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6話‐5

 ……カッコ良く啖呵を切ったのは良いものの、中々追いつくことができない。

 それもそのはずで俺のバイクは外観だけはスーパーマシンに見えるが、それはホログラムによって投影された虚像。

 実際のところは市販のバイクと同程度のスペックしかないのだから、全力でスピードを出しても黒猫の乗っているバイクが故障でもしないかぎり、追いつく事は不可能だ。

 ドライビングテクニックで差をつけて追いつく他ないのだが、どうやらほとんど差が無いらしく距離を離される事も無いが、逆に追いつける様子も無い。

 ……それでも諦めずに追い続けた末、黒猫がバイクを乗り捨て廃工場へと姿を消し、俺も自身のバイクを収納すると工場内へと侵入する。


「ここが黒猫強盗団の拠点? ……いや、それにしては生活感が無いな」


 工場は長い間使われていなかったらしく埃まみれで、結構な構成員がいる黒猫強盗団が日常的に使っているとは思えない。

 黒猫も見当たらないし、俺を撒く為に工場に誘き寄せたのか?

 とにかく、何か痕跡が残っていないか探す他ない。

 そう考えて周囲を見渡した俺は、ある事に気がつく。


「……ここだけ、埃が薄いな」


 床の一部が明らかに埃の積り方が薄いのに気がつき、屈みこんでよく見るとその周りに俺のものではない足跡まである。

 火を灯して床を照らすと、ハッチのような形の扉がそこにはあった。

 扉を持ち上げ開くと、地下へと続く梯子が見える。

 ……一寸先は闇。

 地上からでは降りた先の様子を伺い知る事はできない。


「……行くしかないよな」


 俺は覚悟を決め、地下へと突入する。

 先程灯した炎を灯りに、長い梯子を使って地下へと降りていく。

 時間にして数分後、梯子が途切れて足が床につく。


「……地下道? こんなの、黒猫強盗団単独で作れる物なのか?」


 辺りを見渡すと、結構大きなトンネルになっているのがわかる。

 ここが行き止まりのようで、前に進むほかに道が無いのは迷う可能性が無くてラッキーだな。

 耳をすませば、遠ざかっていく小さな足音を聞き取ることができる。

 多分この足音は黒猫のもので、この道が正解だったようだ。

 俺はこの先が一本道である事を願いながら、黒猫との因縁にケリをつけるべく全力で駆けだす。

 ……暫く走り続けると、やがてトンネルの出口が見えてくる。

 出口を通り抜けると小さな倉庫のような部屋に繋がっており、視界の端で黒猫が部屋の外に出て扉を閉めようとしているのを捉えた。

 黒猫を捕まえるべく先程から酷使している脚に鞭打って駆け出すが、俺が出口に辿り着くよりも早く扉が閉まってしまう。


「この……鍵かけてんじゃねえ!」


 ガチャガチャとドアノブを回して扉を開けようとするが、向こう側から鍵をかけられているせいで開かない。

 あまり派手に暴れたくはなかったけど、仕方ない。

 俺は右足に炎を宿し、扉を勢いよく蹴破って破壊する。

 倉庫のような部屋から廊下に出るが、黒猫の姿は見当たらないうえに扉も幾つかあり、どこに逃げたのかすぐにはわからない。

 扉を一つ一つ開けて部屋の中を確かめていくと、先程のような小さな倉庫や人が寝泊まりできるような部屋、会議室のような部屋と結構いろいろな部屋があるが黒猫の姿は見当たらず。

