表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

第3話「神の使いと呼ばれて」



翌朝──。


リュア村は、かつてないほどの活気に包まれていた。


神樹の果実を食べた者たちは、病を癒され、体に力が戻っていた。


 


「これは……夢じゃなかったのか」


「子どもの咳が止まったぞ!」


「畑が……水もないのに芽が出てる……っ!」


 


村人たちはこぞって、昨日“畑に触れただけ”で神樹を育てた青年に注目する。


そして──誰ともなく、ぽつりと呟いた。


 


「……あの方、神の使いじゃ……?」


 




 


一方その頃、村の小屋。


フィオナは、アルレンの布団の端でくるまっていた。


 


「アルレンさま〜、起きて〜♡」

「……もう少しだけ……」


 


寝ぼけて伸ばした手が、フィオナの耳をもふっと触れた瞬間──


 


「きゃうんっ!? な、撫でた!? え、今の、反則!!」


 


朝から騒がしい眷属に、アルレンは微笑む。


だがその笑顔の奥では、村の“空気の変化”を敏感に察知していた。


 


──昨日から、村人の目が変わっている。


 


疑念でも敵意でもない。


「信仰」という名の、敬意と畏怖が混じった視線。


 


(これは……少し、早すぎるな)


 


アルレンは静かに立ち上がる。


その背中に、神であった時の“威厳”がうっすらとにじむ。


 


 


その日、アルレンは村の子どもたちと畑を耕し、老人の手を癒し、井戸の底から水脈を呼び出した。


そして日が暮れる頃──


 


「“神の使い様”、今日もありがとうございます」


と、村長が頭を下げた。


 


アルレンは、少し困ったように笑った。


 


「私はただの旅の農民ですよ。名もない者です」


 


けれど、その否定はもう誰にも届かない。


人々の中で、すでに彼は“信仰”となり始めていた。


 


その夜、フィオナがぽつりと呟いた。


 


「ねぇ、アルレンさま。

もしかして……このまま、村を守り続けるつもりですか?」


 


「そうだね。けれど、“守る”だけじゃ足りない」


 


アルレンは、夜空を見上げて静かに言った。


 


「この村が……この世界が、また実りで満たされるように。

それが、僕の巡礼のはじまりなんだ」


 


 


──そして。


その“神の使い”の噂は、隣国に届くのに、そう時間はかからなかった。


 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