スプレーマムの花言葉5
小陰は単身赴任中の父親。蒼佑の家で蒼佑が煎れてくれたホットココアをソファーで飲んでいた。
「あったかーい」
「春って言っても日が暮れると寒いからなコッチは」
そう言うと小陰の隣に座って自分で煎れたホットコーヒーを飲む蒼佑。
「ところで…蒼汰は?」
「あぁ…おにーちゃんはね…」
蒼汰の状況を何と説明すればいいか考えながらホットココアを口にする小陰。
(…どう説明すればいいのかな?)
考えながらホットココアを飲む小陰を不思議そうな表情で蒼佑が見つめていると家の呼び鈴が鳴る。
「ん?誰だろう?」
蒼佑は玄関に向かいドアを開けると、蒼汰とブロンドヘアーの美女が姿を現した。
「蒼汰!?」
「と…とーさん…」
いきなり泣き出す蒼汰。それを見た蒼佑は慌て出し、騒ぎに気付いた小陰が駆けつける。
「おにーちゃん!?柳生さんは!?」
「こ…小陰ぁぁ…」
小陰に膝立ちで抱きついて号泣する蒼汰。
寿の所で何かあったんだろうと分かったが、何があったのかまでは流石に分からなかった小陰。そして、何がどうなったら高校生の息子が妹に抱きついて号泣する状況になるのか予想もつかない蒼佑。
「ソウタ。かぞくに会えてヨカッタね」
蒼汰の事が気になり過ぎて蒼佑と小陰はアリアの存在に気付くのが遅れてしまった。
「えっと…who are you?」
蒼佑がアリアに一応英語で問いかける。
「私、日本語ダイジョウブ。私は、アリア」
「えっと、蒼汰をここまで送ってくれたのかな?」
「そうデス。ソウタ、困ってイタから、たすけた」
「そうだったんだ。ありがとうねアリアさん」
「That's alright. !」
そう言って笑顔を見せるアリアに今度は小陰が声をかける。
「えっと…アリアさん?良かったら中へどうぞ」
「いいんですか?なら、エンリョナク。おじゃまします」
アリアは家の中に入るとドアを閉める。
「おにーちゃんもとりあえずソファーに座って。今、何か温かい飲物用意するから」
「グスンっ…うん…」
立ち上がると涙を拭いながらソファーに向かう蒼汰の背中に手を当ててアリアが付き添う。
「もう、ダイジョウブよ、ソウタ」
「うん…ありがとうアリア」
蒼汰とアリアは隣同士でソファーに座り。アリアは蒼汰を優しく慰める。そんな二人の姿をキッチンから見ている小陰と蒼佑。
「小陰。あの子…誰なんだ?」
「私も知らないわよ」
「どうなってるんだいったい?」
親密そうにする蒼汰とアリアを見ながら小陰はホットココアを二つ作ると蒼汰とアリアに手渡し、蒼佑と小陰もソファーに座って二人に質問を始める。
「アリガトウ」
「えっと…二人の関係は…?」
蒼佑の質問に蒼汰が答えようとしたが先にアリアが口を開く。
公園で出会った事。蒼汰の朧げな記憶を辿ってここまで車で来た事をアリアは日本語で説明するのが難しいところは英語を交えて説明する。
「なるほどな」
「そんな事があったのね」
流石は成績優秀の小陰。本場のネイティブな英語も余裕で聞き取れていた。
「ところで…柳生さんとはどうなったのおにーちゃん?」
小陰が蒼汰にした質問に反応する蒼佑。
「柳生?…柳生って…もしかして…」
蒼佑が最後まで言葉を言い切る前に玄関の方からカチャカチャと音がして玄関のドアが激しく開いて中に人が入ってきた。
「居たぞっ!!」
「ぎぃやぁぁぁー!!!」
「Wow!!サムライ!ニンジャ!」
甲冑姿の人達を見て発狂する蒼汰と、甲冑姿の人達と忍者の姿をした人達を見て興奮するアリア。
甲冑姿の人達が蒼汰を捕まえて拘束する姿を見て蒼佑は慌てて立ち上がって小陰を引っ張って蒼汰から距離を取る。
「な、なんだ!?」
「おにーちゃん!?」
