ピンクのガーベラの花言葉8
生徒会室へと向かう蒼汰の後を怪しげな三人組が跡をつけていた。
「こちら探偵A。調査対象は廊下を左に曲がったわ。どーぞ」
「こちら探偵B。了解ですわ。跡を追いますわ。どーぞ」
「こ、こちら…た、探偵C…りょ、了解」
探偵風の格好をした三人組はトランシーバーを片手に蒼汰を追って廊下を左に曲がる。
少し前の部室にて。
「跡をつけるとなると…探偵ですわね」
そう言うと寿は壁に隠された隠しスイッチを押す。
「おっ、お前…ま、まさか…ま、また」
壁から隠し部屋が出てきて扉を開けると中には数え切れないくらいの様々な衣装が並んでいた。
「えっ!?なにその扉!?そんな機能あったの!?」
驚く美空を無視して寿は部屋の中に入って衣装を探し出す。
(そういえば…外から見たら変な形してるなと思ってたのよねそこの場所…)
「これは久瀬さんのですわ」
寿から美空は探偵風の衣装を渡された。
「は?こ、こんなの着るわけないじゃない!ねっ!?鳳ちゃん!?」
美空が鳳を見ると鳳はすでに着替えていた。
「ひ、鳳ちゃん!?」
「く、久瀬さん。あ、諦めてき、着た方が…いいですよ…じゃ、じゃないと……」
恐れながら寿を見る鳳に寿は素敵な笑みを見せ。その笑顔を見た美空の背筋がゾクッとする。
「…さぁ。早く着替えてストー…尾行開始ですわっ!」
((今『ストーキング』って言おうとしたな))
そんなこんなで。最初は乗り気ではなかった美空だったが。探偵風の衣装の可愛さや、体験した事のない楽しさから今では寿以上に今の状況を楽しんでいた。
(久瀬さん…楽しそうだな)
(こうすればこの方をコントロール出来るのね。…メモメモ)
「ストップっ!…調査対象が止まったわ」
探偵Aの言葉に探偵B・Cは急ストップし。廊下の曲がり角まで引き返して顔だけ覗かせて調査対象を監視する。
「…中に入りましたわ」
「あ、あそこは…た、確か…」
調査対象が中に入った事を確認すると三人は調査対象が入っていった部屋の前に急いだ。
「や、やはり。こ、ここは…せ、生徒会室」
調査対象が何故、生徒会室に入っていったのか推理一つも出来ないヘッポコ探偵三人組は同時に首を傾げる。
「…何か中から聞こえるわね」
生徒会室の中から声が微かに聞こえてきたので。三人はドアに耳をあてて声に神経を集中させる。
「どうして…私じゃダメなの?」
「…違う…君がダメなんじゃない。…俺がダメなんだ…」
「アナタが?」
「俺は君が好きだ。…でも…それは…君の…」
「それ以上は聞きたくないっ!…お願い…抱きしめて。そして…いつものように優しくキスしてよ…」
会話はそこで聞こえなくなり。片方が駆け寄る足音が今度は聞こえてきて。それに焦った三人は同時に生徒会室の扉を開け同時に叫んだ。
「何してるの蒼汰っ!」
「や、やめろ蒼汰っ!」
「ぶち◯すぞ蒼汰ぁぁ!!!」
「うわっ!?なに!?…久瀬さん?鳳?寿?」
勢いよく扉を開けた先には…手に紙を持って向かい合っている蒼汰と操がいて。蒼汰はいきなり現れた探偵風の格好をした三人に驚いた。
「……なにその格好?」
「お前らノックもせずにいきなりなんだ!それと…なんだその格好は!?制服はどうした制服は?」
今起きている状況を理解できない蒼汰と操。そして、探偵風の格好をしたヘッポコ三人組も自分達が目にしている状況を推理し理解する事が出来なかった。
五人は状況を整理する為。生徒会室にあるソファーに蒼汰と操、テーブルを挟んで美空、鳳、寿の位置で座り状況の説明と整理を始めた。
