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星陽高校バリスタ部  作者: やた
第8話 SNS炎上?広報担当の涙

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2.届かぬ言葉

 投稿からわずか二時間半後。自宅に帰った結のスマートフォンは、熱を帯びた通知で震え続けた。「いいね」の数の増加を期待していた結の興奮は、瞬く間に凍りつき、通知の色は、警戒を示す赤へと変わっていった。テラスの投稿に対するコメント欄は、急速に憎悪と不信の言葉で埋め尽くされ始めた。それは、雪崩のような、制御不能な批判の波だった。


 SNS上で批判の声が上がり始めたのだ。原因は、やはり結の「最高級の地元の果実を贅沢に使用!」という、キャッチーさを追求した一文だった。


 最初の批判の火をつけたのは、SNSを監視し、揚げ足を取ることを目的としたかのようなアカウントだった。


@ABC_def: 「最高級? どこのブランドのマンゴーを使っているのかと思ったら、画像は地元の無名農家さんのものだね。調べてみたが、そのマンゴー、市場価格は普通のスーパーで流通しているレベルだろ。高校生が『最高級』とか虚偽誇大広告はダメだろ。単なる客寄せのための嘘か? 地域連携とか謳っておいて、やってることは詐欺まがいの不誠実なやり方だな。学校側は把握しているのか?」


 このコメントは、テラスが目指していた「地元の農家さんが丹精込めた品質の高い特産品」という意味の「最高級」が、SNSの世界では「市場価格が最も高いブランド品」と意図的に曲解されたことを証明していた。ユーザーは、テラスが守ろうとした「地元愛」という無形の価値を無視し、冷徹な「市場価格」という論理と、厳しい法的な視点でテラスを断罪し始めた。


 さらに、結が「数量限定」を強調しつつ具体的な限定数を曖昧にしていたことが、第二の批判を引き起こした。


@ghi_JKL: 「どうせ開店直後に即完売させて、『予約しないと買えない人気店』を演出し、話題作りをするつもりだろう。高校生がやることはセコい。結局、地元の安価な素材で利益を上げたいだけだろ。不誠実だ。高校生がビジネスに口を出すからこうなる。星陽高校の部活動は、地元の名前を利用して学校の信用を落としている」


 批判的なコメントは、波のように押し寄せ、わずか数時間で炎上状態に陥った。それはもはや、限定メニューの是非を超え、「星陽高校の部活動は、地元の名前を利用して不誠実な宣伝をしている」という、学校の信用問題にまで飛び火していった。炎上は、テラスの存在そのものを否定する、破壊的な勢いを持っていた。


 結は、スマートフォンの画面が、次々と湧き出てくる辛辣な言葉で埋め尽くされるのを、震える指で見つめていた。心臓は警鐘のように激しく鳴り響き、全身の血の気が引いていくのがわかった。彼女の頭の中は、「嘘じゃないのに」「どうして誰も信じてくれないの」という悲鳴で満たされていた。


「嘘じゃない。私、嘘をついたつもりなんてないのに……。蓮くんの餡子も、蒼太くんのコーヒーも、みんなの努力も、私のたった一言が……すべてを台無しに……」


 ローカルな熱意が、デジタルの広場では通用しない、冷たい論理で断罪されていた。恐怖、責任感、そして何よりも、自分たちの活動の「誠実さ」を否定されたことへの悔しさが、結の精神を完全に麻痺させた。彼女の視界は歪み、呼吸は浅くなる一方だった。


 彼女は、スマートフォンの電源を無理やり切り、布団の中に潜り込んだ。テラスの存続がかかった大切なイベントを、自分の安易な言葉と、過度な自信で台無しにしてしまったという自責の念が、彼女の心を重く締め付けた。外界との接点を断ち、結は深い孤独と絶望の中に沈んでいった。

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