2話‐2
「み、美和さん? 何の用?」
「そんなの決まってるです。ヒーロー……というか、ブレイズライダー様の話をしているのなら私もまぜてほしいです。……火走君? どうしてそんなに顔が引き攣ってるです?」
どうやら感情が顔に出てしまっていたようだ。
……しかし、仕方ないだろう。
突然の闖入者に困惑している上に、これから自分の評判を聞かされる羽目になるのだ。
色々な意味で耐えられる気がしない。
「い、いや、何でもないから気にしないで」
美和さんに返事を返しつつ、二郎に何とかするようアイコンタクトを送る。
流石は親友と言うべきか、俺の言わんとしている事をすぐさま理解した二郎はウインクを返す。
……今日ばかりは二郎に感謝するべきだな。
「うーん……。ブレイズライダーの事を話してもいいんだけどさ、俺は二人が昨日の晩に何をしてたのか気になるな。ショウは何も無いって言ってるけど、本当にそうなの? こいつに変な事されなかった?」
「二郎!? テメエ!」
やりやがったな、この野郎!
感謝の気持ちを返せという気持ちや、ウインク似合ってなかったぞという罵倒が口の中から漏れそうになるが何とか堪える。
それでも思わず怒鳴ってしまった俺を二郎は無視し、美和さんは勿体ぶった様子で話し始める。
「……火走君、話しちゃったんです? 秘密だってあれほど言ったのにです?」
「……秘密なのは俺が、その、ブレイズライダーのファンだって言う事だけだし、二郎はその事を知ってるから気にする必要は無いよ」
二郎に乗っかり始めた美和さんに一瞬面食らってしまうが、二人にだけ聞こえるように小声で話す。
「……まあ、そういう事です。どうやら私は火走君の好みでは無かったらしく、特に何もなかったです」
「……二郎が想像してるような事は何も無かった。さっきも話したように偶然会って、夜遅くに放置しても危ないから家まで送っただけだ」
……これでようやく話が終わったか。
後は適当な話題を振ればいいな。
「そういえばショウ。お前ってどんな子がタイプなんだ? 今まで聞いた事がなかったけど、その辺どうなんだよ」
……確かにブレイズライダーから話を逸らしてほしいとは思ってるけど、何でそんな話題ばかり振ってきやがる!
「……そういう時はまず自分から言えよ。わかったならこの話は終わり――」
「そんなの優しくて可愛い女の子に決まってるだろ。ほら、俺は言ったから次はお前の番だ」
「一条君の好みはともかく、火走君も言うべきです。さあ、早く白状するです。因みに私は白馬の似合う、王子様みたいな甘いマスクの男性が好みです」
俺が適当にあしらって逃げようとするが、二郎の自爆特攻によって逃げ道を塞がれ、何故か美和さんまで二郎に乗っかり俺を問い詰める。
……適当に合わせるか。
「……ロングヘアーの似合う、おしとやかな子」
「普通過ぎてつまらんです」
……おい。
俺の答えを聞いた美和さんから即座に駄目出しされて、二郎は少し間をおいてから何故か哀れむような視線を俺に向ける。
「……そうか。今はクラスにそんな子いないな」
何故だ。
何故俺がこんな目に合わなくてはならないのだ。
「希望に応じて答えてやったらこの反応かよ。俺はどう答えれば良かったんだ?」
「何でも良いから面白い回答を期待していた。まったく、つまらない奴め」
「……お前に比べりゃ、大分マシだったと思う」
俺がぼやいた所で始業のチャイムが鳴り、二郎と美和さんはそそくさと自分の座席に戻っていく。
……何で朝からこんなに疲れなくてはならないんだ。
朝から無駄に疲れてしまったとはいえ、それはそれ、これはこれ。
放課後のヒーロー活動はしっかりと行わなければならない。
……犯罪は防げるとはいえ、幾ら俺が悪党どもを倒しても治安が良くなる気配は無い。
やはり、原因を元から断つ必要があるな。
まずは銃器を所持している奴等を見つけ、尋問して聞き出すか。
『ブレイズライダー、コンビニ強盗発生だ。対応可能か?』
SNSやニュースで流れてくる情報を集め、二郎はこの街の近くで発生している事件を教えてくれる。
有難いには有難いのだが既に知っての通り、喧しいのが玉に瑕。
四六時中二郎の声が聞こえていると、集中するべき時も集中できない。
「今すぐ向かう。何かあったら連絡してくれ」
なのでこうして用事が無い時は通話を切る。
少ししてから二郎からメッセージが届き、中に記載されていた強盗現場の住所をナビへ入力する。
「……さて、今日も張り切っていきますか」
自身に気合を入れると、強盗現場へ向かう為にエンジンを回してバイクを走らせた。
コンビニの入り口前に、昨日の強盗犯達と同じ覆面を被った二人の見張りが立っている。
俺はその様子を、コンビニから少し離れた物陰から観察していた。
「……よし、やるか」
覚悟を決めると物陰に隠れながら、コンビニへ少しづつ近づいていく。
ある程度まで近寄った所で足元に落ちていた小石を見張りの方へ投げると、再び近くの物陰に隠れて様子を伺う。
突然投げられた小石に気付いた見張り達は暫く話し合う素振りを見せた後、片方の見張りが此方に向かって来る。
……今だ!
のこのことやって来た男を物陰に引きずり込むと、そのまま何度か殴りつけて気絶させる。
男をその場に放置して勢いよく跳躍すると、靴裏からジェット噴射のように炎を噴いて宙を舞う。
「なっ……! て、敵――」
もう一人の見張りが仲間に知らせる為に叫ぼうとするが、もう遅い。
炎を宿した右足を見張りに向け、左手を逆方向に突き出して掌から炎を噴射し、勢いよく男に突っ込み跳び蹴りをお見舞いしてやる。
見張りは碌に防御する事すらできずに俺の蹴りを受け、勢いよく吹き飛んでコンビニの窓ガラスを突き破って店内へと消えていった。
「……ヤバい、やりすぎたな」
本当は店内の奴等に気がつかれないように倒すつもりだったが、オーバーキルしてしまった。
……仕方ない、正面から相手をするか。
俺が覚悟を決めると同時にコンビニの自動ドアが開き、十人ほどの覆面を被った強盗犯達がぞろぞろと姿を現して俺を取り囲む。
……いや、多くね?
何でコンビニ強盗するのにこんなに雁首揃えるんだ?
……理由はわからないが、この人数は不味い。
これだけ数がいれば超能力者の一人や二人、混ざっていてもおかしくない。
とはいえ、やる事に変わりはない。
「来たな! ブレイズライダー!」
強盗団の一人が叫んだのを皮切りに俺は地を蹴り、靴裏からのジェット噴射によって猛スピードで強盗犯による包囲の一角へと殴り掛かる。
急な事に反応の遅れた強盗犯の一人を、肘部分の点火口から噴射された炎によって速度を増したパンチで殴り飛ばし、一撃でノックアウトする。
「この野郎!」
強盗犯の一人が背後から殴り掛かってくるが、振り返る事無くそのこぶしを受け止めてそのまま腕を掴み放り投げ……ようとしたが、強盗犯が予想以上に重く、投げるのは無理と判断して腹部に回し蹴りを放つ。
「フフフ。来ると思っていましたよ、ブレイズライダー」
近くにいた三人目の強盗犯に掴みかかって膝蹴りの連打をお見舞いしてやっていると、テレビとかで身元を明かしたくない人が発するような甲高い加工をされた声……いや、ようなではなく、そのものな声が聞こえ、覆面集団の中で一際小柄な奴が一歩前に出てきて俺に話しかけてきた。
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