プライベートゾーン(2)
「じゃあ……そんなに言うんなら……触るよ?」
「うん」
してはいけないダメなことを前にして、怖気づく私とは対象的に、美桜ちゃんの意思は迷いがない。
その感覚が分からなくて。分からないからこそ、知りたくて。言葉だけでは知り得ない、美桜ちゃんの心に触れるために、心臓がある場所へと、その前を覆うあからさまに突起した部分へと、そっと手を伸ばす。
「っ! んっ!」
「美桜ちゃん?」
「大丈夫っ! 続けて、果歩っ」
その途端、美桜ちゃんがビクッと身体を震わせて反応した。
私が美桜ちゃんの柔らかくて温かい肌と突起したものに触れたのと同時に、美桜ちゃんも感じたのだろうか? 突然の無礼な振る舞いに顔が歪んでいるけれど、やっぱり不快だったのだろうか? けど、それでも美桜ちゃんは、この期に及んでもまだなお、私に触れられることを求めている。
心に触れる気持ちは分かっても、触れられる気持ちはまだ私には分からない。今は、美桜ちゃんの反応を見ることでしか、それがどういう感覚なのかも私には知り得ない。
知り得ないからこそ、今は色々試すしかなくて、私は美桜ちゃんの尖ったものを捏ねくり回す。
「っ……ひっ! あっ! ぅぅん!」
「ほ、本当に大丈夫なの? 美桜ちゃん?」
「……っはぁ、はぁ。……大丈夫。ちょっと……その、く、くすぐったい……だけ!」
「……そうなの?」
「……うん」
少し手のひらを動かすだけでも、美桜ちゃんはビクビクッとまた反応して、声を上げる。
そんなに敏感なんだろうか? 美桜ちゃんのココは。
私も、確かにまじまじと触られたら嫌だろうというのは分かる。だからこそ、いつも自分の身体を洗う時なんかは、タオルでサッと撫でる……というか滑らすように通りすがらせている。
一方で、今の美桜ちゃんは全身を跳ねらせて変な声を上げている。こういうのを、よがっている、っていうんだっけ? あんまり気持ち良さがっているようには見えないけど。堪らなそうに息が上がっているし、声も余裕がなさそうに上擦っている。
なのに、美桜ちゃんは、私に笑みを向けている。大丈夫って言葉も、強がっているようにも聞こえてしまう。けど、美桜ちゃんはくすぐったいだけって言っているから、本当にそういうことなのかな?
「これが?」
と、私はまた軽く、今度はゆっくりと手のひらで撫でる。
「っっ〜んっ! はぁはぁ……」
すると、美桜ちゃんもまた、声にならない音を上げて悶え出す。そして、私が止めると、息を切らさせる。
「……意外と鬼畜なんだね。果歩」
その後、少し落ち着いた美桜ちゃんが、ニヤリと笑って私に言う。
「? それ、褒めているの?」
「褒めてる褒めてる。あたしゃ嬉しいよ。果歩がここまで思ったよりも急成長してくれて。期待以上だよ」
本当かなぁ? なんか今の美桜ちゃんの口調、すごい投げやりに聞こえたけど。それとも、まだ余裕がないだけなのかな? こんなことしておいて褒められても、私には、煽てられているようにしか思えないよ。
「……で、どう?」
「どうって?」
唐突に、美桜ちゃんが私に訊いて来る。
「あたしという、胸を撫でただけで、敏感に反応してしまう音の鳴る玩具。気に入ってくれそう?」
「えっ!? え、ええとぉ……」
すごく、期待するような目で私を見て、とんでもないことを訊いてくる。
どうしよう? 正直、私は、親友でもある美桜ちゃんのことを玩具扱いするなんて、ちょっと背徳感を感じてしまって……もとい、気が引けてしょうがない。今私なんか変なこと思った気がする。
だけど、美桜ちゃんの“気に入ってくれて欲しい”という気持ちも、無下にはできない。ここで私が貰ってあげないというのは、それこそペットが飼えないから捨てるみたいな残酷なことと同じだと思ってしまう。
「果歩だけの、特別な玩具だよ〜? 果歩が望むなら、暇つぶしの遊び相手の玩具でも、可愛い振る舞いをする従順なペットでも、手料理を振る舞ったり果歩の身のお世話を優しくしてあげるメイドさんでも、果歩をあらゆる脅威から守るナイトにもなってあげられる、自由な使い心地を提供できる道具だよ~?」
戸惑って迷ってしまっている私の心情を察してか、美桜ちゃんがさらに、販売員さんみたいに自分自身を商品として宣伝してくる。
「いやいやいや……。それは、何で動いているんですか!」
「愛!」
「……AIじゃなくて?」
「愛」
「……料金は?」
「今ならなんと無料で差し上げちゃいます!」
「……メンテナンスはどうするの?」
「うーん……じゃあ、もし果歩が良かったら、定期的にあたしのわがままにも答えてあげてください」
私も親友のノリに応えてしょうもないことを言い合う。
ただ、最後の美桜ちゃんの答えだけは、美桜ちゃんなりの切実な思いが込められていた。
「……しょうがないなぁ。じゃあ、貰ってあげるよ」
「やったー!」
どのみちではあったけど、そこまで言われてしまったら、断るに断れない。私が承諾すると、美桜ちゃんは無邪気に喜んだ。
「……で?」
「ん?」
「……こんなにも大きなもの、貰いっぱなしなんて落ち着かないよ。美桜ちゃんは、この後どうしてほしいの?」
「……本当に、果歩ったら良い子だなぁ。こんなご主人様に拾ってもらえて、幸福の極みだよ、あたしは。……でも、そうだな〜。このまま果歩があたしを大事にし過ぎて遠慮してしまうのも何だし……。あっ! そうだ!」
「……何?」
私を下から見上げる美桜ちゃんが、何か良いことを思いついたらしい。
私が尋ねると、美桜ちゃんは、
「じゃあ、今度はあたしの乳首を舐めてよ!」
「…………」
また、とんでもない注文を言い出した。




