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鈴蘭の花言葉6.5

ブーゲンビリアの店内を遠くから覗く怪しい人物がいた。


(柳生には『絶対行くな』って言ったけど…やっぱ気になるのよねぇ)


怪しい人物は深く被った帽子とグラサンの隙間から蒼汰と鳳がいる店をじっと見ている。


(ここからじゃよく見えないわね)


二人の様子がよく分からないので隠れている場所から出て店に近づこうとした時、近くにもう一人怪しい人物が蒼汰と鳳がいる店を双眼鏡で覗いていた。


「ここからじゃ良く見えませんわね…」


(なんか…怪しい人がいるわね)


「「……あっ」」


怪しい人物同士は目が合うと同時に声を揃える。


「…柳生?」

「…久瀬さん?」


怪しい人物は美空と寿だった。


「柳生…ここで何してるの?」

「久瀬さんこそ?」


どうやらお互い目的は同じのようだ。


「…柳生…ここは一つ協力しない?」

「久瀬さん…たまにはいい事を言いますわね」


互いに嫌っている間柄の二人だが目的が同じ事から協力し合う事で同意し。ここに最強かもしれないし最悪かもしれない奇跡のタッグが誕生した。


そんな最強か最悪なタッグが誕生して自分達に迫ってくるなど知らない蒼汰と鳳は店の中で恋人を演じていた。


「ひ、鳳たん。…こ、このあとは…ど、どうする?」


「そ、蒼汰…くんの…い、行きたいとこ、とこで、い、いいよ」


二人は不気味な程にぎこちない笑顔を見せるが。そんな二人の姿を周りは暖かい目で見ている。


(はぁ…はぁ……この演技…思ってた以上に疲れるな…)


蒼汰が心でそう思っていた時、店に新しいカップルの客が入ってきて。店内はその二人にザワつく。


ザワつく人達につられて二人もそのカップルに目をやると。彼氏の方はハーフイケメンで彼女の方はモデルか女優かと思える程の美女だった。


その二人組は蒼汰と鳳の隣の席に案内されて座ると同時に互いがメニューで顔を隠した。


(やっぱ有名人なのかな?)


あまりジロジロと見ては悪いと蒼汰は隣の席から視線を戻す。


蒼汰と鳳の隣の席。

「…何で隣なのよ…」

「ここしか席が空いてなかったから仕方ないですわ…」


メニューで顔を隠しているハーフイケメンと美女の正体は…美空と寿であった。


数十分前。

「あそこの店は『カップル限定』のお店みたいね」


「なるほど…なら変装してカップルを装うしかありませんわ」


「変装って…どうするのよ?」


「セバスっ!」

「はっ。…私は平田でございますお嬢様」

「特殊変装チームをすぐに準備なさい」

「はっ。直ちに」


「…柳生…あんたっていったい…」


「そんな事はどうでもいいですわ。…私が彼女役でいいですわよね?」


「はぁ?何でそうなるのよ?」


「私と久瀬さんの身長差を考えれば当然ですわ」


「…確かにそうね…」


美空と寿は到着した特殊変装チームが乗る大型バスの中へと入って行く。


蒼汰と鳳の隣の席。

「これからどうするのよ?」

「…まずはバレていないか確かめますわ」


そう小声で話しをしていると、寿がメニューから顔を出してわざと蒼汰と鳳の方を向いてみた。


「ちょっ…あんたね」


寿は二人と目が合って少しドキッとしたが…バレなかったようだ。


「大丈夫ですわよ久瀬さん」

「…ほ、本当に?」


美空が恐る恐るメニューから顔を出すと蒼汰と目が合ったが…美空の方もバレなかった。


「…本当に大丈夫みたいね」


「当然ですわ。私達の今の姿は別人ですもの」


さすが柳生家が用意した特殊変装チーム。二人を見事なまでにハーフイケメンと女優風の美女に変身させていた。


バレていない事に安堵した二人だったが。油断して正体がバレないように話し方や声にも気を配りながらカップルがしそうな会話を始める。


そんな二人を蒼汰と鳳は気になるようで、チラチラっと目をやりながらこちらはこちらでカップルの演技を続ける。


「…と、隣の二人…」


鳳の言葉が耳に入ってきた美空と寿はドキッとしてまたメニューで顔を隠した。


((…バレた?))


「…す、凄く…お、お似合いの二人…だ、だな」


((…ほっ))


「確かにな。……でも…」


(なに?)

(なにかしら?)


「…彼氏の方はイケメンだけど…性格が悪そうな顔じゃい?」

(あ?)


「彼女の方は美人だけど…なんか闇が深そうでヤバそうな感じ」

(…はい?)


美空と寿の額に怒りマークが出て、今にでも蒼汰に「なんだって!?」と飛びかかるのを抑える二人。


美空と寿の地雷を踏んで二人を火山の噴火寸前までの状態にしているなんて夢にも思ってない蒼汰。


(蒼汰…許さないからね)

(蒼汰様…さすがの私も怒りますわよ)


聞こえていないと思っているのか。聞こえてもいいやと思っているのか。蒼汰は二人の事をボロクソに言っていて。美空と寿のメニュー表の握っている部分はグチャグチャになっていた。


腹が減っていた蒼汰が追加で頼んだナポリタンを今度は鳳が蒼汰に食べさせて。そんな二人の姿はもう本当のカップルに見えてきていた。


そんな初々しいカップルを演じている二人を美空は温かい目で見ていた。


(仲直り出来てる感じね。…良かった)


一方の寿は奥歯を食いしばりながら鳳を睨んでいた。


(蒼汰様に『あ〜ん』なんて…羨ましすぎますわ!)


何故か睨まれている事に恐怖を感じた鳳は蒼汰にナポリタンを食べ終えたら店を出ようと言い出し。それを承諾した二人は会計を済ませると恥ずかしそうに手を繋いで店を出て行く。


「…店を出ましたわね。行きますよ久瀬さん」

「お待たせしました。ご注文のナポリタンです」


寿が席を立ち上がろうとすると店員がナポリタンを持ってきた。


「…久瀬さん?」

「…見てたらお腹空いてきちゃって」


呆れた顔で美空を見ながら席に座る寿に美空はナポリタンを渡す。


「…なんですの?」


「ここ。相手に食べさせるのがルールみたい」


「……はい?」


さっき神に『私にも「あ〜ん」させて下さい』とお願いした寿の願いを神は叶えてくれた。


(…相手を間違えてますわ神よ)


渋々とフォークでナポリタンをすくって美空に差し出す寿だった。



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