極楽鳥花の花言葉5
美空は生徒会室のドアを開ける。
「失礼しまーす!」
窓の外を腕組みしながら外を眺めている生徒が美空の声に反応して振り返った。
「何だ?生徒会に何の用だ?」
「部活動の申請書を持ってきました」
「部活動の申請書?」
美空はその生徒に申請書を渡す。手渡された生徒は申請書に目を通すとこう言った。
「…この申請書は受理できんな」
「えっ…何で?」
「我が鈴蘭高校の規定では。部として活動するには部員が最低でも四人と顧問が一人必要になる。今のお前達ではその規定に達していない」
孤高の女王の久瀬美空に堂々たる態度でそう言い放つ彼女の名前は東堂操。鈴蘭高校の生徒会長だ。
「あと部員を一人と顧問を一人見つけてから…出直して…」
東堂操は美空と鳳の後ろにコソコソ隠れている蒼汰の姿を見つけた。
「き、貴様ぁ!性懲りもなくまた来たのかっ!」
東堂操に蒼汰はビクつき。美空と鳳の頭上には「?」が出た。
「風陰、この人と知り合い?」
「いやっ…あの…その…何と言いますか…」
「コイツは私の着替えを覗いた…変態野郎だっ!」
顔を紅く染め。東堂操は胸を隠す素振りをして、蒼汰を睨みつけ。蒼汰はハッキリと言われた事に焦る。
「あ、あれは事故みたいなもんで!悪気があったわけ…じゃ…」
蒼汰は弁明しようとしたが。キリッとしたクールな見た目とは反対なピンクの下着を付けていた恥じらう東堂操の姿を思い出した蒼汰。
(…以外とピンク色とか好きなのかこの人?)
「き、貴様!私の下着姿を思い出しているな!?」
「はっ!?いや、ちが、違いますよ!」
再び慌てふためく蒼汰。美空と鳳に助けを求めようとしたが、二人は蒼汰をゴミを見る様な目で見ていた。
「久瀬さん?…石川さん?…」
「風陰、さいってー」
「く、クズがっ。し、死ねっ」
「ち、違うんだ…あれは事故なんだ…」
美空と鳳は蒼汰から距離をとり。蒼汰は今にも泣き出しそうな顔で肩を落とす。そんな三人に向かって東堂操は。
「と、とにかく。部活をしたいならあと部員を一人と顧問を連れてくるんだな。…あと貴様っ!」
東堂操は蒼汰を指差す。
「貴様は二度と生徒会室に来るな!それか、この学校から出ていけ!」
「だから…あれは事故なんだって…」
その場に膝から崩れ落ちた蒼汰。その目から一粒の涙が零れ落ちた…
生徒会室を追い出された美空と鳳はこれからどうするか話合いを行いながら廊下を歩いていた。
「ん〜。もう一人どうしよう鳳ちゃん?」
「そ、そう…ですね。…ぶ、部員ぼ、募集の…ち、チラシを貼る…と、とか、どうでしょう?」
「あ…あのぉー…」
「それいいね!さっそく今から私の家で作らない?」
「い、いいですね。そ、その…わ、私なんかが…久瀬さんの…い、家に、お、おじゃましても?」
「あ、あの〜…」
「もちろんよ!鳳ちゃんは私の友達なんだから!」
「あ、ありがとう、ご、ございます」
「あのぉ…」
美空と鳳は立ち止まる。
「わ、私は…何を…すれば…」
「…鳳ちゃん。何か聞こえる?」
「だ、駄犬のこ、声が。し、しますね」
「そう?それは変態の声じゃない?」
「そ、そうですね。へ、変態だ、駄犬の声、で、ですね」
「…無視して行きましょか」
「は、はい」
二人は蒼汰に目をやる事もせずスタスタと歩き出し。蒼汰は離れて行く二人の背中を泣きながら見つめ。その場に膝から崩れ落ちて両手を床に着いた。
「さ…最悪だぁ…」
美空からの連絡がないか確認するがLINEは入ってなく。大きなため息をついてポケットにスマホをしまう蒼汰。
「はぁぁぁ〜…連絡…くるわけないかー」
俺はどうしたら久瀬さん(あと一匹)に許してもらえる(そもそも俺は悪くない)か考えながら自宅に向かって歩いていた。
「どうしたら許してくれるかな久瀬さん……もう一匹はどうでもいいが」
悩みに悩んだ末に俺は答えを導きだす。
「……全てを忘れよう」
俺が出した結論は…現実逃避だった。そして、俺は家に向かって走り出す。
(全てを忘れて俺のマイシスターにしてマイエンジェルの小陰に癒してもらおう!そして朝…切腹をしよう)
玄関を開けて急いでリビングに向かった蒼汰。
「ただいま小陰!さっそくだが癒してくれ!」
「おかえりおにーちゃん。何かあったの?こっちおいで」
そう小陰からの返答はなく…リビングはもぬけの殻だった。
「あれ?…小陰?…何だこれ?」
テーブルの上に紙が置いてある事に気付く蒼汰。
『今日は美空さんの家に泊まります。ご飯は適当に食べてね』
「………嘘だぁぁぁぁー!!!こなたぁぁぁぁぁー!!!」
本日三度目。膝から崩れ落ちた蒼汰にLINEが通知され、送り主は美空だった。
『今日は一人で家で反省しなさい。…変態』
LINEを見た後、俺はその場に倒れ込み。上空から突如現れた天使達へ天界へと誘われた。
一人部屋で泣き明かし。家にいても仕方ないので。俺は朝早く家を出て学校へ向かう。
「うぅ…寒い。…もうすぐ冬かぁ…」
学校に着くと元弓道部の部室に向かい屋根の上に登る蒼汰。
「うぅ〜…この時期に屋根の上はキツイな〜。早く部室が欲しいぜ」
体を丸め。白い息を吐きながらこれからどう文芸部を発足させるか考え始める蒼汰。
(顧問の事はあの人にお願いすればたぶん大丈夫。…まぁあまり乗り気ではないが…。後はあと一人の部員だな。ん〜…これは何か奇跡が起きないと卒業まで集まらないかもしれないな…)
その時。横に併設されている弓道場に人の気配を感じた蒼汰。
(誰かいるのか?こんな朝早くに…)
薄暗い視界が少しずつ明けていき、その人影の人相がゆっくりと見えてきた。
袴姿で長い黒髪を後で結った美女が弓を持ってゆっくりと歩いていて。その『大和撫子』という言葉がピッタリな可憐な美女にすぐ目を奪われてしまった蒼汰。
(誰だ…あの子)
その子は静かに目を閉じて集中力を高めると、目を開き弓を弾いた。
その美しく堂々と弓を弾く姿に俺は寒さと息をする事さえも忘れるほど見入っていた。
「スー…」
大きく息を吸い。その子は弓を放つ。それと同時に…
「…くたばれぇぇぇぇぇーー!!!!!!!」
そう叫び。美女台無しの形相で放たれた矢は的の真ん中を射抜いた。
(……………ヤバっ………)
見てはいけないものを見てしまった俺はその子にバレないように静かに屋根を降りて教室に向かう。
「……100億積まれてもあの子はないな」




