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ピンクのガーベラの花言葉2

生徒会長が訪れている放課後の部室の空気は重かった。


「…お前達…部活動報告書はどうした!?」


そう怒鳴る東堂生徒会長は頭を抱えた。


「はぁ~…来週までに部活動報告書の提出が無ければ文芸部と弓道部は廃部だからなっ!」


そう言うと東堂生徒会長は激しく部室のドアを閉めて出て行く。


俺達は知らなかった……鈴蘭高校の部活動は毎月毎月『部活動報告書』という部活動をちゃんと行っていますという証明が必要だったことを。


「はぁぁ…知らなかったわ…てか、この前説明あった?」


(あっ…久瀬さんが責任転換をはじめた…)


「今から部活動報告書を出すとなると…文芸部はムリがありますわね」


(…まぁ…できない事も…ないのだけれどね)


久瀬さんがHibari先生だということを久瀬さんは寿に教えようとはしたがらなかった。…その理由は話してくれないが…何となく想像はつく。


「きゅ…弓道部か…ぶ、文芸部…ど、どちらか一つで、こ、今回は、い、いいと…言ってたな。…か、会長」


(あっ…そんなこと言ってたんだ…)


「それなら今回は弓道部で決まりですわね」

「え?…何かいい案でもあるの?」

「今週末に他校の高校と模擬戦を行うのはどうでしょう?」

「模擬戦?あぁ練習試合のこと?」

「まぁ…そうとも言いますが…ふっ」


「…あんたなに笑ってるの?」


部室の空気が一気に悪くなる。


「…まぁいいわ。早速練習しましょ」


俺らは弓道場に向かい。俺以外の三人は袴に着替えて練習を始めた。…俺は戦力外通告を受けたのでマネージャー的な事をやるように久瀬さんから言われたので…とりあえず…練習を見てよう。


最初お手本として寿が矢を放ってくれた。矢は的の真ん中を射抜いて、久瀬さんと鳳が「お〜」と声をもらしてパチパチと拍手をした。


「何か…的に当てるコツとかないの?」


「コツですか?そうですねぇ…私は的を久瀬さんと…何でもないです」


「あんた…今…何を言いかけた?」


練習初日から解散の危機が迫る弓道部だった。


久瀬さんは流石と言うか何と言うか…練習すればするほど腕は上達していった。


鳳は…頑張ってはいるのだが…まだ的にすら矢が届いてない状態で焦りを見せる鳳。


「お〜い。鳳〜。肩の力抜けよ〜」 


「だ、黙ってろ!だ、駄犬!」


(何だよ何だよ…せっかくアドバイスしてやってるのにー)


それから鳳は一本も的に当たらないまま模擬戦当日を迎える。



何処で情報を手に入れたのか当日はギャラリーが大勢きていて。俺と鳳はその人の多さにガクガクと震えていた。


「鳳ちゃん?大丈夫?」


「だぁ、だ、だぁ…だぁいじょうぶだぁー」


(変なおじさんみたいなになってるわね)


「何で模擬戦に出ない蒼汰がガクガクしてるの?」


「だ、だ、だ、だってぇ…こ、こんなに…人が…」


「はぁ~…」


立ち上がる事すら出来ない俺と鳳を久瀬さんは勇気づけてくれる。


「大丈夫だから。ねぇ?…私を信じて?」


そう言うと久瀬さんは手を差し出し。差し出されたその手を掴んで勇気を出して立ち上がる。


「ね?大丈夫だったでしょ?」


「あ、ありがとう、ご、ございます。く、久瀬さん」


「さぁ模擬戦始まるわよ」


久瀬さんと鳳は手を繋いで歩いて行く。俺は二人の背中をじっと座って見ていた。


「……久瀬さん……俺は?」


定刻通りに模擬戦は開始され。ギャラリーが久瀬さんと寿の袴姿に騒ぎ出す。


「静かにしないかっ!」 


(その声は…)


声のする方を見ると。東堂操が生徒会役員を引き連れて模擬戦を観戦しに来ていた。


袴姿ではなく制服姿の俺を見て東堂が鼻で笑ったのを遠くからでも俺にはハッキリ分かった。


(…まぁしょうがないよな)


模擬戦は意外と白熱した戦いになっていく。


寿は相変わらず正確な矢を的に当て続ける。久瀬さんは本番の空気にのまれて練習通りの射的が出来ずにいた。鳳は…的にすら矢が届いてないけど頑張ってる姿がギャラリーの人達に伝わり声援が届くようになってきた。


一回目は相手高校が鈴蘭より点数が高くて勝利したが。二回目は久瀬さんが調子を取り戻してきて、鳳の分まで点数をカバーして何とか勝利する事が出来た。


少しの休憩を挟んで最後の勝負が行われようとしていた休憩時間に事件は起きる。


休憩時間まで矢を放つ練習をしていた鳳が疲労と緊張の我慢の限界を迎えてしまい…倒れてしまった。


「鳳ちゃん!?」


久瀬さんがすぐに鳳に駆け寄る。


「ご、ご、ごめんなさい…げ、限界が…き、きました…」


「大丈夫よ鳳ちゃん…よく頑張ってくれたわここまで」


「で、でも…わ、私が…で、出ないと…」


そう言って無理矢理に立ち上がろうとする鳳。その目からは悔し涙が溢れていた。


「ダメよっ!鳳ちゃん!無理に立ち上がろうしたら!」


「そうですわよ石川さん」


スポーツドリンクを持ってきた寿も鳳に駆け寄る。


「石川さんはよく頑張りましたわ。今ここで棄権しても誰も責めたりしませんよ」


「だ、だけど…」


立ち上がろうとするけど立ち上がれない悔しさから鳳は右手の拳を強く握り締めた。


「…柳生…この模擬戦…」

「えぇ…きけ」

「待って下さい。…まだ部員は一人いますよ」


「蒼汰…あんたにはムリよ…」

「…そうですわ蒼汰様。ここは潔く棄権するのが…」


俺は鳳に近づき片膝立ちして鳳の目を真っ直ぐ見た。


「後は俺に任せろ。俺を見てろ鳳」


三回目の模擬戦が始まり。俺が袴姿で出てくるとギャラリーから「誰?」と声が聞こえてきた。


「ほぉ…あんな顔も出来るんだな…アイツ…」 


そう東堂が呟くと模擬戦はスタートした。


寿は全部の矢を的に当てたが…真ん中を射抜いたのは五本中二本だけだった。


久瀬さんは力が入り過ぎたのか五本中一本しか的に当てる事しか出来なかった。


「蒼汰…頼むわよ」


すれ違う時に久瀬さんは俺にそう言った。


大きく息を吸って目を閉じて集中の線が一直線になった時…俺は矢を弾いて放った。


矢は真っ直ぐ的に向かって進み…的の真ん中を射抜いた。


ギャラリーが騒ぐ中。俺は聴覚遮断して矢を放ち続ける。


最後の矢が的の真ん中を射抜くと…鈴蘭高校弓道部の勝利が確定した。


(ふぅー…良かった…)


喜びを爆発させている久瀬さんと寿が俺に駆け寄り抱きついてきた。それを見たギャラリーの男達からブーイングが俺に向かって飛んでくる。


殺意が飛び交う中で蒼汰は鳳の姿を探し。鳳の姿を見つけると…満面の笑みでピースをした。


その蒼汰の満面の笑みを目にした鳳は。胸が今まで感じた事のない痛みを感じる。


蒼汰の頬に寿がキスをしようとするのを美空が必死に止めに入る。


ブーイングと歓声は…まだ鳴り止まない。

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