だよ。彼が苦しんでた時も、笑った時も、ずっと隣にいたのは私なんだから!」


「過去の時間は尊重いたしますわ。……でも、未来の時間は、これからの勝負次第です」


 凛が、優雅に微笑んだ。 それは、戦端を開く騎士のような、気高い笑顔だった。


「先に日向さんのハートを射抜いた方の、勝利……。これでよろしいかしら?」


「……いいよ。受けて立つ。……負けないからね。私、蒼太くんのこと、誰にも渡さない!」


 結の宣言が、静かなテラスに響き渡った。


 太陽と月。 結と凛。 正反対の輝きを持つ二人の少女が、一人の少年の心を巡って、今、激しい火花を散らし始めた。


 秋の夜空には、雲の切れ間から「中秋の名月」が顔を出し、二人の少女と、その中心にいる少年の行く末を、静かに照らし出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