スプレーマムの花言葉4
一人の侍が焼けただれた荒野を駆け、周りを囲まれているのに気付くと立ち止まる。
「ハァ…ハァ…」
息を荒げながら周りを見渡す。
謎の集団は侍を取り囲み、怪しい目つきで侍を見つめ。頬の切り傷から血が一滴流れて頬を伝って地面に落ちる。
「…お前達は…いったい何者だ!?」
侍のその言葉が合図の様に謎の集団は侍へと襲いかかる。
侍は目を瞑り、深く深呼吸をすると目を開けて右手の親指で刀の鍔を押す。
左手で刀の柄を掴むと…
「…様。…蒼汰様」
(…ハッ!?)
寿が呼ぶ声に蒼汰は頭の中で入り込んでいたラノベの世界から現実世界へと戻ってきた。
「大丈夫ですか蒼汰様?」
「…ここは…」
周りを見渡して状況を把握しようとする蒼汰。
「…そうか…ここは…」
蒼汰は周りを見てアメリカのNYにある寿の別邸に来ている事を思い出した。
正面の奥の方を見ると。寿の父が獲物を狙う獣の目で蒼汰を睨みつけていて、蒼汰は体をビクつかせる。
「本当に大丈夫ですか蒼汰様?」
そう言って寿が寄り添ってくると一刀の目つきは更に厳しい目つき変わり、蒼汰は思わず寿を拒んだ。
「蒼汰様?」
「い、寿。い、今は止めとこうか」
蒼汰が自分を拒んだ事に疑問を抱いた寿は首を傾げる。
「どうしてですの?」
「あの…ほら…お、お父さんが見てるし…」
「お父様?…なぜ、お父様が出てきますの?」
「いやいや。大切な一人娘がどこの馬の骨か分からない男をいきなり連れてきたらああなるよ普通」
俺が目線を寿の父親に向けると寿もその方へと目線を向ける。
寿の目線が自分に向けられると察知した寿の父親は寿に天使の様な微笑みを見せる。
「…いつものお父様ですが?」
(そりゃお前の前ではなっ!)
周りの人からしたら俺と寿のやり取りはいちゃついている様にしか見えなかったのだろう。そして、我慢の限界を迎えた寿の父親が肘当てを強く叩き、暫しの静寂の後で寿の父親が口を開いた。
「…貴様…最後に言い遺す言葉はあるか?」
(いきなりですか!?裁判もなし!?)
「…どうやら無いようだな。…アイツを捕らえろっー!」
「御意っ!!」
一刀の命令で周りにいた家臣達が一斉に蒼汰へと飛びかかってくる。
「いやぁぁぁぁー!!!!」
涙目で叫びながら蒼汰は逃げ出す。その光景を寿は口に手を当ててながら見守る。
「あらあら」
「絶対に取り逃してはならんぞー!!!」
「御意っ!!!」
凄まじい勢いと形相で蒼汰を追いかける家臣達。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
謝罪を繰り返しながら蒼汰は全力で走り、何とか外へ出る事に成功したが来る時に入ってきた門で行き止まりに合う。
「クソっ!これ、どうやって開けるだ!?」
門をドンドンと強く叩くがビクともしない。
「逃がすかぁぁぁー!!!」
後を振り返ると数え切れない数の一刀の家臣達が迫ってきていた。
「ぎぃやぁぁぁぁー!!!!」
泣き叫びながら門を強く叩く。
「開いてくれっ!開いてくれぇぇぇー!!!」
最後の力を振り絞って門を強く叩くと、なぜだか知らないが門がゆっくりと動き出す。
(やっ…やったぞっ!)
門が開くと寿の執事が門の外に立っていた。
「あなたは確か…セバス」
「俺は平田だっ!」
「ひっ!?…す、すいません」
平田は蒼汰に近づくと耳元で口を開く。
「…これであの時の借りは返しましたからね」
そう言うと平田は蒼汰を追う集団に向かって歩き出す。
(…あの時の借り?)
平田の言っている事がよく分かっていなかった蒼汰だったが。窮地を救ってくれた平田にペコっと頭を下げて走り出す。
(…まさかあの時の少年がね…)
平田は鬼気迫る集団に向かって手を大きく広げて叫ぶ。
「そこまでだっ!止まれっ!」
寿の別邸を飛び出した蒼汰は無我夢中で走り続けていたが、後を振り返り追手が来ていない事に気付くと足を止めてその場で膝に手を着き。息を荒げながら自分が靴を履かずに飛び出してきていた事に今気付いた。
靴も履かずに膝に手を着きながら肩で息をしているアジア人にNY市民は怪しげな視線を向けている。
蒼汰もその視線に気付いたようで、目立たない場所に移動しようと人目を避けて歩き出す。
暫く歩くと人気のない小さな公園を見つけ、公園のベンチに座る蒼汰。
「…へっくしゅん!…さむっ…」
日もだいぶ暮れてきて、春とは言え日が暮れると寒くなってきて蒼汰は両肩を抱いてブルブルと震えていた。
(…スマホと財布は鞄の中だし…どうしよう…)
今の自分の状況に絶望していると急に暖かい感触に包まれた蒼汰。
(なんだ!?)
誰かがコートを自分にかけてくれた事に気づき、後を振り返ると。美しいブロンドの髪の美女が心配そうに俺を見ていた。
「What's wrong? It's okay.?」
そう言ってブロンド美女は俺の様子を伺う。
「are you japanese?」
急なブロンド美女の登場に俺のモブぼっちが発動するのは必然で簡単な英語さえ聞き取れずにアタフタしだす。
「えっ、えっと…俺っ…ア、アイアムジャパニーズ」
視線も定まらずアタフタと話す俺の言葉を聞いてそのブロンド美女は目を輝かせる。
「あなた、ニホンジン!私、ニホンだいすき!」
カタコトでそう言うとそのブロンド美女は俺の隣に座る。
「私、スコシならニホンゴわかる。どーしたニーチャン?」
英語が話せないわけじゃなかったが、カタコトな日本語でも自分が知っている言葉を聞けてこれから先の事に一筋の光が差してきた俺の目から自然と涙が流れてきた。
「どうしたニーチャン!?ドコカケガしてるの!?」
急に泣き出す俺に驚いたブロンド美女は俺にかけたコートのポケットからハンカチを取り出して差し出す。
それを受け取って俺は止まる事なく流れてくる涙をハンカチで拭う。
「私はアリア。ニーチャンの名前ワ?」
「グスンっ…蒼汰。風陰蒼汰」
「カゼ?カゲ?…ソウタ?」
発音が難しいのか上手く発音できないアリア。
「ソ…ソウタは、ココで、何してる?」
「えっと…」
自分の今の状況を少し日本語が話せるアメリカ人に日本語でどう説明すればいいのか俺は迷っていた。
「……very complicated situation」
俯きながらそう俺が口にすると。
「I got it.…ソウナンダ。私にデキることアル?」
アリアの言葉に反応してアリアを見るとアリアは笑顔を見せる。
「Is there anything I can do for you?」




