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極楽鳥花の花言葉

元弓道部の部室の屋根の上で仰向けに寝ながら、蒼汰はスマホをスクロールしながら写真を眺めていた。


あれから二週間。久瀬さんは学校を休んで作品を作っている。


時々、LINEで連絡が来るが。気分転換にカフェに行ったり。海に行ったり。買い物をしたりした時に撮った写真を送ってきてくれる。


写真の中で笑っているHibari先生の表情はどれも素敵で、迷いや悩みの影は見あたらない。


スマホを閉じると俺は、一冊の本を手に取り読み始める。


ボロボロになっている本を読みながら、俺は紅文社で自分がHibari先生に言った言葉を思い出し…恥ずかしさから暴れだす。


ひとしきり暴れる→疲れて本を読む→また思い出して暴れる→疲れて本を読む。


を、永遠と繰り返す日々をあの日以来、俺は送っていた。


「…どんな顔で次…久瀬さんに会えばいいんだ…」


少し曇ってきた空を見つめながら蒼汰は呟く。


「お、おい!そ、そこにいるんだろ。か、風陰!」


下から何やら声がしてきたので下を覗くと石川鳳が何かを両手に抱えながらこっちを見てた。


「…どうしたの石川さん?迷子にでもなった?」

「そ、その迷子キャラ。や、やめろ!」


こちらからは用はないのだが、あちらさんは用がありそうなので仕方なく下に降りる。普段はしないのだが、何となく少し高い位置から飛び降りて着地すると、着地を誤って右足首を挫いた。


「よっと!あっ、いったぁぁぁぁー!!」


地面を転がり右足首を押さえて悶えていると笑い声がしてきた。


「ざ、ざまーみ、みろ。日頃のお、行いが悪いか、からだ(笑)」


普段は殺意剥き出しの表情しか俺に見せない石川鳳の俺に向けられた初めての笑顔。その理由がこんなしょーもない理由じゃなければ。恋の一つでも始まったかも…いや、ないな。


立ち上がり、右足首のコンディションを確認しながら俺は石川さんに声をかける。


「それで。いたっ!何の。いった!用かな石川さん?いっった!」


「か、風陰に。ふっ(笑)お、お願いが。ふっ(笑)あ、あって、きた、んだ…ふふっ(笑)」


(それが人にお願いする態度かよ。…いてっ)


「お願い?俺に?」


「そ、そうだ。こ、これ…読んで…み、みてくれ」


そう言って石川さんは一冊のノートを差し出した。


「…なに?これ?」


「わ、私も…描いて…み、みたんだ…か、感想を聞かせて…くれ」


(書いてみた?)


差し出されたノートを受け取ってペラペラとめくってみると。文字がびっしりと書かれていた。


「…デスノート?」

「ち!違うわ!…ら、ラノベ…で、です…」

(な、なにぃーー!?)


「よ、読んで…感想…き、きかせろ…く、下さい…」


石川さんが渡してきたノートはデスノートではなく。自分で描いたラノベだった。


「た、頼む」


正直…この文字がびっしり埋まったノートを読むと呪われるか殺さる気がしたので読みたくないが。こんな一世一代の覚悟をした石川鳳の今にも恥ずかしさで逃げ出しそうな自分を抑えている顔を見せられるとなぁ。


俺は部室の壁に寄りかかりながら座り、デスノートの1ページ目を開いて読み始める。俺が読んでいる間。石川さんは両手でスカートを握りしめ、唇を噛み締めながら自分の描いたラノベを読む俺を見つめていた。


最後の行を読み終え、ノートを閉じる。


「…ど、どう…だ、だった?」


「………ふっ」


俺は不適な笑みを浮かべて心の中でこう叫んだ。


(ちょぉぉぉおもしれぇぇぇー!!!)


えっ…?何これ?…本当に初めて描いたラノベなのか?


「か、感想は?」


「…ま、まぁ。初めてにしては?よ、よく描けてたんじゃないかな?」


驚きすぎて何故か疑問形で言ってしまった俺の感想を聞いた石川さんは。頬を赤く染めながら嬉しそうな表情を見せた。


「本当か!?どの辺が良かったか!?」


よほど嬉しかったようで。いつも吃りながら喋る石川さんがスラスラと言葉を発した。


「どこって…まずストーリーがしっかりしてて。キャラもそれぞれ個性があって魅力的で…」


俺の総評を「うん。うん。」と、キラキラした目で相づちを打つ石川さんに俺は疑問を抱いた。


(…どうしてラノベ描こうと思ったんだ?)


「…も良かったかな。それから…それから………」


「ど、どうした?」


「…どうしてラノベ描こうと思ったの?」


俺の質問を聞くと石川さんは、間を置いて恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俺に背を向けた。


「……く、久瀬さんが…ゆ、有名なさ、作家と聞いて…す、少しでも…久瀬、さんに…ち、近づきたくて…は、初めてで、できた…た、大切な、と友達の…す、好きなモノを…し、知りたくて…」


石川さんの言葉はおどおどして、吃っていたけど。俺の心にはちゃんと気持ちが伝わってきた。


石川さんのその思いは、石川さんが描いたラノベを読んだ時から俺には分かっていた気がする。


何故なら…石川さんが描いたラノベはラブコメだったから。


「……その言葉。久瀬さん聞いたら大喜びすると思うよ?」


また疑問形を使ってしまったが。今回の疑問形は間違わなかった。


「…石川さん。俺も…石川さんの友達かな?」


蒼汰の唐突な質問に肩をピクッと反応させた石川鳳は、少しだけ顔を見せて蒼汰の問に答える。


「か、風陰は………い、い…犬だ」


(………ワン?)


振り返り。座っている蒼汰を見下したように笑いながら石川鳳は言葉を続けた。


「お、お前は。く、久瀬さんに、つ、付きまとう。い、犬だ。さ、さっきも、犬みたいに、じ、地面を、は、這いずりま、まわって、い、いたじゃな、ないか。わ、私は…お、前の…不幸が、だ、大好きだ」


(………そっかぁぁ〜)


不適な笑みを見せる石川鳳に天使のような微笑みを返す蒼汰。


(…お前が俺の事を嫌いなこと知ってたけど。俺もお前が嫌いだからなー)


言葉には出さず。天使の微笑みで小さな悪魔にそう伝える蒼汰であった。

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