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5話‐1

 俺は攻撃の手を止めてエンフォーサー……いや、かつての友人である氷河へとその名を呼びかける。

 自分の名前を呟かれた事で氷河は一瞬驚いたよう表情を見せるが、すぐに険しいものへと変わり、掌を俺に翳して冷気を放ってきた。


「……どけ!」


「ま、待て――うわっ!?」


 炎の壁は既に消えてしまっている。

 顔目掛けて冷気を放たれた事で怯んだ俺は押しのけられてしまい、氷河に逃げられてしまう。


「何で僕の名前を知っている! ……いや、そんな事はどうでもいい。ここで口封じしてしまえば、君が何者だろうと関係ない!」


 状況は一転。

 態勢を立て直し容赦なく襲いかかってくる氷河に、防戦一方へと追い込まれる。


「待てって、言ってるだろ!」


 俺は大分体力を消耗しているが、氷河にも疲れが見える。

 一気に攻め立てて、もう一度倒してやる!


「……う、嘘だろ」


 何とか隙を見つけて氷河を蹴り飛ばし、追い打ちをかけるべく点火装置から散る火花を燃え上がらせようとした瞬間、身体から力が抜けてしまい、俺の身体は戦う意思に反してその場に崩れ落ちた。

 ……どうやら、先程マウントをとった時点で力を使い果たしてしまったらしい。


「形勢逆転だな」


 氷河はそう言うとゆっくり俺の方に歩み寄る。

 俺は何とか起き上がろうとするが、力が入らずどうにもできない内に氷河が俺をの上に跨り押さえつけ……俺のヘルメットに手をかける。


「お、おい! 何するつもりだ!」


「このまま止めを刺してもいいけど、どうせなら素顔も拝んでおこうと思っただけさ」


 じょ、冗談じゃない!

 素顔を暴かれまいと足掻くが、力が入らず抵抗もままならない。

 結局手も足も出ず、ヘルメットに仕込んでおいた点火装置から生じた火花も燃え上がらせることのできないまま氷河にヘルメットを奪い取られてしまう。


「……ショウ? 火走ショウ?」


「……久しぶりだな、氷河。もう五年以上会ってなかった筈だよな」


 俺の素顔を見て呆然としながら呟く氷河に、俺は抵抗を諦めて再会の言葉を口にする。


「ショウ、まさか君がブレイズライダーだったなんてね。……何でヒーローなんかになったんだ?」

「……ヒーローなんか?」


 氷河から発された言葉を聞いて俺の頭が真っ白になり、次の瞬間には頭に血が昇って行くのが何故か自分でもわかる。


「ヒーローなんかだって? お前がそういうふうに言うな! そして質問したいのはこっちだ! 氷河、何でお前がヒーローじゃない!? お前に一体何があった? 何でヒーローを敵視する――」


「黙れ! 前にも言ったけどその質問に答えるつもりはない!」


 激昂する俺の言葉が癇に障ったのか。氷河も激昂してしまい、互いに怒鳴り合う。

 お互いに意味の無い罵倒を繰り返し無意味な時間が過ぎていき、少し頭が冷えて冷静になったところでようやく意味のある言葉を、俺は発することができた。


「早く俺の上から退け! 話したくないって言うんなら力ずくでも聞き出してやる! 覚悟しとけ!」


「力ずくで聞いてこようとしてきた君は今、こんな無様な状況になっているんじゃないか。まあいい、退いてあげるよ」


 どうせ俺の言う事なんて聞かないだろうという俺の予想を裏切り、氷河はあっさりと俺の上から離れる。

 圧迫感から解放された俺はすぐに立ち上がろうとするが、身体が動かせない。

 先程の様に力が入らないという訳では無く、まるで手足を何かに押さえつけられているようだ。

 手足に視線を向けると、俺の両手首と両足首が氷漬けにされて地面に貼りついていた。

 成程、これじゃあ立ち上がれないな。


「ふざけんなよ、氷河! どういうつもりだ!」


「君の言った通り、退いてあげただろ? ……解放してあげるとは言ってないけどね」


 指は動かすことができる為、氷を溶かす為に掌のスイッチを押して点火装置を起動させて火花を燃え上がらせようとするが、一瞬だけ炎が燃え上がってすぐに鎮火してしまう。

 ……どうやら、超能力を使えるくらいに回復するまでまだ時間がかかるらしい。

 何とか脱出しようと藻掻く俺の様子を見下ろしていた氷河は、持っていたヘルメットを適当に放り投げて踵を返す。


「待て! 逃げる気か!」


「昔のよしみで今日の所は見逃してあげるけど、次に邪魔をしたらいくら君でも容赦しない。精々もう会わない事を祈ってるんだね」


 氷河はそう言うと俺を置いて立ち去っていく。


「待てって言ってるだろ、この野郎! 逃げるんじゃねえ!」


 俺は氷河を呼び止める為に叫び続けるが、氷河が戻ってくることは無かった。

 ……暫くして超能力を使えるようになり、氷を溶かして身体が自由に動かせるようになった頃には氷河の姿は影も形も無くなっている。

 俺は誰も見ていない事を確認して制服に着替えると、ブレードで切られた上に氷の礫を受けてあちこち傷だらけになったスーツを眺め、傷を確かめる。

 修理するのに金も時間も結構かかるな、これは。

 ……色々と考える事もあるし、とりあえず今日のところは帰るべきだな。

 俺はバイクに跨ると、アクセルを回し採石場をあとにした。

今回の話を読んでいただきありがとうございます。

ブクマ・ポイント・感想をもらえれば筆者のモチベーションが上がるので非常にありがたいです。

次回は来週日曜日の昼十二時投稿なので、読んでもらえたら励みになります。

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