トニック
暇だ。
女房に此の病院に無理矢理押し込められて早1ヵ月、退院はまだまだ先。
普通の病院に入院していても暇を持て余すのに、隔離されてる此の病棟では尚更。
此処は精神病院のアルコール中毒者が纏められている病棟。
普通の病院以上に制約が多い。
病院に押し込められたからといって、全員が全員アルコール中毒から立ち直れる訳じゃ無い。
自分から入院を希望して来た少数の人たちはともかく、家族などに無理矢理押し込められた俺を含めた奴らが立ち直れる訳が無いだろう……。
そんな事をベットに寝そべって思っていたら、廊下から「ガサ入れだぁー!」の叫び声が響いて来た。
ヤバい!
病棟の看護師共が患者の持ち物検査を始めたのだ。
俺は口寂しさからチビリチビリと飲んでいたサイダーに、隠し持っていた中学生の娘を言葉巧みに騙して買わせた、含有成分にアルコールが含まれているヘアトニックを注ぎ入れる。
看護師共が病室に入ってくる寸前に俺は、ヘアトニックのサイダー割りを一気に喉に流し込んだ。