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ピンクのガーベラの花言葉11

人は『死』を目の前にするとどうすると思う?


『覚悟を決める?』『諦める?』『藻掻く?』『無になる?』


俺の場合は………『中華料理を食べる』………ですかね。



震える手を制御しながら麻婆豆腐を口に入れる蒼汰。


「美味いか?」


「お、美味しいです!」


そう返事をすると俺の向かいに座って片肘をテーブルについて東堂会長は微笑む。


コンテストの一次審査を無事に突破した俺達は会長の発案で会長のご両親が経営する中華料理屋でお祝いをする事になり。いつもより早く店を閉めてくれて貸切り状態の店内で俺は中華料理を振る舞ってもらっていた。


「んっ!?…この炒飯すごく美味しいですね!」


「そうだろそうだろ。うちの看板メニューだからな」


炒飯の美味しさに驚きの表情を見せている小陰に会長は笑顔で答える。


「この酢豚も絶品ですわね。家では中華料理はあまり出ませんので…蒼汰様は中華料理お好きですか?」


「ん?まぁ…嫌いじゃ」


寿の問に答えようとしていたら厨房の奥から「ドンッ!!」と何かをまな板の上で強くぶった斬る音が聞こえてきた。


「な…中華料理大好きですっ!!」


「いきなりなに?さっきから落ち着きがないよおにーちゃん」


小陰に軽く説教される蒼汰はブルブル震えながら中華料理を食べ続ける。


東堂会長の提案で小陰もお祝いに呼ぶ(寿は呼んでない)事になり。気が合うのか東堂会長と小陰はすぐに打ち解け合って仲良くなった。


「小陰ちゃんは鈴蘭を受けるのか?」


「はいっ。そのつもりです」


「そうか。…私とは入れ違いになるな」


「そうなんですよねぇ…来年まで鈴蘭にいませんか?」


「それは私に留年しろという事か?」


「まぁ…そうですね…」


会長と小陰は少し間を置くと顔を見合わせながら「ふふっ」と、同時に笑い出して笑い合っていた。


小陰は中華料理を美味しく食べながら会長や寿との会話に花を咲かしているが。俺はこの場所に足を踏み入れてから生きた心地がしていなかった。


(小陰は楽しそうだな…)


「ドンッ!!!!」


(ひっ!?…)


厨房の奥から更に大きな音がして暫くすると出来立てのエビチリを会長のおと…父親がテーブルに運んできた。


「うわー!美味しそうぉ〜。すみませんご馳走になって」

「いい匂いですわね。申し訳ありませんご馳走になって」


「いいよいいよ。お祝いだから」


会長の父親は人の良さそうな笑顔を小陰と寿に見せる。


「気にしないでいっぱい食べてくれよ。……なぁ…風陰くん?」


「…エ、エビチリい、いただきますっ!」


会長の父親に殺意剥き出しで睨まれながら食べるエビチリは…とても美味しかった。


(あ、これうんまっ。…まだ睨んでるよ…)


「…ゆっくり食べてな。今からデザート作るよ」


「えっ、やったー!ありがとございます!」



嬉しそうにする小陰を見て会長と会長の父親はニコッと笑顔を見せ。会長の父親は俺だけに聞こえる声でボソボソっと「毒が入ってるかもな」っと呟いて厨房へと戻って行く。その呟きを聞いたエビチリを口に運んでいる俺の手がピタッと止まった。


「しかし…風陰にこんな可愛くていい子な妹がいたとはな。…本当に二人は兄妹なのか?」


「それ、よく言われます(笑)」


「そうだろうな(笑)」


「悪かったですねー。出来の悪い兄でー」


「あ、おにーちゃんが拗ねた(笑)」


「お二人とも。私の夫を悪く言うのは止めて下さりますか?いくら将来、義理の妹になるとはいえ許しませんわよ小陰さん」


「…おにーちゃん。この人は何を言っているの?」


「……気にしたら負けだぞ妹よ」


厨房から常に殺気が飛んでくるが…一次審査通過のお祝いはその後も楽しく盛り上がり。最後に出てきた胡麻団子を恐る恐る食べた。


(…美味い)



次の日の放課後。

「鳳ちゃん部室行こう」


「は、はい。い、行きましょう」


帰りのホームルームが終わると窓の外を眺めている俺の耳に久瀬さんと鳳の会話が入ってきた。


「…あ、あいつは…」


「いいのよあんなヤツなんか。行きましょ」


「は、はいっ」


久瀬さんと鳳は教室を出て行き。しばらく時間を置いてから俺も教室を出て行く。


あの日以来、言葉数は少ないが鳳とはたまに話しはする。しかし、久瀬さんとは一言も言葉を交わす事がなかった。廊下でたまにすれ違う事もあるが。久瀬さんは俺が存在していないかのように目を合わせる事はない。


怒っているようには見えないし嫌われているようにも感じない。


「じゃあ、なんなのか?」と問われたら…「ただ、距離を感じる」としか言いようがない。


まだ知り合っていない時の俺と久瀬さんの距離も遠い距離があったと思うが。なんとなく…今の俺と久瀬さんの距離の方が遠いと思う。


ついこの間まで遠い存在だと。自分とは一生縁のない人だと思っていた人が自分の憧れのHibari先生だと知って。すぐ手が届く距離にまでいたのだけれど。


今では久瀬さんとHibari先生の背中は俺には見る事も出来ないし見える事もない。


そんな状況を俺みたいなモブぼっちがどうにかしようとしてもどうする事も出来ないし、どうすればいいかも分からない。


何故なら俺は主人公でもヒーローでもなく…モブだから。


自室のベッドで横になっているとLINEの通知音が鳴る。スマホを手に取りLINEを開くと東堂会長からだった。


『最終審査の発表日が決まったぞ』


『本当ですか!?いつですか!?』


『卒業式の前日だ』


「………マジか」



卒業式前日。放課後の生徒会室。

古林実來(ふるばやしみくる)に声をかける操。


「悪いな。生徒会室を貸してもらって」


「会長の頼みは断れませんよ」


「もう鈴蘭の生徒会長はお前だろ古林」


「そうでしたね(笑)」


生徒会室は和やかな雰囲気に包まれていた。


「それでは私はこれで」


「あぁ」


古林現生徒会長は生徒会室を出て行く。それから数分後。生徒会室のドアを誰かがノックした。


「入れ」


ドアが開いて久瀬さんと鳳が姿を現す。


「とうとうこの日が来たな。久瀬美空」


「そうね。…覚悟はいい?」


「あぁ」


腕組みしながら東堂操と久瀬美空は対峙する。


「そ、蒼汰」


「ん?どうした鳳?」


「ど、どうだ?…じ、自信はあるか?」


「……あるよ」



四人は会長机に集まって操がノートパソコンを開いて最終結果発表のページを開く。


四人は大きく深呼吸をした。

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