7話目! 束の間におでかけ
「かかしっ、かかしっ、揺れて流され涙して〜」
「・・なんですか、それ」
「ん?趣味だよ趣味、気にしないで。そ・れ・よ・り・も!準備できた?」
「えぇ、警棒もこの通りに」
「もうっ!遊里じゃなくて、蒼夢のほう!着替えるの遅くない!?」
「それは、男性なのですから時間がかかっても仕方がないのでは?」
「いくらなんでも遅すぎだよ!・・ね、ちょっと見に行ってみない?」
「詩依」
「・・・はいはい」
「おまたせ、ごめんね時間かかっちゃって」
あんなにたくさん服があると、どうしても迷ってしまった。
遊里も詩依も待っててくれたのに、申し訳ないことをしたな・・
「ほんとほんと!遅すぎて扉、叩き破っちゃおうかと思ったよ?」
「いやいや、冗談でしょ・・・冗談だよね?」
え、なにその顔。
え?本当にするの?ってかそんなバイオレンスなことできるの?
「・・とりあえず、準備もできたことですから向かいましょうか」
「だね!安心してよ、ちゃんと守るからさ」
「おぉ〜!」
二人に言われるがまま付いてきた、最初の観光スポットはこの国で一番高い塔。
これはなかなかいい眺め。晴れ渡る空と高層ビルが織り成す景色で気分もスッキリだねぇ。
・・・2時間待ちの列を全部すっ飛ばしたのを除いてね。
なんかもう、エレベーターに乗るまで怖すぎて振り返れなかった。・・後ろにいた二人が、ね。
なんであんな怖かったのかは知らんけど。
「ふっふっふっ!良い町でしょ!」
「どうして貴女が自慢げなんですか。詩依、貴女の出身地は確か」
「あー!あー!聞こえない聞こえない!!それよりほら!いい眺めじゃない!?」
そんな二人も俺の隣で騒いでいる。あの覇気はなんだったのかと思うくらいの賑やかな雰囲気である。
ちなみに。今日のお出かけプランは、詩依が主導で考えてくれたらしい。
らしいのだが、俺と同じくらい、いや俺よりもはしゃいでいる様を見るかぎり、
もしかして自分が行きたいとこ選んだだけなんじゃ
「蒼夢、今すっごい失礼なこと考えてなかった?」
「・・・まさかまさか」
「やっぱりそうじゃんか〜!?」
「少し、静かにしましょう。貸し切りではないのですから、他の方々の目もあるのですよ」
「え〜?いいじゃんか、別に!むしろ見せつけてやろうぜぃ!てきな・・・はい、すいません・・・」
「まったく・・」
にしたっていい眺めだな。絵の才能でもあればこんなきれいな風景を描きたいんだけど。
・・・こっちに来てからはやったことないし、帰ったら試してみるか。もしかしたら不思議な力でうまくなってるかもしれないしな。
(良いですか、詩依。周りにいる方々は蒼夢様に遠慮して離れていらっしゃいますが、私達に向ける敵意がなくなるわけではないのですよ)
(わかってるわかってる。だから、あえて私が目立ってあげてるしょ?)
「お、あっちにお土産屋ある!」
「お、いいねいいね!なんかお揃いのもの買っちゃう!?」
「いや、それはいいかな」
「なんでよ〜!?」
なんだかんだ言いつつ、三人でおそろいのキーストラップを買うことになったのだが
「それじゃあお支払いに」
「いやいや!なにお金出そうとしてるのさ!」
「そうですね、このようなときは女性が支払うのがマナーであり、暗黙の了解ですから」
「え?いやでも」
「でもじゃない!大人しく払われなさい!」
まだ前の世界の常識が残ってるからな。やっぱり女性に奢られるのはなんとも言い難い気分になる。
ついでに、何故か一定の距離を保ったままの他のお客さんたちもウンウンと頷いてるのはなんなの・・・
「では私がお支払いに行ってまいりますね」
「は!?いやいや、それはいくら遊里でも譲れないよ」
「いえ、詩依はこの計画を立ててくださいましたし、そのお礼というわけには」
「いかないに決まってるじゃん」
「いえいえ、遠慮はいりませんよ」
「じゃあ遠慮なく、私が支払うから」
なんでヒートアップしてるんですかね。
「やっぱり俺が払った方が」
「「それはダメ」です!」
「は〜い・・」
「あの・・・」
「あ、すみません騒がしくしちゃって!」
「いえあっその、それは全然、お客様が来てくださっただけで!あ、それでですね」
「どうかしましたか?」
「その、もしご存知でしたら申し訳ないのですが、その・・多数の女性がデートに伴う際は、支払った金額によってデート中の上下関係が決まるというものがございましてですね」
「そうだったんですね」
そうだったんだ・・いや確かに女性へのプレゼントに高い金額のもの与えたくなるみたいなそういうやつもあるし、そういうことなのかもな。
「教えてくださってありがとうございます」
「お手々おっき、あぁいえ!全然!気になさらないでください!それじゃあレジでお待ちしてますので!」
ふむ、良い店員さんだったな。
「最初はグー!じゃんけん、パー!」「チョキ」
向こうも終わったらしい。
「というわけで、次はお昼ごはんです!」
「おぉ!・・で、これはいったい?」
「・・とりあえずは、大丈夫です。おそらく、危険ではないはずですので」
塔を降りて広場に出ると蜂の巣見つけたときみたいな数の女性に囲まれていた。
アポ無しインタビューってこんな感じで囲まれるのかな。
「あ、あれが噂の」
「むむむ、見えない」
「ふむ、やはりあの筋肉・・・・ただものじゃない・・」
ワイワイ、ガヤガヤ
「遊里、なんか知ってるの?」
「知ってるといえば・・えぇ、まぁ。とりあえず、手出しはしてこない・・はずです」
「ん〜、よくわかんないけど大丈夫でしょ!やばい子がいたらわっちが追っ払うからさ!というわけでしゅっぱーつ!」
ほんとうに囲まれてるだけで何も起きなかった。
二人が怖いのか、あの人達のマナーが良いのか、はてどっちか。
どちらにせよ、今後出かけるなら囲まれないようにしたいところである。
ガチでお待たせしました!!
言い訳一つ:テスト期間。
ブクマ登録、いいね、ありがとうございます!更新してない間も増えててありがたい限りです!!
誤字報告もありがとうございます!
また更新再開しますので、なにとぞ!