 苛立ちを抑えながら扉の一つを蹴り飛ばすと、オフィスのような部屋でなにやらパソコンを弄っている黒猫を漸く発見した。


「くっ……随分と早いですね」


「そりゃあお前達の相手をするのにもいい加減うんざりしてたからな。俺は他にも色々と忙しいし、さっさと終わらせたいんだよ」


 黒猫に向けてそう言い捨てる俺に、奴は鼻で笑ってから口を開く。


「いい加減にしてほしいと言うのは此方の台詞。何度も言いますが邪魔をしているのは貴方の方だ!」


 黒猫はそう叫ぶと近くにあった椅子を俺目掛けて放り投げる。

 飛んできた椅子を避けて反撃に移ろうとするが、黒猫はそれよりも早く腕を振りかぶりながら飛び掛かってきた。

 振り抜かれた拳を受けとめて反撃に蹴りをお見舞いしようとするが、黒猫は自身の拳を受けとめた俺の腕を払うと、すぐさま飛び退き蹴りを躱す。


「貴方の目的は一体何なのです? 何故、私達の邪魔をし続ける!」


 俺は追撃を仕掛けながらも、黒猫の問いかけに対する答えを考える。

 ……何故邪魔をするかだって?

 俺が黒猫強盗団を追いかけていたのは、こいつらの使っていた装備の出所を探る為……いや、そもそもの理由はそうじゃ無かったな。


「そんなのお前達が強盗犯だからに決まってるだろ! 真面目に働け!」


 黒猫を一喝しながら拳を振るい、蹴りを放つ。

 幾ら黒猫が素早いと言ってもこの狭い室内ではその本領を発揮できず、俺の拳を躱しきる事は出来ていない。

 とはいえ、避けきれない攻撃はダメージを抑える為に自分から受け止めに来ている。

 ……そう簡単には倒されてくれないか。


「真面目に働け? 私達だって元々は普通に働いてましたがね、治安の悪化により職を失い、再就職すらままならない。黒猫強盗団は社会に行き場の無い者達が集まって結成されたのです! 貴方にどうこう言われる筋合いはない!」


 黒猫が吼えると同時に今までの防戦から一転、攻勢を仕掛けてきた。

 俺はその素早い攻撃に翻弄されるが、紙一重の所で何とか防ぎきっていく。

 幾度かの攻防の末、放たれた強烈な回し蹴りを両腕で受け止めると同時に黒猫から目を離してしまい、次の瞬間にはそのまま見失ってしまう。

 辺りを見渡し黒猫を視界に捉えようするが、その姿はどこにも見当たらなかった。


「き、消えた!? またかよ!」


 急に姿を消した黒猫に一瞬だけ狼狽えてしまうが、すぐに冷静になり周囲の様子を伺う。

 ……落ち着け、もう手品のタネは割れている。

 奴の着ているスーツの、ステルス機能だ。

 だったら、俺がやるべきことは一つ。


「そこ!」


 精神を研ぎ澄まし背後に気配を感じると、振りむきながら腕を前に出すと腕に強い衝撃が走り、俺の腕に脚を振り下ろした黒猫の姿が現れた。


「……お前達の事情はわかった」


 黒猫の脚を払いのけ、攻勢へと移るべく殴り掛かる。

 当然、黒猫も反撃してくるが、ここに至っては多少のダメージなんて覚悟の上。

 黒猫の攻撃が当たるのも気にせず、反撃を仕掛けていく。


「くっ……。わかってくれたのなら、大人しく手を引いてくれませんかねえ!」


 ……黒猫達にもどうしようもない事情があったのかもしれない。

 だけど、それを知ったからといって手を引くわけにはいかない。


「断る! 他人に迷惑かけてる時点で、許せるかよ!」


 黒猫の突き出す拳や繰り出される脚が俺の身体を傷つけるが、それくらいでは止められない。

 お返しとばかりに黒猫を殴り、蹴り返す。


「小癪な……。説教とは偉そうに! 何様のつもりです!」


 俺が何様かだって?

 そう聞かれたのなら、答えは一つだ。


「……俺は、ブレイズライダー! ヒーローだ!」


 自身が何者であるかを高らかに叫ぶと、黒猫へとどめを刺すべく拳に炎を宿し、黒猫が拳を振るうのに合わせて拳を振るう。

 互いの拳が交差し、いつまでたっても慣れる事のない、人を殴る感覚を感じると同時に、疲労からかその場に片膝をついてしまう。

 そして一瞬の静寂の後、目の前に立っていた黒猫が地面に崩れ落ちた。

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