6話‐3
「くっ……撃て! こいつを返り討ちにすれば俺たちの天下だ!」
強盗団員は懲りずに俺を目掛けて発砲するが、当たってやるつもりは無い。
迫る光弾を躱しながら一番近くにいた強盗団員へと近づき、蹴りを放つ……が、受け止められてしまった。
「おい、お前達は何が目的でここに侵入した? 素直に教えてくれれば、少しは手心を加えてやるぞ」
攻撃を止められたのはどうとでもなる。
それよりも、何とかしてこいつらの目的を探る方が大事だ。
「随分と余裕そうな――」
「おっと残念、時間切れだ」
点火装置を起動させ、強盗団員に受け止められている脚の靴裏からジェットのように炎を噴出させる。
……俺の操る炎で火傷する事はないが、炎の噴射する勢いはそのままだし、熱い事に変わりはない。
強盗団員は突然のジェット噴射に怯み、掴んでいた脚を放して俺を自由にしてしまった。
「こいつをくらいな!」
今度こそ倒すべく、回し蹴りをお見舞いしてやる。
怯んでいたせいで受け止める事もできず、もろに蹴りをくらった強盗団員が地面に倒れこむのを見届けた後、残っている強盗団員へと視線を向けた。
「……それで? 誰か俺に協力してくれる奴はいないのか?」
強盗団員達へと声をかけてやるが、誰一人として反応を返さない。
……俺としては非常に心苦しいが、まだ抵抗するようだしもう少し相手をしてやるか。
「そうかい、そういう態度なら次はお前――!?」
適当な強盗団員に狙いを定めて駆け出そうとした瞬間、衝撃を感じてその場でよろめく。
まるで、見えない何かに殴られたようだ。
やっぱり、この場にいたんだな。
「不意打ちとはずいぶんと卑怯だな、黒猫!」
「部下達をいきなり背後から襲った貴方には言われたくありませんよ、ブレイズライダー!」
ごちゃごちゃと口煩く文句をつけながら、先程まで何も無かった筈の空間から黒猫が姿を表す。
「悪党に文句を言う資格は無いだろ。とりあえず、色々と聞かせてもらうぞ……強引にでもな!」
一声叫ぶと黒猫へと殴り掛かる。
速攻で終わらせようと思っていたが、黒猫は俺の振るった拳を軽やかな動きで躱し、反撃を仕掛けてきた。
突き出された拳を躱すと即座に反撃に移るが、あっさりと攻撃を躱される。
「ちょこまかと動きやがって!」
相手の攻撃を躱し、繰り出した反撃を躱されるというやりとりを何度か繰り返したところで、俺と黒猫は同時に蹴りを放つ。
お互いの脚が交差してぶつかり衝撃が足に響き、痛みに思わず顔をしかめつつ、強引に後方へと飛び退く。
「ええい! 大人しく全部喋れよ! そうすれば、なるべく楽に済ませてやるから!」
お互いに離れた後、黒猫に降伏を促す。
「そちらこそ私達に関わるのをやめなさい! いい加減にストーカー被害で訴えますよ!」
窃盗犯の癖に、俺をストーカー呼ばわりするとは口の減らない奴め。
「訴えるのは勝手だけど、その前に強盗の罪で逮捕されるだろ。その前に話しだけは聞かせてもらうけどな!」
無暗に炎を使えない以上、近接戦を挑むほかない。
黒猫へと再び近づく為に駆け出そうとするが、黒猫は飛び退き距離をとる。
更に、周囲から響く発砲音。
迫る光弾を炎の拳で叩き落とし、弱めの火球を放って相殺する。
「チッ……ちょこまかと動く上に、周りも横やり入れてきやがる」
「偉そうな口をきいておいて私一人倒すことができないとは、それでヒーローを名乗ろうなどと恥ずかしいとは思いませんか?」
黒猫は嘲る様に俺を笑うが、それが俺の注意を自身に引き付ける為の挑発だという事は明らかだ。
