ピンクのガーベラの花言葉
風呂上がりにリビングのソファーでゴロゴロしていると。隣のおばさんと玄関で話しをしていた小陰が体を震わせながらリビングに入ってきた。
「さっ…さむいよぉ…」
そんな小陰と目が合った。
「いいこと思いついたぁ〜」
そう言って小陰はソファーに寝ている俺の上に飛び乗ってきた。
「うわっ!…冷たっ!」
小陰の体は冬風にさらされて凄く冷たくなっていた。
「あぁ〜…おにーちゃん…暖かい。生き返るぅ〜」
俺の上に乗ってそう言う小陰。
「バカッ…やめろよな」
そう口では言っている俺だったが…本心はというと…
(かっ…かわいぃぃーー!!)
何なんだこの可愛すぎる生き物は…本当に俺の妹なのか?
「はぁ~…このまま寝ちゃいたい…」
そう言ってウトウトし始める小陰の頭を俺は優しく撫でる。
…こんな可愛すぎる妹も。いつかはどこの馬の骨か分からないクソったれのクソ野郎のクソボケと結婚して。寒い冬はこうやって一緒に寝るのだろうなぁ…。
いつか現れるクソったれのクソ野郎のクソボケにこれだけは言わせてくれ……「小陰を泣かせたら◯す」
「小陰…その男で本当にいいのか?」
「…いきなりどうしたの?なに?」
体が暖まった小陰は残りの家事を済ませる為に俺から離れてキッチンへと向かう。
体温を奪われてソファーに取り残された俺は天井を見ながら冬休みに起きた色んな事を思い出していた。
久瀬さんとデートに出かけたり。小陰と誕生日とクリスマスを一緒に過ごしたり。初詣に行ったり…俺は行ってないけど。(小陰の着物姿はゲットした)
何か…今までの人生で一番いい冬休みだったなぁ〜。
フッと目にカレンダーが入り。赤い丸がしてあるのに気付いた俺は立ち上がってカレンダーの前に立つ。
「小陰。このカレンダーの赤い丸ってなに?」
「学校が始まる日よ」
「へぇ~…ん?あれ?この日付…明日からじゃない?」
「そうだよ。明日から学校始まるよ」
小陰のその言葉を聞いて俺はその場に倒れ込む。
「えっ!?どうしたのおにーちゃん!?」
皿洗いを中断して俺に駆け寄る小陰。
「どうしたの?」
「……学校…やだよぉ〜…」
泣きそうになっている俺の頭を叩いて小陰はキッチンへと戻って行く。
朝。自室にて。
「おにーちゃん!遅刻するよっ!」
俺の部屋のドアを開けて小陰が叫ぶ。
「早く起きてっ!」
小陰が俺を揺するが体が重くて動けなかった。
「いい加減にしないと怒るよっ!おにー…」
俺の顔を見て小陰は慌てだす。
「どうしたのおにーちゃん!?」
「…分からんけど…か、体が動かない」
どうやら俺は…風邪を引いたみたいだ。
直ぐに小陰が軽く食べれる物と薬を持ってきてくれて。俺はちょっとだけ食べて薬を飲んで横になった。
「大丈夫?学校には連絡しといたから」
「ありがとう…小陰」
「ゆっくり休んでてね。じゃ、いってきまーす」
「おう…いってらっしゃーい…」
玄関が閉まる音と鍵が閉まる音が聞こえてきて数分後……俺はベッドから飛び起きた。
「やっほぉーいっ!何か知らんが学校サボれたぞぉー!」
ベッドの上ではしゃぐが、体が思うように動いてくれなくて本当に風邪を引いたんだと実感した俺は静かにベッドに横になって布団を深く被る。
(あぁ…喉いてぇ…体がおめぇ…体があちぃ…)
俺は自然と夢の中へ入っていき…LINEの通知音で目が覚めた。
『蒼汰。大丈夫!?』
送り主は久瀬さんだった。
『大丈夫ですよ。寝てれば治ります』
『そう…ムリしないようねっ!』
『ありがとうございます』
スマホの時計を見ると昼休みの時間だった。
暫くするとまたLINEが来た。
『大丈夫ですか蒼汰様!?今、世界的に有名な医者を数人、蒼汰様の家に向かわせます!』
送り主は寿だった。
(……コイツとLINE交換してねーのに……)
俺は深く考えるのを止めて寿に返信する。
『やめてくれ』
『ですが…』
『そんな事したら一生口きかないぞ』
『…かしこまりました』
「ふぅー…」とひと息吐いて俺はまた夢の中に入り。今度は深い眠りだった。
おでこに何か冷たいモノが置かれたのをきっかけに目が覚めると俺の横に誰かがいた。
「小陰か…?」
寝ぼけている目が段々と正常に戻っていき。視界がハッキリすると鳳だということが分かった。
「あれ…鳳?」
「め、目が…さ、覚めたか」
「…どうしてここに鳳が?小陰は?」
「べ、別に…た、大した用事、じゃ、な、ないが…い、妹さんなら…か、買い物に…い、行ったぞ…」
「そうだったのかぁ…悪いな鳳。看病してもらって…」
「か、看病…じゃ…ない…ぬ、濡れた。た、タオルを…の、乗っけただ、だけだ」
「…それを…看病って…い…う…」
再び眠気に襲われた俺は最後まで言葉を発する事なく。また深い眠りへと入っていった。
夢の中に確かに居た俺だったが。何故か左手が凄く暖かくて安心して眠れたのを覚えている。そして…握ってくれていた手が凄く小さな手だった事も覚えていた。
次の日には俺の風邪はすっかり良くなり。朝からハイテンションでリビングに向かう。
「おっはよぉー小陰!おにーちゃん…完全復活だっ!」
「…あ、おはよぉ…おにーちゃん…」
「小陰!?どうしたその声!?」
「…おにーちゃんの風邪…移ったみたい…」
いつも天使のような声の小陰だったが。今の小陰の声はカスッカスのデスボイスみたいに聞こえる。
「バカたれっ!早く部屋で寝てろっ!」
小陰を部屋で寝かせて急いで小陰の学校に電話をした。そして軽く食べれる物と薬を小陰の部屋に運ぶ。
少しだけ食べ物を口にして薬を飲んだ小陰は苦しそうに寝始める。その寝息は苦しそうで見てられなかった。
俺はスマホをポケットから取り出してLINEを入れた。
『小陰が風邪を引いた。頼めるか?』
『かしこまりました。すぐ向かわせますわ』
数時間後。
「小陰ぁー。大丈夫か?」
「あっ…おにーちゃん…学校は?」
「世界的に有名な医者をつれて来たからもう安心だぞっ!」
「……え?」
「さっ!どーぞどーぞ」
蒼汰の後から医者らしき人がズラズラと小陰の部屋に入ってきた。
「なっ!?だ、誰!?この人達!?」
「ん?医者だけど?」
「……で……」
「…で?」
「出て行ってぇー!!!」
デスボイスで叫ぶ小陰の声が部屋中に響き渡る。
蒼汰がバカをしている時。部室に集まっていた美空、鳳、寿は部の存続の危機に直面していた。
風邪が治った小陰に俺はめちゃくちゃ怒られ。一週間は口をきいてくれなかった…………