「えっと…まず…何してるのそんな格好で?」
「いや…その…何か…最近、蒼汰の様子がおかしくて…尾行を…」
今更ながら自分の格好が恥ずかしくなってきた美空が恥ずかしそうにそう答える。
「はぁー…風陰。お前の部にはバカしかいないのか?」
「なっ!?バ、バカって私達のこと言ってる!?」
「お前達以外に誰がいるんだ?」
「くっ…ムカつくわねこの人っ!」
「そんな事はどうでもいいですわっ!!」
寿はそう叫ぶと操を指差す。
「アナタは蒼汰様とどのようなご関係なのですか!?」
「私と風陰か?それがお前に何の関係がある?」
「大ありですわっ!」
「どう関係する?」
「私は蒼汰様の妻です!これは言わば『浮気』ですわっ!」
「………風陰。コイツは頭がおかしいのか?」
「…はい…」
「そ、そんな…蒼汰様…酷いですわ…」
両手で顔を覆い泣き出す寿を無視して今度は鳳が口を開く。
「か、会長こそ…バ、バカです」
「なにぃ?」
「ひっ…だ、だって…さっき、こ、このバカと…」
「俺?」
「キ、キス…し、しようとし、してた。…が、学校…なのに」
そう鳳が言うと三人は蒼汰を睨みつける。
「えっ!?なに!?何で俺、睨まれてるの!?」
「キスしようとしてたじゃないさっき!」
「そ、そうだ!」
「これは浮気ですわ蒼汰様っ!…ご覚悟を」
「な、何をする気だ寿!?」
「「落ち着け柳生ー!」」
ポケットから何か取り出して蒼汰に襲いかかろうとしている寿を美空と鳳が必死に抑える。
騒がしい生徒会室のソファーで腕組みと足組みをしている操が大きなため息を吐く。
「はぁぁ〜……もういい風陰。私達の関係を話せ」
「いいんですか?」
「あぁ」
蒼汰と操の会話に騒がしかった三人は大人しくなる。
「…えっと…会長と俺は…一緒に作品を創ってる…言わば『相棒』みたいな関係!…で、合ってますよね?」
「まぁ…間違ってはないな」
三人は蒼汰が何を言っているのか理解出来ない顔をしていて。それを見兼ねた操が分かりやすく説明し直す。
「つまりだな。風陰が創った作品を私が読んで感想やアドバイスを言う。そういう関係だ」
何処かで身覚えのある関係性に美空の胸はアツくなり段々と苦しくなってくる感覚がしてきた。
「でも、よかったんですか?生徒一人をひいきしていると思われないように内緒にしてたのに」
「構わん。コイツらを大人しくさせるにはそれしかなかったからな」
二人だけの秘密を共有していた会話に。美空の胸の苦しさはピークを越えて怒りへと変化した。
「蒼汰…何で私じゃなくて…この人を選んだの…」
「えっ…だって…」
(だって久瀬さん。一緒に作れないって言ってたから…)
美空はテーブルを強く叩いて立ち上がった。
「どうして私じゃないの!?何で私を選ばないの!?私じゃ役に立たないと思ってるの!?私は相棒には相応しくないっていうの!?」
「く、久瀬さん!?」
「フハハハっ!」
操の大きな笑い声に美空の怒りは更に増していく。
「…何よアンタ。なに笑ってるの」
「久瀬美空…私はお前の事を良く知ってるぞ」
操は腕組みしながら立ち上がり美空と操は対峙する。
「…私の事を知ってる?」
「あぁ。貴様は有名だからな」
美空は操を睨見つけ。操は不適な笑みで美空を見る。
操が何を言い出すか予測がつかない美空の正体を知っている蒼汰と鳳が焦りだす中…操が口を開く。
(会長…まさか!?…知ってたのか!?)
空に雨雲がかかり。不穏な空気が漂い始める。




