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ピンクのガーベラの花言葉9

嵐の前触れのように生徒会室は静寂に包まれていた。


「私の何を知ってるって?」


久瀬さんは東堂会長の「良く知っている」という言葉に反応して東堂会長に言葉を投げた。


「…久瀬美空。成績優秀、スポーツ万能。男子生徒から絶大な人気を誇る『孤高の女王』。鈴蘭高校で貴様を知らん奴はいない程に有名だ。…だがしかし…その本当の正体は…」


東堂会長の言葉に俺と鳳は唾を飲み込む。


(まさか会長…まさか…)


東堂会長の次の言葉に久瀬さんは身構えた。


「…見せかけだけの女王だ」


(………ん?は?なに?何だって?)


一番最悪な展開にならなかった事に安堵した三人だが。予測の遥か上空を通過して行った操の言葉を追いかけるのに必死になる三人だった。


「み、見せかけだけの女王?」

「あぁ。そうだ」

「それは…どういう意味?」


東堂会長は少し鼻で笑うと口を開いた。


「貴様が成績優秀なのは見せかけだけというのはもう分かっている。どうやってるかは知らないが、いくらテストでいい点を取ったとしてもな…」


東堂会長は会長机の引き出しに向かい、何かを手に持って戻ってきた。


「誤魔化しが効かないこの作文や感想文を今まで一度も書いた事がない事実から見通せば、貴様が見せかけだけの天賦の才の持ち主だという事くらい直ぐに分かる。…それなのに『どうして私を選ばないの?』だと?…笑わせるな。風陰がお前を選ぶ訳がないだろこのペテン師めっ」


東堂会長が差し出した物は。今まで久瀬さんが何も書かずに提出してきた作文や感想文といった文を扱う物ばかりだった。


その事は少し前に俺も気になって一度だけ聞いた事がある。それは文芸部が発足し始めた頃の事……


「そういえば久瀬さんって文を扱う宿題とかテストとか全て満点なんじゃないんですか?なんてったってプロの作家なんですから(笑)」


「そういうの書かないようにしてるの私」


「えっ?どうしてです?」


「まぁ何て言うか…文脈でHibariってバレないようにする為。お兄ちゃんにも描くなって言われてるしね。…どう気をつけてもそういう文を描いてると…Hibariが出ちゃうのよね(笑)」


「なるほど。それは…描けませんね(笑)」


と。そういう会話を俺と久瀬さんはした事があった。


(しかし…良かったぁぁ)


東堂会長が久瀬さんの本当の正体を知っていると言った時は正直…心臓が飛び出て三回まわって「ハートっ!」と叫びそうになるくらいドキッとした。


その気持ちは鳳も同じだったようで。ソファーに深くもたれながら充電切れのアンドロイドの様に鳳はなっていた。


「どうした?何も言葉が出ないのか?」

「……ふふっ…ハハハッ(笑)」


東堂会長の問に今度は久瀬さんが大笑いした。


「何を笑っている貴様。とうとう頭もイカれたか?」


東堂会長の次の問に笑いを堪えながら久瀬さん答える。


「違いますよ(笑)…あーぁ…身構えて損した。…東堂?会長でしたよね?それで私を知ってるとよく言えましたね」


「なにぃ?」


「蒼汰が何でアナタを選んだかは分からないけど。これだけはハッキリ言うわ。…本当の蒼汰は私しか選ばない。会長を選んだのは色々な偶然が重なって起きた一時的な事にすぎないわね」


「ほぉ。…そこまで言うなら勝負するか?」

「か、会長。それはあまりオススメで」

「ええいいわよ」


「よしっ。それなら次のコンテストで勝負だ」


「構わないわよ。…ただし、私は描かないわ。この、石川鳳が描く作品にアドバイスをするだけにしといてあげるわ」


久瀬さんは鳳の手を引いて立ち上がらせた。


「何だ?負けた時の言い訳作りか?」


「違うわ。これはハンデよ」


「ハンデだと?」 


「ええそうよ」


「…ふんっ。いいだろ。後で後悔しても遅いぞ?」


「後悔なんかしないわ。…ただの勝負じゃつまらないから賭けない?」


「…いいだろぉ。私達が負けたら…文芸部と弓道部の願いを私の叶えてやれる範囲で何でも叶えてやろう」


「分かったわ。…私達が負けた場合は…文芸部と弓道部は廃部にする。で、どうかしら?」


「…本当にそれでいいのか?」


「えぇ」


「…よし。いいだろ」


東堂会長は会長机の上に置いてあった白紙の紙を二枚持ってきて一枚を久瀬さんに渡すとソファーに座って紙にさっき約束した事を書き始め。久瀬さんも座って同じように約束した事を書き始める。


「…よしっ。これで互いに言い逃れできないな」

「えぇ。そうね」


久瀬さんと東堂会長は互いに不適な笑みを見せ合う。そして久瀬さんとは鳳と一緒に出入り口に向かい、ドアを少し開けると久瀬さんは振り返り俺を見た。


「蒼汰。部に戻ってきたら……たっっっぷりお話しがあるからそのつもりで」


そう言うと久瀬さんと鳳は生徒会室を出て行った。


「ふんっ。もうすでに勝っている様な口ぶりだな久瀬は…ん?どうした風陰?」


魂が抜けて真っ白に燃え尽きている俺に東堂会長が声をかける。


「心配するな。私がついているんだ負けるはずないだろ」


(…ま、負けてるんです会長…俺達はすでに負けているんです…)


頭がおかしくなりすぎて逆に笑えてきた蒼汰は「ハハっ」と笑い出した。そんな俺を東堂会長は不思議そうに首を傾げて見ていた。


「…ところで風陰。コイツは何でここに残っている?」 


東堂会長は寿を指差す。


「私は蒼汰様の妻ですからお傍にいるのは当然ですわ」


「…風陰」


「えっと…寿は…色々と使えそうなのでこっちにいてもらいましょう」


「はいっ!私はいつでも蒼汰様のお傍にいますわ」


そう言うと寿は蒼汰に抱きつく。


「…貴様も色々と大変そうだな風陰」


「ははっ…」


「まぁいいだろ。お前達は今日から臨時で生徒会に入ってもらうとしよう」


「えっ!?」


「心配するな。会長の私が決めた事は生徒会内では絶対だからな。…よしっ!さっそく今日の放課後から始めるぞ風陰。どんどん物語を描いていけ」


「は…はいっ!」


蒼汰は色々とたくさん考える事や解決する事が多くあったが。こうなってしまった以上コンテストに向けて全力で創作をする事に覚悟を決めた。


その頃。部室に向かう二人は。

「く、久瀬さん…お、怒ってますか?」


少し前を歩く美空に鳳は質問すると美空は立ち止まり振り返った。


「…ぜんぜん怒ってないわよ鳳ちゃん」


いつもの優しい声と笑顔でそう返事した美空だったが。今まで側にいて感じてきた中で一番恐怖を感じる鳳。


(蒼汰……安らかにな)


何かを感じ取って辺りをキョロキョロと見渡す蒼汰だった。


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