極楽鳥花の花言葉4
蒼汰、美空、鳳の三人は昼休み、元弓道部の部室の屋根の上に集まって昼食をとりながら雑談をしていた。
「鳳ちゃん。これ、本当に初めて描いたなの?」
「は、はい…ど、ど、どうで…したか…?」
「よく描けてるし。何より、面白い!」
Hibari先生に褒められた石川さんは俺に向けられる事が一生ない笑顔を見せる。そして、俺の方を見ると。いつも俺に向けられる見下した笑顔で俺を見る。
(何だよ。何見てんだよ)
猫背で弁当を食べながら、俺は小悪魔を見る。
(…ムカつくな)
卵焼きを箸で掴み。ムスッとした表情で口に入れようとした寸前で久瀬さんが卵焼きを横取りしてきた。
「あっ」
「へへっ。いただきまーす。んん~、やっぱり小陰ちゃんの料理は最高ねっ!」
右手を頬にあてながら久瀬さんは美味しそうに卵焼きを味わう。
(俺の…卵焼き…)
「はいっ、これ、お返しに」
そう言うと自分の弁当箱から唐揚げを掴んで俺の弁当に入れた久瀬さん。
「えっ!いいんですか!?」
「うん。お口に合うかどうか分からないけど」
俺と久瀬さんのやり取りを羨ましそうに見ている石川さんに…今度は俺が不適な笑みを送る。
「それじゃ…いただきまーす!…うまっ!何これうまっ!」
「え、本当!?よかった。お口に合って」
そう言って微笑む久瀬さん。
学校で一番…いや、日本で一番美人でかわいいかもしれない女子高生の手作り唐揚げをこんな笑顔付きで食べれるなんて……俺は…俺は…なんて幸せ者なんだーー!!!
久瀬さんの唐揚げをすぐに飲み込むのはもったいないので、早食いの俺だったが咀嚼をいつもの倍、長くして久瀬さんの唐揚げを味わう。
「く、久瀬さん…り、料理も、で、出来るなんて、さ、さすがです…ね」
指をモジモジさせながら石川さんは久瀬さんにそう言う。
(…まぁ確かに…)
ここでお約束なのが、美人でモテるのに家事が一切出来ない。と、いうのがセオリーでありギャップであるのだが…さすが久瀬さん。と、言ったところだな。
「………えっ?私、料理なんてした事ないわよ?」
「「………えっ?」」
っと、俺と石川さんは同時に発する。
「私のお弁当、いつもお兄ちゃんが作ってくれるの」
その言葉を耳にした瞬間。久瀬さんがエプロンをしながら料理しているイメージから、久瀬さんのお兄さんがエプロンをして料理しているイメージに、俺の脳内は変換され……速攻飲み込んだ。
弁当を食べ終えると久瀬さんは横になり、大きく背伸びをした。
「んん~…何かこうして三人で集まるの久しぶりな気がするね」
「そ、そうですね…わ、私は…く、久瀬さんと…二人でも…ふ、二人がいいです」
(セリフ変えやがった)
「ねぇ、何で教室であんまり話しかけたらダメなの?風陰?」
「そ、それは…だって…」
俺は以前。久瀬さんにあまり教室で俺に話しかけないで欲しいとお願いしていた。そう言った理由は三つある。
①話しかけられる度に教室が静かになる(空気に耐えられない)
②久瀬さんの評価を下げてしまうかもしれない(俺がそれは嫌)
③命の危機を感じる(男子達の目…マジなんだよ)
以上。三つの理由でお願いをしたわけだが…
「前にも言いましたけど…」
「意味分かんない!…友達に話しかけるのはそなに悪いこと?」
そう生まれたての子猫のような瞳で言う久瀬さん。
(…クソっ…かわいいなちきしょー!)
俺だって普通に教室で話したいと思っているが。それを周りが許してくれないし。何より、久瀬さんと会話した後の仕打ちに長年一流のモブぼっちをしてきた俺に耐える心と耐性が備わっていない。
…久瀬さんは知らないし、知って欲しいとも思っていないが。久瀬さんと会話すると…俺は猛獣がウヨウヨしているサバンナのど真ん中に生肉を持って裸で立たされている状態になる。
トイレに立つ度に後から数人が後をつけて来たり。久瀬さんの席の方へ少しでも向かおうとすると何故か男子達が皆、戦闘態勢に入ったり。ナチュナルに机に『◯す』と紙が貼ってあったりと。
そんなのモブぼっちが耐えられるはずないだろ。
「あーあ。もっと風陰と話ししたいのにぃ〜」
そう言ってムスッした顔をして俺に背を向ける久瀬さん。
「み、皆で、き、気軽に…あ、集まれる…わ、私達、だけの場所…ほ、欲しいで、ですね。…た、た、例えば…」
「例えば?」
恥ずかしそうに話す鳳に美空はそう問う。
「わ、私達で……ぶ、部活…つ、作る……とか…」
(……ブカツ?…ブカツブカツ……部活!?)
「それ!いいねぇー!」
上体を起こし鳳の両手を掴む美空。
「どんな部活!?何部何部!?」
モジモジと恥じらいながら鳳は答える。
「…………ぶ………文芸…部…とか……」
石川さんのその言葉に俺の数少ない一般的な脳がフル回転する。
部活を三人で作る→大義名分を得て皆で集まれる→邪魔者を一匹排除する→久瀬さんと二人→文芸部の活動でラノベを作る→Hibari先生と一緒にラノベが作れる…一緒に…一緒に…ラノベを…
「文芸部!いいねそれ!さっすが鳳ちゃん!…どうかな風陰?」
「お、お前…な、何で、何も言わない?」
美空と鳳が見つめる中、蒼汰はおもむろに立ち上がり。鳳の両肩を掴んだ。
「な!?、何だ!?」
「ス〜……お前に国民栄誉賞をやる!!!」
そう叫ぶと蒼汰は屋根から降りてどこかに走っていく。
「な、な、何だ。あ、あのバカは」
驚いている鳳を横目に美空は笑っていた。
「あとは風陰が何とかしてくれるわ。安心して鳳ちゃん」
「だ、大丈夫なんで、すか?あ、あの、バカに、ま、任せて?」
「大丈夫よ」
美空は空を見上げる。
「…アイツがあの顔をしてる時は大丈夫よ。…ねぇ…蒼汰」
自信と信頼の顔で少し微笑む美空を鳳は不思議そうに見つめる。
その頃蒼汰は、風より速く校内を駆けていた。
(そうか!その手があったかっ!何で早く気づかなかった俺!)
生徒会室の前で急ブレーキで止まり。生徒会室のドアを激しく開けた蒼汰。
「すいませんっ!部活動を作るにはどうしたらいいですか!?」
「な…何だお前!?」
「ん?」
蒼汰の目の前に体操着の上を脱ぎかけている女子生徒が驚きながら立っていた。
「ノックをしろ!こ、このっ!変態がっ!」
(あっ…これ…あかんやつや)
暫くすると蒼汰が戻ってきた気配がした美空が反応する。
「風陰!」
「ぶ、ぶきゃつしんしぇしょ…もばってきばした」
「風陰!?どうしたのその顔!?」
「キ、キモッ!?」
顔が変わるくらい腫れ上がった顔で屋根の上に上がってきた蒼汰にビックリする美空と鳳。
「な、なんでみょないでしゅ。これ、ていしゅちゅしたば、ぶかちゅできましゅ」
一枚の紙を渡された美空は子供のような笑顔で鞄からペンを取り出して紙に名前を書き。次に鳳。最後に蒼汰が名前を書いた。
そして放課後。三人は生徒会室へと向かう。




