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イースターリリーの花言葉4

美空は蒼汰との待ち合わせ場所で腕時計を気にしながら待っていた。


「ねぇ今ヒマ?」

「…邪魔。どっか行って」


美空に声をかけた男が肩を落としながらその場を去って行く。


美空の周りには大人数の男達がソワソワしながら互いに牽制し合っていた。誰かを待つ美空の姿を見て男達は全員がこう思っていた。


(こんな美女と待ち合わせする男って…どんな奴だ!?)


「久瀬さ〜ん!」


遠くから蒼汰の声が耳に入ってきた美空は蒼汰の方を見ると手を振った。美空のもとに駆け寄って来る蒼汰を見て男達は心で叫んだ。


(えぇぇぇー!?本当に…こ、コイツかよ!?)


「すいませんっ!少し遅れましたか?」


「大丈夫。まだ5分前だから。…それじゃ行こうか?」

「はっ、はいっ!」


美空と蒼汰は歩き出し。周りにいた男達は驚きのあまり全員がフリーズして動けなかった。


なぜ美空は蒼汰をデートに誘ったのか。それは…蒼汰が誰かに奪われるとかの心配ではなく。ただ単に名前で呼び合っている蒼汰と鳳より自分と蒼汰の仲が…というより自分と蒼汰に距離がある気がしたからだ。


鳳に嫉妬したとかでは一切なく。ただ単に蒼汰との距離を縮めたかったからだ。


そんな真実を知るわけがない蒼汰は…突然の如く…超浮かれまくりだった。


(やっべー…何だろう…この圧倒的勝利感!)


それもそのはずだ。蒼汰の横を歩く美空の事を通り過ぎる人達の誰もが美空に見惚れていた。…そして隣を歩く蒼汰を見て通り過ぎる人達の誰もが二度見をしていた。


しかし。蒼汰が美空の横を堂々と歩けるのも持ってあと2〜3分というとこだろう。今は緊張というバフがかかっていて周りの視線を気にする事はないが…緊張という名のバフが解けるとモブぼっちが発動してしまう。


「そ…風陰。今日の予定は?」


「今日の予定は…まず映画を見に行きます」


「ちゃんと約束した通りにデートの予定立ててきたんだ」


「もちろんですっ!」


(……まぁ…小陰がほとんど決めたんだけどね。…黙っておこう)


美空と目が合うと美空はニコッと笑顔を見せ。その笑顔を見た蒼汰は緊張のバフが延長してかかり。映画館に着くまでそのバフが解ける事はなかった。


「何見るの?」

「今日はこれ見ましょうか」


蒼汰が選んだのはアニメやラノベ原作の映画ではなく。過去に流行ったドラマの劇場版だった。


「意外ね風陰。私、こっちを選ぶと絶対思ってた」


そう言って久瀬さんはラノベ原作の劇場版の映画を指差す。


(…ふっ。ふふっ…本当の本当はそれが見たいのだが…小陰に「それだけはダメ」ときつく釘を刺されたからな。今回は我慢だ蒼汰。)


ポップコーンと飲み物を買って入場して暫くすると上映は始まり。美空は直ぐに映画の中に吸い込まれていく。


(ふーん…こんな表情の仕方もあるんだ…)


映画を見つつもそういった事を考えながら「どうせ寝てるんだろうなぁ」と蒼汰に目をやると…意外とハマったらしく。普段はあまり見せない真面目な顔で映画を見ていた蒼汰。


そんな蒼汰の横顔を見て少しドキッとした美空。


「……ん?どうしたんですか久瀬さん?」


美空の視線に気付いた蒼汰は小声で美空に話しかける。


「なっ…何でもない…」


そう言うとスクリーンの方をプイッと見る美空を怒っていると感じた蒼汰はその後…映画どころではなかった…。


映画館から出ると美空は大きく背伸びをした。


「んんん~…何してるの?風陰?」


後を振り返ると緊張のバフが解けた蒼汰が柱から顔を少し出して青ざめた顔で周りをキョロキョロと見ていた。


「ひ…人が…多くないですか?」

「当たり前じゃない」


「ひと…人混み…こ、怖いよ〜…」


美空はモブぼっちを発動させている蒼汰を見て大きなため息をつく。


「はぁ~…そんなんでよくラノベとか買いに行けるわね?」


「そ、それは…それです」


また大きなため息をついた美空はため息の後。今度は「ふふっ」と笑って蒼汰に近づくと手を握って蒼汰を引っ張り出す。


「あっ!?久瀬さん!?」

「そんなとこにずっといる気?」

「そんなつもりは…無いですけど…でも…」

「大丈夫よ。ずっと私が隣にいるから。…ね?」


そう言って空色の目を輝かせながら久瀬さんは笑った。


久瀬さんの空色の目を見ると…何だか力と勇気が湧いてくるのが不思議だ。俺の手を握り笑顔を見せる久瀬さん。


(…久瀬美空…恐ろしい子っ…)


美空が蒼汰を引っ張り歩き出すと蒼汰も力強く地面を踏んで手を繋いだまま並んで歩き出す。


一方その頃。風陰家では。

(おにーちゃん。美空さんと上手くやってるかなぁ?)


「はいっ!上がり〜!また私の勝ち(笑)」


「ん?あっ!?また負けた〜…月、ババ抜き強くない?」


「あんま負けた事ないね(笑)」


小陰は月や他の友達を家に招いてトランプで遊んでいた。


(…何事もなく無事にデートが終わればいいなぁ…)


蒼汰の事が心配な兄想いな優しい小陰だった。


一方その頃。部室では。

………………鳳と寿の姿は部室になく……………


美空と蒼汰の少し後方で、黒いスーツにサングラスをした怪しげな二人組が美空と蒼汰を見ていた。


「や、柳生…こ、この、か、格好は…」

「しっ!…あの二人…手を繋いでますわね…」


双眼鏡で美空と蒼汰を見ているエージェントAがそう言うと。


「な、何だと…」


エージェントBも二人の姿を双眼鏡で確認する。


「そ、蒼汰のヤツ…く、久瀬さんに…あ、あんなに、く、くっついて…へ、変態、い、犬め」


「確かに…ちょっと近いですわねぇ…」


(それに…さっきまでオドオドしていた蒼汰様がどうして…)


「あっ…ど、何処かに…は、入っていく…ぞ」

「行きますわよエージェントB」

「そ、その呼名…や、やめろ」


怪しげな二人組は美空と蒼汰を追って走り出す。


それを見ていた周りの人達はこう思っていた…


(変な子達…関わりたくないな…)と。

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