イースターリリーの花言葉2
「そ、蒼汰…こ、これ読んで…く、くれ」
部室でラノベを読んでいる俺に鳳がノートを差し出してきた。
「おっ。出来たんだ」
ノートを受け取り読み始め、読み終えると鳳が前かがみで感想を求めてくる。
「ど、どうだっ…たか?」
「んん~…何かワンパターンだよね鳳のラノベ」
「そ…そうか…」
ノートを受け取ると鳳は落ち込んだ表情で椅子に座る。
「…あ、でも、ストリーは面白いと思ったよ」
「…そ、そうか…ま、また…た、頼む」
落ち込んだ表情のまま鳳はそう言葉を返してきた。
時計を見ると13時を少し過ぎた頃だったので。「今日はもう帰るか」と鳳に言うと黙ったまま頷いた。
帰り道。鳳と歩いていると俺はある事を急に思い出した。
「…あっ!?忘れてたっ!」
「な、何だ。きゅ、急に?」
「今日はテルテル先生の新刊の発売日だった!」
「お、お前。ひ、Hibari先生を、あ、愛してるとか、い、言いながら…ほ、他の作者の…さ、作品を、よ、読むなんて」
……確かに俺はHibari先生の作品をこの世で一番愛している。しかしだ。毎日毎日A5ランクの牛の肉を食っていたら、たまにはショートケーキを食べたくなるものだ。毎日毎日ニンニクマシマシの背脂たっぷりのラーメンを食べていると、たまには杏仁豆腐とかを食べたくなるものだ。
俺はその意見をそのまま鳳に伝えた。
「そ、それだと…く、久瀬さんが…う、牛やラ、ラーメンにな、なるじゃないか」
「そう言ったんだけど?」
「や、やはり。お、お前は、バ、バカだ」
何を言ってるんだこの合法ロリ高校生は。最高の褒め言葉ではないか。これが男女の価値観の違いってやつか。やれやれ。
俺はいつも行く本屋に向かったが、なぜか鳳も一緒についてきた。
「何で鳳も来るの?」
「い、いいだろ…べ、別に…」
(…まぁいいけどさ。誘拐犯とかに間違われないよね俺!?)
急に周りからの視線が気になってきた俺は周りをキョロキョロと見回しながら歩く。いつも行っている本屋が見えてきた時。少し遠くの方で小陰が見えたような気がした。
(…小陰?こんな所で何してるんだ?)
小陰を見た気がしただけだったが気になった俺は小陰を追いかけてみる事にした。
「ど、どうした?ほ、本屋は、そ、そこだぞ」
「今、小陰を見た気がしてさ」
「い、妹さんを?み、見間違え、じゃないか?」
「分かんない。確かめないと」
人混みが邪魔でなかなかすぐに近づく事はできなかったが。近づくにつれて小陰だと疑心が確信に変わっていった。
(やっぱり小陰じゃん)
「おーいっ。こな…」
人混みで近づくまで気づかなかったが……小陰は男と一緒に歩いていた。
(う、う、嘘だぁぁぁー!!!!)