……黒猫自身が素早いのもあるが、周囲の強盗団員が容赦なく発砲してくるのが結構面倒だ。
今は処理できているが、このまま相手をしていては此方の体力が先に尽きてしまうだろう。
「最後にお前を止められるんなら、恥なんていくらでもかいてやる!」
黒猫は無視しよう。
飛び掛かってきた黒猫の攻撃を躱すと、俺を囲む強盗団員へ狙いを定める。
急に標的を変えた俺に一瞬だけ戸惑う様子を見せた強盗団員だったが、すぐさま迎撃をしようと銃の照準を俺に向けた。
「俺に当てたきゃもっと、練習しとけ!」
放たれた光弾を容易く殴り落とし、そのまま発砲した団員を思い切り殴る。
地面に崩れ落ちていく団員の身体を掴むと、奇襲を仕掛けるべく俺の背後に近づいていた黒猫にぶつけようと投げ飛ばしてやる……が、放り投げられた団員は、黒猫をすり抜けて床に落ちていく。
「な、なんだ!? まさか、ホログラム――ぐあっ!」
突然の事に驚き動きを止めてしまった俺を、衝撃と痛みが襲う。
地に膝をつきながらも振り向くと、いつの間にか俺の背後に回っていた黒猫が此方を見下ろしていた。
「ご明察。私のスーツにはステルス機能だけではなく、ホログラムの投影装置も内蔵されています」
「そうかい、ご丁寧にどうも――うわっ!? この、離せ!」
自慢気に説明する黒猫へ殴り掛かろうとする俺の四肢を、団員が横から掴んで動けないようにガッチリと拘束される。
この程度で止められると思っているのなら、随分と嘗められたものだ。
「させません!」
掌の点火ボタンを押そうとした瞬間、いつの間にか銃を構えていた黒猫が俺の両掌へと素早く発砲。
放たれた弾丸が開いた拳に着弾すると同時に、拳を動かす事ができなくなっていた。
……これは、トリモチか!
「こんなの使って、卑怯だと思わないのか!」
俺は団員達を振り払うために身動ぎするが、がっしりと腕や脚を掴まれて拘束されてしまい、どうにもならない。
「私達のような普通の人間からしたら、貴方のような超能力者こそ卑怯です」
犯罪者が普通の人間を自称するなと言いたくなるが、面倒なので黙っておこう。
それよりも、別の事が気になってしまった。
「……お前達の仲間にも超能力者いたじゃん。ほら、自称時間停止の超能力を使える奴」
俺の反論に黒猫は返事をせず、黙って近寄ってくる。
「……さあ、貴方には今日まで散々煮え湯飲まされてきました。手始めにヘルメットを剥ぎ取り、その素顔を拝んでやりましょう!」
「おい、無視して話を進めてんじゃねえ。お前達の仲間にも超能力――おい、やめろ! それ以上近寄るな!」
苦し紛れに話を元に戻そうとするが、黒猫は聞く耳を持たず俺のヘルメットへとその手を伸ばす。
……まあいい、ヘルメットを脱がされた時に正体がバレないように対策は完璧。
それにヘルメットを脱がしてくれれば、以前みたいに反撃にも繋げられる――
「こ、この冷気! 奴も現れたか!」
反撃の手筈を考えていたが、辺りに立ち込める白い冷気とそれに反応した強盗団員の叫びによって、思考を遮られる。
強盗団員達が周囲を警戒し始めると同時に、俺も氷河を探すがその姿は見当たらない。
「あ、あの野郎、びびって出てこれないのか! か、隠れてないで出てきやがれ!」
「お望み通り、そうしてあげようか」
強盗団員の挑発に答えるように氷河の声が響いた後、ガラスの割れる音と共に氷河が、展示場上部の採光窓から姿を現し黒猫目掛けて飛び掛かった。
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