「た…助けぇー!!!」
蒼汰の助けを求める叫び声も虚しく。数人に抱え上げられながら蒼汰は連れ去られる。そして、その光景を呆然と見る事しか出来ない蒼佑と小陰。
「御免っ!」
そう言って深く頭を下げて玄関のドアを閉め、甲冑姿の人達は姿を消す。
「……何がどうなってるんだ小陰?」
「…柳生さんて人がいて。その人が関係してるはず…」
「柳生って…あのお城に住んでる柳生?」
「パパ知ってるの?」
「…パパが働く会社のライバル社の会長さんだ…」
「そうだったの!?…あれ?…アリアさんは!?」
部屋の中を見渡すがアリアの姿が見当たらなかった。
「…まさか…」
小陰が急いで玄関を開けに向かっている頃。蒼汰は馬に乗せられているところだった。
「イヤだぁ!やめてくれー!降ろしてくれー!」
「うるさいヤツだなっ!じっとしてろっ!…ん?」
肩を叩かれて振り返ると満面の笑みを見せるアリアが居た。
「な、なんだキミは!?」
「私も、ウマに、乗せて」
「何を言ってるんだキミは?」
「アリアー!助けてー!help meー!」
「うるさいっ!!」
「ウゲッ!…」
後頭部を強く叩かれて意識を失う蒼汰。
「Wow!Japaneseジュウジュツ!」
興奮しているアリアを無視して馬に乗るとNY市警が交通整理している道を勢いよく走り出す甲冑姿の集団に更に興奮度を増すアリア。
「Amazing!」
甲冑姿の集団が見えなくなると小陰がアリアのもとへと駆けつけてきた。
数時間後。
「………ここはどこだ?」
薄暗い部屋で目を覚ました蒼汰は痛む後頭部を右手で擦りながら部屋を探索する。すると、探索の結果…自分が今いる場所が牢屋の様な場所だと認識して膝から崩れ落ちる。
(……俺の人生……終わったな……)
自分の死期を悟り、走馬灯を見る蒼汰だったが。
(……俺の人生……しょうもない人生だったな……)
今までの自分のしょうもない人生にツッコミを入れていると人が来る気配がして、蒼汰は慌てて元の場所に戻って意識を失ったフリをする。
「蒼汰様」
(この声は…)
聞き覚えのある声に反応して見て見ると灯りを持った寿が心配そうに俺を見ていた。
「寿」
「蒼汰様、今、ここから出しますわ」
鍵を開けようとする寿の両サイドに忍者の格好をした人が現れて寿が鍵を開けようとするのを止める。
「いけません姫様」
「…その手を離しなさい」
「なりません。一刀様の命令ですので」
「離しなさいと言ってるでしょ!!!」
鬼の形相で睨む寿に一瞬怯んだが、引き下がろうとはしなかった。
「…いくら姫様の命令でもお館様のご命令には逆らえません」
「……分かりましたわ。…なら、私もこの中に入ります。開けなさい」
「そ、それは…」
「いいから開けなさい!!!!」
寿の圧に負けて牢屋の鍵を開ける忍者。そして、寿は牢屋の中に自ら入って行く。
「…申し訳ありません蒼汰様。お助けする事が出来なくて」
そう言うと寿は蒼汰の隣に座って忍者達を睨みつける。
「…お父様に伝えなさい。…私はどんなに反対されようと蒼汰様をお慕えするのを止めないと。…そう伝えなさい」
寿の伝言を聞いた忍者達は姿を消した。
「…寿…お前…」
「そんなお顔をしないで下さい蒼汰様。私が自分で決めた事ですので」
そう言っていつもの様に微笑む寿を蒼汰は真剣な眼差しで見つめる。
一方その頃。美空の部屋では。
美空と鳳はスマホの画面を見つめていた。
「何でLINEの返事がないの!?」
「ま、まさか…や、柳生のヤツ…」
「なに!?なんなの鳳ちゃん!?」
「……いや…ま、まさかな…」
「もぉぉ〜…返事しなさいよ蒼汰ー!!!」
美空はスマホをベッドへと投げつける。




