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星陽高校バリスタ部  作者: やた
第7話 「夏のカフェ大作戦」と冷たい帳簿

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6.新しい一歩

 理事会当日。生徒会長の天野が、理事たちを前に立ち、真琴と桐生が統合した報告書を発表した。


 彼女は、まず桐生が作成したコスト削減の成果(運営の無駄の徹底排除)を強調し、テラスが今後も学校予算を圧迫しないことを冷静に論理立てて証明した。


 そして、真琴の集めた「無形利益」のデータを提示した。


「木漏れ日テラスは、この『夏のカフェ大作戦』を経て、非営利カフェから『地域特産品を活用した、学校の広報・連携拠点』へと進化しました。地元の小豆、スダチなどの特産品をメニューに取り入れたことで、地域住民の学校へのポジティブな関心は、過去最高に上昇。これは、広報費をかけずに得られた、学校にとって無視できない地域社会への戦略的利益です」


 理事たちは、テラスが単なる部活動ではなく、学校の地域貢献活動、ひいては私立高校としてのブランド向上に繋がる最前線となっている事実に、異論を挟むことができなくなった。地元の特産品を活かした活動は、行政からの評価にも影響する。


 廃部の危機は辛くも回避され、テラスの存続が正式に承認された。バリスタ部員たちは、理事会からの朗報を聞き、安堵と歓喜に包まれた。


 数日後、桐生はテラスを訪れ、真琴と楓に静かに話しかけた。


「君たちの勝利だ、泉さん。君のデータと、地域との連携という新しい価値は、理事会も納得せざるを得ない、強固な論理だった。……僕たちの過去を、乗り越えてくれた」


 桐生は、楓にも目を向けた。その瞳には、以前の冷たさだけでなく、親友への安堵と、ある種の負託の念が混ざっていた。


「橘部長。君たちの場所は守られた。だが、二度と感情論で戦おうとするな。論理こそが、大切な場所を守る唯一の、そして最も冷たい手段だ。それを忘れるな」


 桐生は去り際、かすかに微笑んだように見えた。彼は、真琴という、自分と同じ孤独な使命を持つパートナーを見つけ、また、楓の情熱が論理という盾を得て、守られるべき場所となったことに、安堵していたのかもしれない。


 真琴は、賑わうテラスの人工芝に目をやる。テラスの活気は以前と変わらないが、その場所は、真琴と桐生という、二人の会計係の「場所を守りたい」という強い願いと、冷徹な論理によって、より強固に守られることとなった。バリスタ部は、非営利活動を続けながらも、常にコスト意識と地域貢献を両立させる、新しい運営体制へと移行した。テラスの活気は、「冷たい帳簿」という名の温かい盾によって、これからも未来へと繋がっていくのだった。

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