システムダウン
地球温暖化が進み世界の平均気温がドンドン上昇するのに合わせ、タワーマンションと言うか高層マンションの高さが上へ、上へと伸び、世界の高層マンションの平均的な高さは2000メートル。
何故上へ伸びたかと言うと、高度が100メートル上がる毎に気温が0,7度下がるからだ。
2000メートルマンションの最上階の気温は、地上が40度でも26度しか無いって事になる。
だから俺も最上階は手が届かなかったけど、中間の1000メートル付近の部屋を購入した。
7度下がるだけでも涼しく感じるからな。
会社からの帰り道、駅前のロータリーから自宅がある高層マンションを見上げ、誇らしい気持ちになる。
見上げていたら違和感に気がつく。
あれ? 何時もなら煌々と灯っている高層マンションの明かりが1つも見えない。
おかしいな。
高層マンションを維持するには電気が命。
例え地域全体に電力を供給している電力会社が停電しても大丈夫なように、マンションの東側南側西側の壁一面に太陽光を受けるパネルが設置され、マンション周辺のマンションの敷地内には風力発電の風車が所狭しと林立してるのに、なんでだ?
クーラーが停止したため駅の構内に涼しさを求めて退避してきた、マンションの知り合いに事情を聞く。
マンションの電気のシステム自体が熱さのためダウンしたらしい。
ヘリコプターが飛行するパタパタパタという音が聞こえたので上を見上げたら、最上階付近に住む大金持ちの人たちがマンション最上部のヘリポートに降り立つの見えた。
さっき事情を聞いた知り合いは低層階の住民だから良い。
でも俺は、1000メートルの高さまで歩いて上がらなければならないのか?
マンションの中心部にあり灼熱地獄になっている階段を、一歩一歩、歩いて1000メートル上がるなんて無理だ、死んでしまう。
俺は高層マンションを見上げたまま、何時までも立ち竦んでいた。