「鳳!鳳!…アレは何!?どうゆう事!?」
俺が指差す先を見て鳳も驚いた表情を見せたが冷静に俺の問に答える。
「あ、あれは…い、妹さんの。か、彼氏に、ま、間違い…ない」
「……嘘だぁぁぁぁー!!!!!!」
蒼汰の叫び声は響き渡り。小陰の耳にも入ったようで「おにーちゃん?」と後を振り返って蒼汰の姿を探した。しかし、鳳が蒼汰をすぐに大きな看板の裏に蒼汰を隠してバレる事はなかった。
「あ、危なかったな。…い、いきなり、お、大声を、だ、出すなバカ」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…」
看板にもたれながら蒼汰は頭を抱えて「嘘だ」と繰り返していた。その様子を鳳はドン引きしながら見ていた。
「お、お前…だ、大丈夫か?」
「あれは…どうなんでしょうね?」
急に音もなく現れた寿に驚いた鳳。
「なっ!…い、いつから、い、いたんだ、お、お前」
鳳の問に寿は答えず。頭を抱えて「嘘だ」とまだ連呼している蒼汰の両手を掴む寿。
「蒼汰様。落ち着いて下さいませ」
「嘘だ嘘だ嘘だ…お…落ち着いていられるかー!何だアレはっ!あの男は小陰の彼氏なのかぁ!?」
「んん〜…それはあの殿方を調べてから判断されてはいかがでしょうか?」
「……調べられるのか?あの男の素性を?」
「お任せ下さい蒼汰様」
「寿…お前…本当はいいヤツだっんたんだなっ!」
蒼汰は寿の両手を掴んで叫んだ。
「蒼汰様が喜んでくれるなら私は何でも致しますわ。例え…犯罪にでも手を染めてでも」
そう言うと寿は蒼汰を見つめながら頬を赤らめた。そのやり取りを間近で見ていた鳳は。
(……このバカとバカを一緒にしてはダメだ)
そう心の中で思って二人を呆れた顔で見ていた。
数時間後。部室にて。
真っ暗な部屋でテーブルに両肘をついて顔の前で両手を組んだ蒼汰が口を開く。
「では…調査報告を始めたまえ寿くん」
「はいっ、長官。まずはコレをご覧ください」
それっぽい服に着替えた蒼汰と寿。それと無理矢理それっぽい服に着替えさせられた呆れた顔の鳳が寿の調査報告を聞く。
寿が指し棒でスクリーンを指すとスクリーンにはさっき見た男の写真が映し出され蒼汰は両手を強く握りしめた。
「コイツだ…コイツは一体何者なんだ!?」
「彼の名前は春風来斗長官の妹様と同じ三日月中学に通う中学三年生です」
「同じ中学!?…やはりコイツは…」
「長官。まだ断言するには早いかと」
「…すまない。取り乱した。…続けてくれ」
「はっ。この春風来斗ですが…成績優秀、スポーツ万能、女子生徒からの人気が高く『一度は必ず春風来斗に三日月中の女子は恋をする』といった異名も持っております」
「チっ…クソっ!ますます気に入らん奴だ…」
「教師からの信頼も非常に高く。まさに…非の打ち所がない少年です」
「もういいっ!コイツのステータスはだいたい分かったっ!…本題に入りたまえ寿くん」
「はいっ長官。こちらの写真をご覧ください」
「こ…これは!?」
スクリーンにはさっき街中で見た二人の写真で。パッと見では恋人のように笑い合う二人に蒼汰は激昂した。
「やはりこの二人はっ!!!」
蒼汰はテーブルを強く叩く。
「長官。よくここをご覧ください」
「ん?どこだ?…こ、これは!?」
「そうです。春風来斗は車道側を歩いていますが…小陰さんの鞄は春風来斗側の肩に下げられています。普通、恋人と歩く時は少しでも距離を縮めたいと鞄や荷物は異性の反対側に持つものです」
「……ということは……」
「小陰さんと春風来斗の関係は……限りなく白でしょう」
寿の言葉に安堵した蒼汰は大きく息を吐いてリラックスした表情を見せた。
「ふぅー…この短時間でよくここまで調べたな寿くん。…その写真は私が預かるとしよう。…男の方は切り取ってな」
「はっ!」
寿が敬礼すると蒼汰もゆっくり寿に敬礼する。
その二人のやり取りを一部始終、呆れた表情で見ていた鳳は。
「だ、ダメだ……こ、こいつらは…ほ、本当の…ほ、本物の…しょ、正真正銘の………バカだ」
その時。部室のドアが突然開いた。
「ん!?誰だ!?敵襲かっ!?」
部屋の電気がつくと。そこには美空と小陰と例のあの少年が立っていた。




