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スプレーマムの花言葉2

飛行機の中でリクライニングシートを倒しながら俺はHibari先生の本を堪能していた。


「乗り心地はいかがですか蒼汰様?」


隣に座る寿が蒼汰に声をかける。


「最っっ高だぜ寿!」


「いくら柳生さんのプライベートジェットとはいえ、はしゃぎ過ぎよおにーちゃん。ごめんなさい柳生さん。私まで連れてきてもらって」


後ろに座っている小陰が顔を覗かせてそう言うと。


「そんなお気になさらないで下さい小陰さん。お飲み物は足りてますか?セバス」


「はっ。…私は平田でございますお嬢様」


俺と寿と小陰は現在NYに向けて寿のプライベートジェットで順調に飛行中だ。


何故、NYに向かっているのかと言うと寿からデートに誘われ、行き先が映画館でもなく、喫茶店でもなく、アメリカのNYという…普通のデートとは言い難いデートの誘いに俺が乗ったからだ。


そして、NYに行くなら「小陰も一緒にいいか?」という俺のお願いも寿は快く了承してくれた。


そして、寿が俺の為に用意してくれたプライベートジェットはラノベに囲まれた空間で、俺みたいなラノベぼっちにとっては最っっ高としか言い表せない空間を用意してくれていた。


「お気に召しましたか?」


「最っっ高だよ寿!ありがとな寿!」


「蒼汰様のその笑顔が見れて私も嬉しいですわ」


少し照れた様に寿は微笑み。そんな俺と寿の姿を少し呆れた感じでじっと後ろから見ている小陰。


(…なんか…新婚旅行みたいねこの二人の雰囲気)


平田から受け取った高そうなグラスに入ったコーラを蒼汰に渡す寿。そのグラスを受け取ってストローで飲みながら蒼汰はラノベを読み続ける。


(あぁ〜…幸せだなぁ)


一方その頃。美空の部屋。

部屋の中を右へ左へ腕組みしながら美空が行ったり来たりしていた。


「…あぁぁ!イライラするわねっ!」


ソファーの前にあるテーブルでノートパソコンを開いている鳳が美空に声をかける。


「お、落ち着いて下さいみ、美空さん」


「落ち着いていられないわよ鳳ちゃんっ!だってあの柳生と二人っきりよ!?」


「い、妹さんもい、一緒ですから…や、柳生もそ、そんな暴走はしないとお、思いますよ」


美空は足を止めて鳳を見る。


「そ、それに…そ、蒼汰も…バ、バカな事はしないと思います」


「…鳳ちゃん」


互いに想いを寄せている人が、その人に想いを寄せている人と妹がついて行ってるとはいえ、一緒に遥か遠いアメリカに向かっている状況に冷静な姿を見せる鳳を見て美空は感心していた。


(達観してるのね鳳ちゃん)


見た目は子供なのに冷静で落ち着いた姿を見せる鳳が今日は何だか自分より大人っぽく見えてきた美空。


「…だ、大丈夫ですよ。な、何も起きません」


そう言うとノートパソコンのキーボードを冷静に叩き出す鳳。


(…私も見習わないとな)


そう思い鳳の創作具合を確認しようとノートパソコンをチラっと覗く美空。


『柳生死ね。柳生死ね。柳生死ね。柳生死ね。柳生…』


ノートパソコンの画面には『柳生死ね』という文字が永遠と打ち込まれていた。


(…やっぱり鳳ちゃんも気が気じゃないのね)


窓に向かい窓を開け。何処までも続く蒼い空の遠くの方を見つめる美空。


「…早く帰ってきなさい…蒼汰」


そう呟く美空の後で鳳はまだパソコンのキーボードを叩いている。


「『柳生死ね。柳生死ね。柳生死ね。』」


遠く離れた場所で美空と鳳がそんなやり取りをしているとも知る由もない蒼汰はいつの間にか寝てしまっていた。


蒼汰の寝顔を微笑んで見つめながらお茶を飲む寿に小陰が声をかける。


「柳生さん」


「どうしました?」


「…私まで一緒に連れてきてくれた事には本当に感謝してますし、柳生さんが本当にいい人だとも思っています。…でも、兄の事は別です。…ハッキリ言って…私は柳生さんはお断りです」


唐突な小陰の言葉に寿は冷静に返答する。


「何故ですか?」


「兄は…おにーちゃんはこういう人です。そんな人が何でも願いを叶えてくれる柳生さんの様な人と一緒になったら…ダメ人間がもっとダメ人間になってしまうから」


辛辣な言葉を口にする小陰だったが。その言葉からは兄を想う気持ちが寿には伝わってきた。


「小陰さん。お兄様が大好きなんですね」


「…はい。大好きです。おにーちゃんには幸せになってもらいたい」


「私も蒼汰様が大好きですわ。…私から言うのもアレですが…私と一緒になれば小陰さんの願う『兄の幸せ』は必ず叶いますわよ」


「…それは…」


幸せそうな寝顔を見せる蒼汰を見る小陰。


「…で、でも…」


「柳生家の財力と権力を持ってすれば大体の事は叶えられます。…ですが…必ずしも『幸せ』とは言いきれませんわ」


「…それは…どういう意味ですか?」


「…私達、柳生家は絶大な財力と権力の裏では想像を絶する重圧と戦いを繰り返す日々を送っております。そんな世界的に有名な柳生家の一人娘と一緒になるという事は…蒼汰様もその想像を絶する重圧と戦いの日々に足を踏み入れる事になります」


寿は隣で幸せそうな寝顔を見せる蒼汰の頭を優しく撫でる。


「…もし…蒼汰様がそれでも私と『一緒になる』と覚悟を決めた時は…お兄様の決断を認めてあげて下さい。私をどれほど小陰さんが嫌っていても。…蒼汰様が決めた事を認めてあげて下さい」


小陰は寿の『想像を絶する重圧と戦いの日々』という言葉を聞いて、それに身を入れる蒼汰の姿を想像しようとしたが…想像力が自分にないのか。それとも、想像出来ないのか。蒼汰の姿が浮かばず売り言葉に買い言葉で寿に返事をした。


「…分かりました。…もし、おにーちゃんがそう自分で決めたのなら…私は何も言いません」


「約束ですわよ」


寿は小陰の方を振り返る。


「……あと……私、柳生さんの事は『嫌い』じゃないですからね」 


「あらっ!てっきり嫌われているのかと…」


口に手を当てて驚いた表情を見せる寿。


「嫌いだったら一緒に来ませんよ(笑)」


「そうですわね(笑)…小陰さん。そろそろ私をおねーさん(お義姉さん)と呼んでくれてもいいんじゃないですか?」


「…そういうとこは嫌いかもしれません…」


少し間を置いて寿と小陰は同時に「ふふっ」と笑い出す。


『これより着陸態勢に入ります。シートベルトを閉めて下さい』


機内アナウンスが流れて飛行機は着陸態勢に入る。


「蒼汰様。起きて下さい」

「おにーちゃん起きて!」


寿と小陰に起こされる蒼汰だったがなかなか起きなかった。


夢の中で蒼汰は一国の王になっていて、贅沢三昧を豪遊していた。


「はっはっはー!私がHibari王国の王の蒼汰であるっ!」


蒼汰の隣には幸せそうに蒼汰に寄り添う寿の姿があった。

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